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映像だけが見ている世界を信じて

現代美術家 田中功起さん

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NIKKEI STYLE

「ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る」「一台のピアノを五人のピアニストが弾く」。そんな特異な状況を設定して記録した映像で2013年のベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本代表となり、特別表彰を受けた。昨年はドイツ銀行の「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」にも選出。米国を拠点に世界に活躍の場を広げている。

国内で初めてとなる大規模な個展が現在、水戸芸術館で開催中(5月15日まで)。ベネチア出展作のほか新旧4つのプロジェクトの映像を多数のモニターで流す空間構成だ。中でも昨秋、水戸に滞在して撮影した合計246分に及ぶ新プロジェクトの映像二十数本が今回のメーンとなる。

「あなたはどのような場面でまったく初対面のだれかに心を開くだろうか。あなたは隣にいるだれかとどのようなとき、共に助け合おうとするだろうか」

展覧会名でもある「共にいることの可能性、その試み」と題された新作は、作家が問いかける命題の答えを探るプロジェクト。公募した6人の一般人とファシリテーター(進行役)、撮影チームの計16人にひとつ屋根の下で6日間共同生活を送ってもらい、彼らが参加するワークショップの様子などを撮影した。

「参加者の条件は、出生地と異なる国・場所への移住経験のある人。彼らはどこまで他者に寛容で、どのくらい自由に発言できるのか。日常生活の中で軽く受け流してしまうそうした人間関係をとらえたかった」

他者の間で生きるには寛容さが必要。そんな経験を持つ人たちが「仮の共同体」で凝縮された時間を過ごしたとき、命題に答えが出るか。「僕自身、海外に移住して突然マイノリティーになった経験があり、他者に寛容になれることが共同体の未来になりうるという思いを持った」と背景を語る。

ワークショップは料理、たき火、朗読、ナイトウォーク、陶芸、社会問題の討議の6つ。状況設定が一つだったベネチア出品作に対し、大がかりで複雑だ。

とはいえ、寛容さが発揮される場面はなかなか訪れない。社会問題の討論の場では各人の個性や差異ばかりが浮き彫りに。プロジェクト自体に疑義を唱える作家批判も飛び出す。「ある種の敵対や不和は深い相互理解のきっかけになる」とむしろ歓迎したが、「仮の共同体という設定により、この場さえ受け流せばいいという流れができ、そこまで深く降りられなかった」

「最初の設定それ自体に意味はない」。始まったら決して介入せず、流れに任せる。膨大な映像を編集するような、作為も加えない。「映像は長いし、テキストも多くて不親切。未解決の問題もいろいろ含まれている。でもそれほど時間をかけて見なくてもある程度の状況は受け取れるはず」と鑑賞者の眼にゆだねる。

反省点は次のプロジェクトの肥やしとし、方法論を磨く。それだけ映像の可能性を信じている。「複数のカメラがとらえる映像は1人の視点とは全然違うし、現場にいる者やカメラマンでさえ見えていない景色も記録している。映像だけが見ている世界がきっとあるはず」。衒(てら)いのない言葉に、創作活動への揺るぎない自信を感じた。

定まらないゆえ、懐深く

この人を何と呼ぶべきか。現代美術、映像作品を筆頭に、インスタレーション、文筆、パフォーマンスなど多彩な方法で世界を切り取る。近年は個人と集団の関係性に着目し、そこに切り込む映像プロジェクトの企画オーガナイザーという側面が強い。

強烈な個性や表現の奇抜さなどの作家性が見えにくいのも、肩書が定まらない理由に挙げられる。「僕自身は作品の中にいるようないないような、微妙なポジションにいる」。そのあいまいな立ち位置と同様、明確な作家性を現さないのが実はこの人の作家性でもあるのだ。

とはいえ彼の作品は、初期の作品から現在まで、とかくコンセプチュアルアートが装いたがる難解さが一切ない。小手先の技巧に頼らず、素直であっけらかんとしている。鑑賞者はそこで安心して作品の自由な解釈を楽しみ、やがてそのどれもが間違いなのではないかと立ち止まって考える。その懐の深さが世界に伍(ご)する条件なのだろう。

(文化部 富田律之)

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