僧侶が教える、ネガティブ感情が消える心の習慣
感情に振り回されず、悩みをリセットするチャンス
「友達の結婚や出産を、素直に喜べない」「他人より優れている点を探す。そんな自分に幻滅してしまう」。誰しも一度はこんな気持ちになったことはあるのでは。日経WOMANの読者アンケートで、「私は"内面ブス"だ」と感じ、罪悪感を抱いている人が、なんと半数に上った。
そんな「自称内面ブス」さんに対し、僧侶の松本紹圭さんは「人として当然の感情に振り回されているだけ。悩む必要はありません」と話す。悩んでいるうちに、自分自身が次々とマイナスの感情を生み出してしまい、うまく対処できず、さらにもんもんとするスパイラルに陥ってしまうことも。
「問題は、ネガティブな感情で自分自身を傷つけてしまっていることです」と松本さん。「瞬間的に起こる『あの人が嫌いだ』とか『ずるい』といった感情を封じ込めることはできません。でも、その感情に振り回されないようにすることはできます。考え方を少し変える習慣を持つと、心穏やかに過ごせるようになります」
では、どう考えればいいのか。具体的な悩みを例に、さっと気持ちを切り替えられるおすすめの習慣を教えてもらった。ストレスをためずに幸せな気持ちでベッドに入ろう。
【仏教の教えに学ぶ、心を静める夜の習慣3ステップ】
Step1 自分の感情を認める
「嫌いだ」「許せない」と感じることがあるのは、人間としてごく自然なこと。ネガティブな感情を抱くのはよくないことだなどと思わず、自分の感情を受け止めよう。
Step2 物事を「ありのまま」に見る
ネガティブな感情が生じたとき、なぜそう思うのか、起こったことをありのままにノートに書き出してみるといい。自分の感情や実際に起きたことを客観的に整理できる。
Step3 "今"に集中する
世の中は、常に変化しているもの。過去の体験から未来を予測して心配し、不安を抱いても意味はない。「今に集中すれば、そのなかに満足や幸せのヒントがきっと見つかります」。
【今すぐやってみよう 今日からできる3つの習慣】
Habit1 1日30分テレビを消す
帰宅後すぐテレビをつけ、寝るまでそのままという人は、30分間消してみて。「耳に勝手に入ってくる情報が消えると、心が落ち着きます」
Habit2 「いただきます」を言う
1人の食事でも必ず、「いただきます」を言うことを習慣にしてみよう。「いただきます」を言い忘れたときは、心に余裕がなくなっているのかも。
Habit3 就寝前はネット禁止
絶え間なくインターネットやメールをチェックすることは、思った以上に心を疲れさせる。寝る1時間前からはネットを見ないと決めてしまおう。
【ズバリ回答 内面ブスの気持ちを静めるコツ】
Q.うじうじ悩むだけで、行動せずに後悔して終わり、そしてまた悩むを繰り返してしまいます。
A.人生は思い通りには行きません。
「悩んだあげくに実行しないのは、さまざまなできない理由を探して不安になっているから。そんな自分が嫌なら『人生、思い通りにいったらもうけもの』と考えて、まず行動してみて。失敗しても、今回はご縁がなかった、また別のチャレンジをしよう、と考えればいいだけです。人生は思い通りにならないのが普通ですから」
Q.気が付けば、仕事の文句や諦めの言葉など、愚痴ばかり言ってしまいます。
A.愚痴を言うのは何より時間のムダです。
「愚痴はネガティブなもので言わないほうがいいと、心のなかで本当は分かっているあなた。愚痴っても何も解決しない、ただの時間のムダと、繰り返し自分に言い聞かせてください。愚痴は時間のムダになるばかりでなく、自分の心も傷つけます」
Q.似合わない服を着ている人を見ると、「なんでもっと自分に合うものを着ないんだ? ブス」と思ってしまいます。
A.その感情にとらわれず、すぐに"受け流す"のが大切。
「心のなかだけで瞬間的にそう思ってしまったのなら、しょうがありません。でも、それを後へ引きずらないことが大切です。そんなふうに思った自分を後悔したり、嫌だなどと思い悩んだりするほうが問題です。その感情にとらわれてしまうと、なかなか忘れられません。ネガティブな気持ちはさっと受け流して」
Q.人の幸せを喜べず、嫉妬したり、人の不幸を喜んだりしてしまうときがあります。
A.他人と比べない。「今までの自分」と比較を。
「誰しも、他人と自分とを比べる思考回路が染みついています。『人は人』と割り切ろうとすればするほど、余計に他人が気になってしまうもの。そんなときは比較の対象を過去の自分に変えてみましょう。すると、自分が幸せになるためには何が足りないのか、これからどうすればいいのかと前向きに考えられます」
Q.「いい人仮面」をかぶって、ついお世辞を言ったり、自分の意見を口に出せないまま終わったり。そのたびに後悔してしまいます。
A.仮面を外したときこそ、自分本来の魅力が表れます。
誰しもいい人に見られたいですよね。でも実は、あなたを「いい人」と見る他者はあなたの思考の中にしか存在しません。いわば「いい人仮面」をかぶって一人相撲をしているようなもの。勇気を出して、仮面を外してください。その人の本当の魅力は、仮面を外したときに自然に表れてくるものですよ。
この人に聞きました
未来の住職塾 塾長。79年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。超宗派仏教徒のウェブサイト「彼岸寺」(higan.net)を設立。10年にインド留学し、MBA取得。著書は『「こころの静寂」を手に入れる37の方法』(徳間書店)など。
[日経ウーマン 2016年2月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。