手帳も自分らしく 大人向けの付箋とシールが人気
キングジム 暮らしのキロク、オトナのシールコレクション
手書きのノートやメモ帳をスマホで撮影してデジタル化できる「ショットノート」(2011年発売)や、メモ機能に特化したデジタルメモデバイス「ポメラ」(2008年発売)など、日本のデジタル文具市場をけん引してきたキングジム。そんなキングジムの商品で最近人気の商品が、ライフログを書き込み、手帳などに貼り付けて使用する付箋「暮らしのキロク」だ。
「SWEETS」「SHOPPING」「GIFT」など、用途が異なる12種類の付箋を2015年8月に発売したところ、3カ月ほどで10万冊を売り上げた。
デジタル文具で有名なキングジムにしては少々意外に思えるが、同社ではアナログ文具の新商品も好調だ。ショットノートの開発を立ち上げから担当しているキングジム開発本部の遠藤慎・商品開発部開発四課リーダーは、「もともとアナログの文具を便利にするためにデジタル化したのがショットノート。紙のノートの検索性を高めようと開発したもので、デジタルはそのための手段」と語る。必ずしもデジタル文具が優れているわけではないというのだ。
記録を残したい気持ちを後押し
読んだ本や鑑賞した映画の記録を書き込む暮らしのキロクは、消費者の気持ちに応える商品だ。手帳やノートにさまざまな情報を書き留めたいという気持ちはあるものの、「何をどう書いたらいいか分からない」という消費者の気持ちを汲み、記録して残すという行為を後押ししてくれる。
好調の一因を「消費者は、さまざま情報を手帳に記録すること自体を楽しんでいる」と遠藤リーダーは分析する。そのさらに奥にあるものを探ると、女性を中心に根付いている「手帳をデコレーションする」という文化があるようだ。手帳を自分らしくかわいく飾るには、アナログの方が向く。記録することのハードルを下げて、手帳をより自分らしく使いこなせるようにサポートしてくれる文具が今、受けているのだ。
2015年4月に発売した「大人のシールコレクション」もまた、自分らしいデコレーションを支える商品だ。デコレーションに用いるシールの収納に特化した小型のファイルは、シールを便利に保管できるだけでなく、コレクションを集める意欲に応えるという側面も持っている。
一方、デジタル化が加速しているのが名刺の分野だと言う。名刺に記載されたメールアドレスや電話番号といった情報は、PCやスマホで使うため、検索や記入の手間を考えると、デジタルが圧倒的に有利。しかし、名刺交換というアナログ文化は定着しきっており、アナログ(紙)の名刺をデジタルに変換する機器やソフトが人気を集めるというわけだ。
同社の売り上げは現在、デジタル文具とアナログ文具が半々ほど。デジタルで発案した商品がアナログになったり、その逆もあると言う。デジタルとアナログを用途に合わせて使い分け、次々とヒット文具を生み出している。
(ライター 廣川淳哉)
[日経デザイン2016年1月号の記事を再構成]
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