「うまい」追求、期待と重圧楽しむ 神崎夕紀さん
キリンビール神戸工場長(キャリアの扉)
2015年春、ビール大手で初となる女性の工場長が誕生した。キリンビール神戸工場長の神崎夕紀さんが目指すのは「元気で明るい職場」だ。「ビールは嗜好品。深刻な顔をして作ってもおいしいはずがない」という信念がある。
農学系の大学院修了後、体外診断用医薬品メーカーを経てキリンビールに転じた。入社後を振り返り、「どれも面白い仕事ばかりだった」と屈託ない笑顔を見せる。
工場長就任を打診されたときは「こんなに早く来るとは思わなかった」と驚いたが、変わろうとする会社の意思を感じた。後輩にも「チャンスに応えられる準備」を心がけてほしいと考える。
目の前の仕事はチャンスの一つだ。謙虚な気持ちで取り組んで良かったと初任地を思い出す。福岡工場で配属されたのは品質保証の部署だ。当時は品質保証の考え方が国内外で変わりつつある時期だった。
最終的な製品の品質だけでなく、一つ一つの製造工程が基準を満たしているか、横串を刺して管理する機能が必要になっていた。「工程の全体を見渡す視点を持つことができ、花形である製造ラインへの興味が強くなった」
神戸工場は神崎さんにとって懐かしい古巣だ。1997年の工場設立に携わり、品質保証担当として1年、醸造担当として6年半を過ごした。ビール造りに関わる全てを経験し「会社で自信を持って生きていくための地固めができた」。
栃木工場では醸造担当部長を3年余り務めた。キリンビールで工場の部長は「一番楽しい管理職」といわれる。40~50人の製造ラインを束ねる「一国一城のあるじ」だ。男性が多い職場ということもあり簡単な立場ではなかったが、周囲からの期待と重圧を楽しんだ。
神戸では工場長として「キリンビールのファンを増やす旗振り役」を担う。同社は全国の工場で主力ビール「一番搾り」の地域限定品を売り出す企画を始めた。神戸工場の「神戸づくり」は地元・兵庫県産の酒米「山田錦」を副原料に使い、すっきりとした味わいだ。「ここに工場がある意味を地域の人と考え、新しい価値を提供したい」と力を込める。
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