2万円台でも高級感 エイスースの2in1ノート
戸田覚のPC進化論
8.9型液晶のWindowsタブレットが3万円以下と聞くと、かなり安いが、あり得ない価格ではないと思う。ところがエイスーステック・コンピューターの「ASUS TransBook T90 Chi-3775」は、3万円を切りながらもキーボード付き2in1ノートだというのだから恐れ入る。
実を言うと、僕はASUS TransBook T90 Chiを「2in1モデル」とは呼びたくない。2in1モデルは、あくまでもタブレットとノートを兼ねるものだと考えているからだ。
キーボードが脱着できるタイプだとしても、2in1モデルならキーボード側にも各種コネクターが配置されているべきだろう。専用のキーボードが用意されているだけなら、それは単なるタブレットだ。僕の基準ではマイクロソフト「Surface」もタブレットに入る。そう考えなければ、キーボードケースを付けるだけで、ほとんどのタブレットが2in1モデルになってしまう。
それはさておき、ASUS TransBook T90 Chiが素晴らしいのは、241×137×7.5mmというスリムさ。キーボードを付けても厚さは16.5mmだ。400gという重量もなかなか軽く、キーボード込みでも750gに収まっている。
キーボードの充電が少し面倒
本体がコンパクトな分、液晶は8.9型と小さめだ。1280×800ドットと解像度が低いのは致し方ない。縦横比は10対16だが、iPadを使い慣れている僕には縦幅が狭く思えた。IPS液晶を使っており、価格を考えると画質は良好だ。
キーボードの脱着は、エイスースお得意の磁石方式。この方式だと、ちょうつがい部分がすっきりするメリットがある。キーボードはかなりしっかり付いているので、液晶を持ち上げても外れるようなことはない一方、手でキーボードをしっかりと押さえて液晶を持ち上げれば、すんなりと外れる。
キーボードとの接続はBluetoothだが、本体とは別に充電しなければならないのが面倒だ。できることなら、バッテリーは共通化するか、本体から供給する仕組みにしてほしかった。
タスクバーがタッチしづらい
キーボードは、思っていたよりも打ちやすいと感じた。キーピッチは定規による計測で16.5mm程度だが、ストロークがしっかりと確保されているからだろう。サイズを考えれば打ち心地は合格点だ。
ただし、本体がコンパクトなのでしわ寄せが配列に及び、一部のキーが小さくなっているなど、それなりの制約はある。なかでも見過ごせない重大な欠点が、ポインティングデバイスが付いていないことだ。
徹底的にダウンサイジングを極めるのだったら、それもありだろう。使いづらいスティック式のポインティングデバイスを付けるより潔くていい。しかし、Windows 10ではタスクバーが画面下部に表示されるため、キーボードが邪魔をしてタッチしづらいのには困った。
前モデルはWindows 8を搭載していたので、特に問題はなかったのだろう。だが、Windows 10搭載モデルとしては使いにくい。
タブレットとして使うならおすすめ
ASUS TransBook T90 ChiのCPUはAtom Z3775でメモリーは2GB、ストレージは64GBだ。前モデルは32GBで同等の価格だったので、コストパフォーマンスは良くなっている。
一方、拡張性は、充電を兼ねるmicroUSB端子があるだけ。パソコン的に使うには無理がある。基本的にはタブレットとして利用し、メールの返信など必要なときだけキーボードを取り付けるのが、この製品に見合った使い方だろう。キーボードと一緒にマウスを使いたいところだが、外出先での利用が主になる機種としては、ちょっとちぐはぐな印象だ。
天板はアルミ製でとても質感が良く、剛性感が高い。3万円を切るモデルとは思えない高級感で、お買い得感が素晴らしい。キーボードに大きな欠点はあるが、他社の安価なWindowsタブレットを買うよりは、確実におすすめできる。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
[日経トレンディネット 2016年1月5日付の記事を再構成]
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