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BCGの特訓

ビジネスで「投球術」キラリ、あなたもエースに! ~成長を加速させる2つの要件~

木村亮示/木山聡 ボストン コンサルティング グループ(BCG) パートナー&マネージング・ディレクター

2016/3/9

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●スキルは集めるよりも「使い方」が重要

 繰り返しになるが、誤解しないでほしいのは、「スキルはまったく不要で役に立たない」と言っているわけではないことだ。スキルは必要ではあるが、個別のスキルをそろえること「だけ」を追求しても、成長し続けられる人にはなれない、と認識していただきたい。

 では、スキルマニアを脱して、成長し続けられる人になるには何が必要なのだろうか。

 継続的な成長を実現させるためには、個別スキルの習得を超えて、大きく2つの要件が求められる。

 1つ目の要件は、スキルの「使い方」を身につけることだ。

 ビジネスの現場でもっとも重要なのは、次々に発生するさまざまな課題に対してスピーディーに対応していくことだ。一つひとつのスキルを究めることは重要だが、残念ながら、特定のスキルだけで対応できる課題は非常に少ない。また、場合によっては、自分が身につけたスキルを使おうとこだわるあまり、実務対応の障害になることすらある。

 中途採用のコンサルタントの場合、入社半年くらいたつと、分析やスライドライティング(プレゼンなどで使用するスライドの作成)のスキルが一定の水準に到達するのが一般的だ。

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 今までできなかったことができるようになると、自分が新たに身につけたスキルを何かと利用したくなる。ところが、その結果は必ずしもサクセスストーリーになるわけではない。

「非常に精緻な分析アプローチで対応しようとして、意思決定のスピードが犠牲になる」「誠意と情熱で納得してもらうべき話を、理詰めで説明しようとして失敗する」など、冗談のような話が現実に起こるのだ。

 どのようなスキルであっても、いつ、どのような形で使うべきかを判断する力がなければ成果にはつながらない。

●球種を増やし、球速を追求するだけでは勝てない

 個別スキルの習得は重要だが、その「使い方」を知らなければ結局のところ成果にはつながらない。この日常生活では当たり前のことが、なぜかビジネスという文脈では、意外と意識されていないことが多い。

 スポーツの話で考えるとわかりやすい。野球のピッチャーを例にとってみよう。

 先に紹介した“コレクション型スキルマニア”は、言うなれば、球種を増やすことに血道をあげているピッチャーである。一方、“突き詰め型スキルマニア”は、ストレートの速度にのみこだわり続けるタイプ。このようにたとえれば、わかりやすいだろうか。

 そして、「スキルの使い方を身につける」に相当するのは、「アウトが取れる投球術を身につける」ことだ。もちろん、ピッチャーとしての勝率を上げていくうえで、球種が多いに越したことはないし、ストレートも速いに越したことはない。しかしながら、どんなに球種を増やし、球速を高めても、状況判断力をしっかり磨かなければ勝利することはできないだろう。

 前回の対戦時の組み立て、相手バッターの調子・体調やけがの有無、得意・不得意な球種、出塁者の有無、守備陣の実力や調子、バッターやランナーの足の速さ、ボールカウント……。

 野球には決して詳しくないが、それでも優れたピッチャーが多くの情報を考慮に入れながらピッチングを組み立てていることは容易に想像できる。

 多くの球種を身につけたからといって、すべての球種を繰り出すことにこだわっていては勝てないし、どんな状況でもストレート一本でごり押しというのではやはり高い勝率は期待できないだろう。

 野球では、キャッチャーのサインで投球を組み立てることもあるが、それでも一流のピッチャーであれば、同じ球種でも微妙にニュアンスを変えたり、球速をコントロールしたりするなど、対戦相手や状況によって投げ方を自分自身で考えているはずだ。

●手にしたスキルを「使わない」という選択

 このピッチングの組み立てと同じことが、ビジネスシーンにおいても求められる。

 プレゼンテーションスキルがどれほど素晴らしくても、相手の話を徹底的に聞くことが重要な局面もあるだろう。英語が堪能であっても、あえて通訳を入れて日本語で会話をしたほうがよい局面もありうる。3Cや4Pといった、いわゆる分析のフレームワークを知っていても、あえてそういう枠組みを持ち出すべきではない局面も存在する。

 スキルを身につけると、どうしてもTPOにかかわらず身につけたスキルを使いたくなるものだ。

 スキルの「使い方」を身につけるというのは、まずTPOをしっかりと認識し、それを踏まえて、どのようなアプローチが有効かを考えるということだ。そのうえで、身につけたスキルが活(い)かせるなら使えばよいし、活かせそうにないなら、持っているスキルを披露したいという衝動を抑えなければならない。

 スキルそのものを身につけるのはむしろ簡単だろう。しかし、スキルの「使い方」を磨くのは簡単ではない。なぜなら、どんなスキルをどのような場面でどのように使うかは、人から学んで習得できるものではなく、ひたすら場を経験することで実践を重ね、磨いていくしかないからだ。

 そこで重要になるのが、2つ目の要件である「マインドセット(基本姿勢)」である。

 マインドセットができていないと、個別のスキルを磨いてもその使い方を磨くことができない。だから成長につながらない。

 (1)しっかりとした、土台となるマインドセットを持ったうえで、(2)個別のスキルを習得し、(3)そのスキルの使い方を磨く――。

 この3つをセットで強化することが、これからも成長できる、成長し続けられる人になるために重要なのである(図1-2)。


[2016年2月5日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

木村 亮示(きむら・りょうじ)
BCG東京オフィス パートナー&マネージング・ディレクター
京都大学経済学部卒業。HEC経営大学院経営学修士(MBA)。国際協力銀行、BCGパリオフィスを経て現在に至る。幅広い業界のクライアントに対して各種事業戦略の策定・実行支援、新規事業立ち上げ、トランスフォーメーション(構造的改革)などのコンサルティングを行っている。BCGジャパン 人事/人材チームの総責任者として、コンサルティングスタッフの育成、採用、人材マネジメン卜などを統括している。アジアパシフィックの採用チームリーダーも務める。
木山 聡(きやま・さとし)
BCG中部・関西オフィス パートナー&マネージング・ディレクター
東京大学経済学部卒業。伊藤忠商事株式会社を経て現在に至る。広範な業界のクライアントに対して各種事業戦略、新興国戦略の策定・実行、トランスフォーメーション(構造的改革)、ガバナンス改革等の支援を行っている。BCG中部・関西オフィスの社内マネジメン卜を統括するとともに、BCGジャパン人事/人材チームのコンサルタン卜育成委員会のリーダーとしてコンサルティングスタッフの育成に携わる。

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

著者 : 木村 亮示, 木山 聡
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,728円 (税込み)

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