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リーダーに戦略を聞く

食の口コミ、世界へ~ABCクッキング社長に聞く(1)

2016/3/3

 料理教室を運営するABCクッキングスタジオ(東京・千代田、以下ABC)。1985年に静岡で生まれた料理教室は東京中心に全国展開し、アジアに進出。「口コミ」で料理作りの輪をつくる独自のビジネスモデルで会員数は28万人に拡大した。2014年にはNTTドコモと資本提携した。社長の桜井稚子さんに今後の戦略などについて聞いた。

■全国に135スタジオ、アジアにも展開

――現在、ABCのスタジオはどのくらい展開しているのでしょうか?

 日本国内では北海道から沖縄まで135のスタジオを展開しています。また海外への進出も直営、フランチャイズともに積極的に行っていて、タイ・中国・香港・台湾・韓国・シンガポールの6カ国で16スタジオを展開しています。今後はアジアにとどまらず、欧米にも展開していきたいと考えています。

――会社の発祥は静岡ですね。

 おっしゃるとおり、ABCは静岡から始まりました。私が入社した02年には、すでに約40スタジオが展開されていました。私も最初は料理教室の運営スタッフとして入社し、お客様から多くのことを学ぶ機会をいただきました。

 「食」というコンテンツが持つ事業の可能性や、女性が活躍して成長をし続けるABCに魅力を感じて入社しました。

■もともとは台所用品の会社

――通常、料理教室というと限定的な地域でのみ事業運営されることが多いと思います。しかし、ABCは日本全国にスタジオが展開されていますね。このように全国展開に成功した料理教室は日本で初めてなのではないでしょうか?

 お客様のニーズに応え続けた結果、全国に展開できたと考えています。当初、ABCはキッチン用品を販売するお店でした。鍋などを販売していると、お客様から「購入した鍋をもっとうまく使いこなしたい」「鍋を使っていろいろな料理を作りたい」という要望をいただきました。このようなお客様の声がきっかけで、材料費をいただきながら、購入品を活用するための料理教室をはじめたのがABCのスタートだといえます。スタジオの全国展開も、お客様に提供する商品も、お客様のニーズに合わせて進化し現在の事業展開に至りました。

――料理教室がこのように全国展開した要因は何でしょうか?

 大きくは2つあります。1つ目は「先生」の教育プログラムだと思っています。大半の料理教室は有名な料理研究家さんやシェフの方など「先生ありき」なため、その先生が対応できる範囲でしか料理教室を展開することが難しいと思います。一方ABCでは、プロだけにこだわらず、生徒だった方も先生として活躍できるようなプログラムや制度を設けています。ライセンスを取得し考査に受かれば先生になれるチャンスが生まれるため、生徒の気持ちがよく理解できる先生が多く誕生したことにより全国に展開できたのだと思います。

 また、ABCとしても先生たちへの継続的な研修機会を設け、カジュアルな雰囲気の中でもしっかり身に着く料理教室の環境づくりに努めています。ABCは「料理のイロハ」を意味しています。これまで料理に親しんだことのない方でも安心して通っていただけることを大切にしています。そのため、料理教室もスクールではなく「スタジオ」と呼ぶようにしています。レッスンを通じて手作りの楽しさを生徒の皆さまに知っていただき、家庭でコミュニケーションツールとして「食」を楽しんでいただきたいという思いがあります。

■ガラス張りのスタジオで誘客

 2つ目は「ガラス張りのスタジオ」の存在です。ABCでは商業施設内などにガラス張りの店舗デザインで料理教室を展開しています。これこそまさに、私たちの強力なプロモーションだと思っています。テレビCMなど大々的な宣伝活動を行っていないため、口コミでスタジオに通っていただく方が大半を占めるのですが、これこそお客様の満足度を計る最も有効な指標だとも考えています。

 また、女性が料理をしていると男性・女性問わずお客様が立ち寄られ、ガラス越しに料理教室を見学してくださいます。人が立ち止まって注目することにより、商業施設内にも活気が溢れます。またABCの主な顧客層は20歳から35歳ですから、商業施設側が集客したい層とも近しくお互いにメリットが創出できると考えています。

 さらにみなさまに定期的にスタジオに通っていただく中で、施設内の別の店舗さまでキッチン用品やエプロンを購入されるなど、商業施設にも副次的な効果がもたらされる可能性もあります。

(聞き手は日経Bizアカデミー編集長 代慶達也 写真撮影、取材・構成 渡辺智哉 滝川理紗)

櫻井さんの略歴 1973年生まれ、静岡県出身。2002年、株式会社ジェンヌ(現在のABCクッキングスタジオ)入社。スタジオ運営スタッフとして働きはじめ 入社1年目に店長、4年目にはエリア執行責任者。その後、出産・育児休暇を経て東京本社顧客サービス部の部長として復職。以降は人事・総務の部長として 女性が働きやすい環境づくりをめざし「ワークライフ制度 女性が働きやすい環境づくりの構築を推進。2013年7月に代表取締役社長に就任

[日経Bizアカデミー 2016年1月21日付]

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