子供の前で夫とけんかしない 小川菜摘さん
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は女優・タレントの小川菜摘さんだ。
――お母さんはどんな人でしたか。
「母は厳しく、53歳の私に今も口うるさく言いますね。でもやりたいことはやらせてくれ、欲しいものは買ってくれました。パンダのぬいぐるみ、ローラースケートなど、いつの間にか手元にあった。一人娘の私を甘やかして、かわいがっていたんだなと今は思います」
「私には普通にお勤めしてお嫁にいってほしいと思っていたようです。昨年他界した父はサックス奏者で、私が15歳でデビューしたときも協力的。両極端でした」
――芸能活動には反対だったのですか?
「芸能界を志したのは、舞台女優だった母の妹の影響です。中学の夏休みに叔母の舞台の黒子を務めました。高校に合格したらオーディションを受けて良いと言われ、まさかの合格。そのまま叔母の事務所に入ったので、反対も何もありませんでした」
「当時、制服のスカートは長ければ長いほど格好よかった。毎朝家を出るときはウエスト部分で短く巻き上げて、外では長く伸ばしてはいていました。ところがある日、長いスカートのままうっかり帰宅したら、翌朝裾上げされていたのです。『人より目立つことをしているのだから、誰よりもきちっとしていなさい』『仕事をしたいなら私生活もしっかり』と母は言っていましたね」
――母親になって、実践していることはありますか。
「両親はけんかすることが多く、子供心に傷ついていました。私は結婚して27年目ですが、子どもの前で夫(ダウンタウンの浜田雅功さん)とけんかはしません。両親の仲の良い姿が平和だと思うからです。口げんかしようと思ったら、両親に子どもを預けていたくらいです。子どもにはお父さんの悪口は言わない。すごく格好いいんだと、リスペクトしている様子を見せてきました」
「一方で親にもダメなところはある。人間なので、イライラしたりストレスを子どもたちにぶつけてしまったりはあります。そんなときは後から子どもたちに謝ります。『お母さん、イライラしていたの、ごめんね』と」
「母は豪快で竹を割ったような性格。感情のまま生きている人です。私が子どもに謝れるのは、母の裏表のないところを見てきたからですね」
――舞台の仕事が増えています。
「昨年明治座でのお芝居に母を呼んだら、喜んでくれてうれしかったですね」
「2人の息子は今20代。3年ほど前、私が舞台に立つ姿を初めて目にし『お母さん、これがやりたかったんだね』とメールをくれました。子育て中の26年間我慢してきた舞台にやっと立てた。家族が応援している。復帰して良かったと思います」
[日本経済新聞夕刊2016年3月1日付]
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