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増える高額レトルトカレー、高級食材で地域アピール ご当地レトルトカレー最前線

2016/3/11

 週に一度は食べているという人も珍しくないほど、日本人の「国民食」として高い人気を誇るカレー。中でも長期保存でき、食べたい時に手軽に食べられるレトルトカレーは、忙しい社会人や一人暮らしの人から根強い支持を得ている。

 実はこのレトルトカレー、これまでに国内だけでも累計2000以上もの種類が発売されているのをご存じだろうか。その多くが、全国の商工会議所などが手がける「ご当地モノ」のレトルトカレー。地域の名産をレトルトカレーにした商品を、旅行先で目にしたことがある人も多いかもしれない。その「ご当地レトルトカレー」に、近年ある動きがみられるという。

■プレミアム化、背景にブームの長期化

「ご当地レトルトカレーの人気は、一時期に比べると落ち着いてきたと思います。一方で、このところ高額な商品が目立つようになってきました」(東京・足立区でレトルトカレーの専門店「カレーランド」を経営する猪俣吉章さん)

 大手企業が発売しているレトルトカレーが100円から300円なのに対し、ご当地レトルトカレーの相場は500円ほど。もともと決して安くはなかったがさらなる高額化が進んでおり、中には1000円を超えるのもある。一般的なレストランで提供されるカレーでも、1000円を超えるものは多くない。猪俣さんによれば、こうした「プレミアム化」の背景には、ブームが長期化し、業界が飽和状態にあることが影響しているという。

「膨大な数の商品が発売されているので、ただ名産を入れるだけではなかなか新しいヒットは生まれない。加えて、ご当地レトルトカレーファンも様々な商品を食べてきて、舌も肥えてきている。高いお金を払っても、これまでよりもおいしいものを食べたいという人が増えている」(猪俣さん)

レトルトカレー好きが高じて2013年、足立区に専門店「カレーランド」をオープンした猪俣さん。カレーランドは4月1日から浅草にてリニューアルオープンの予定

■発売当初は「高すぎる」と不評だった

 実は発売当初のレトルトカレーも「高額」だった。

 レトルトカレーの歴史は1968年に大塚食品から発売された「ボンカレー」に始まる。発売当初は外食の素うどんが一食50~60円に対して1個80円と高額だったたため、「『高すぎる』と世間の反応も売り上げも厳しいものでした」(大塚食品広報室)。

1968年に世界初の市販用レトルトカレーとなったボンカレー。女優・松山容子さんのパッケージがトレードマークだった

 ところが70年代に入ると、経済成長に突入し主に都市部での核家族化が進む。これに伴って個食化が進み、レトルトカレーの需要も高まっていった。こうした流れを受けてハウス食品、エスビー食品ら大手企業が続々と参入し、急速に市場が拡大。全日本カレー工業協同組合が公開している日本缶詰びん詰レトルト食品協会調査によるデータをみると、1971年には年間のレトルトカレー生産量が2万トンを突破、以後着実に生産量を伸ばし、1990年代後半には10万トンを超えるまでに成長した。

 加えて、2000年ごろからご当地グルメブームに火が付き、その勢いがレトルトカレーにも波及。郷土色豊かなご当地レトルトカレーが誕生することになる。

 ラインアップを見てみると、名産の肉や海鮮を大きく打ち出した定番のものだけでなく、いちごやメロンなどのフルーツ、干し芋やサンショウといった意外なものまで多種多様。「ちょい足し」ではないが、カレーはもともとどんな具材を入れても成立する料理。そんな懐の広さも、多彩なご当地レトルトカレーが誕生する土壌となったようだ。

■大手企業もプレミアムレトルト

 プレミアム化はご当地モノに限らない。大塚食品は昨年2月、ブランド史上初の高価格帯商品である「The ボンカレー」を発売した。

 同社によると、最近、消費者から寄せられる声には「安全・安心」と「高級志向」を求める声が多いという。「こだわりを求める方のために通常のボンカレーより具材が大きく、製法にも手間をかけている」(広報室)。「The ボンカレー」の価格は540円(税込み)と、同社の「ボンカレーゴールド」(194円、税込み)に比べて約3倍の値段だが、売れ行きは好調だ。

2015年に発売された大塚食品初のプレミアム商品「The ボンカレー」。野菜は国産のものを厳選し、貴重な牛テールスープを使うなどこだわった

 ただし、日本缶詰びん詰レトルト食品協会が発表したデータを見ると、レトルトカレーの生産量は2009年に2200万箱を突破して以降2014年までほぼ横ばいで、市場自体は落ち着いている。現在のレトルトカレー業界はブームで獲得した一定層のマニアに対していかにアピールするかがポイントとなり、その中でプレミアム化が進んだと言えそうだ。

「ご当地レトルトカレーの魅力はとにかく開発者の思い入れが強いこと。中には開発に半年以上を費やしているというところもありました。買い付けの際に地域の商工会議所の方などと話をしていても、彼らは『カレーを売りたい』という以上に自分たちの地域をPRしたいという意識が強いように思います」

「たとえば、茨城県の常陸牛ビーフカレーは一箱2160円(税込み 価格はカレーランドのもの)。まず常陸牛が高級な黒毛和牛であることに加えて、ルーに使われる野菜やワインなどもすべて茨城県産にこだわっている。高価格化によってご当地レトルトカレーに各地域の特徴やこだわりを色濃く反映できるようになり、今後さらにバラエティー豊かなものが出てくるのでは」(猪俣さん)

◇  ◇  ◇

 プレミアム化が進むレトルトカレーにはどんなものがあるのか。次回から4回に分けて、話題のご当地レトルトカレーを紹介していく。最初に取り上げるのは、レトルトカレーなのに大きな肉が入った「肉系レトルトカレー」だ。

次回は、レトルトカレーなのに大きな肉が入った「肉系レトルトカレー」を取り上げる (写真:ヤマシタチカコ)

(取材・文 小沼理<かみゆ>)

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