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相続人の数が2倍に? 実家の所有権、早めの登記を

2016/2/29

 Aさんが実家で同居していた父を亡くしたのは7年前。Aさんは家に住み続けることにして、弟や妹らにも納得してもらった。ところが半年ほど前、Aさんはあるミスに気付いた。実家の土地・建物を自分の名義に変える手続きを怠り、所有者が父のままになっていたことだ。家の修繕で銀行から借金しようとした際、名義が違うので抵当権を設定できないと指摘されて、はっとしたAさん。さらなる試練が待ち受けていたのは最近になってからだ。

 親が亡くなり遺言書を残していなかった場合、本来は法定相続人みんなで遺産の分け方を決めて、遺産分割協議書の形にまとめます。協議書にはみんなが署名し実印を押します。この書類を提出することにより、遺産を相続する人の名義に直す必要があります。

 しかし現実には「話し合いや手続きが面倒だからという理由で故人の名義のまま放置するケースが少なくない」と司法書士の船橋幹男さんは言います。相続に伴う不動産の名義変更を「相続登記」といいます。申請期限がないことも手続きを怠りやすい一因です。

 Aさんの場合、母と弟、妹という相続人全員と話をして実家の扱いを決めたものの、協議書は作らず、相続登記の手続きもしませんでした。みんなが納得しているので構わないようにみえますが、後々不都合が生じることが考えられます。

 例えば土地・建物を担保に融資を受けたい場合、抵当権設定登記ができないので金融機関は融資に応じません。土地・建物を売却したくても故人の名義のままでは、売買による所有権移転登記ができません。

 より深刻な事態は年月の経過とともに起きるかもしれません。なぜでしょう。

 Aさんの例では最近、弟が亡くなりました。妻と子ども1人を残した急死でした。その故人が持っていた相続権を引き継ぐことによって、今度は彼女ら2人が法定相続人の仲間に加わることになりました(図)。

 前述のとおり、相続登記を含めて遺産の名義変更には遺産分割協議書が必要です。ですからAさんは、亡弟の妻と子どもを含め、相続人全員で話し合いの場を持たなければなりません。間柄は希薄ですし、簡単に同意してくれるでしょうか。「家を売ってお金を分けてほしい」などと誰か言い出すかもしれません。

 司法書士の大貫正男さんは「相続登記を長年怠った結果、相続人の数が2桁になることも珍しくない」と話します。Aさんの場合も放置すればするほど相続人が増えて話し合いはより難しくなる心配があります。

 紛争になった場合は弁護士に調整を依頼するといいでしょう。相続人が円満に名義変更を認めてくれそうな場合でも相続登記は専門的なので司法書士に依頼するのが一般的です。専門家は「相続登記はできるだけ早い時期に済ませてほしい」としています。

[日本経済新聞朝刊2016年2月24日付]

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相続登記協議書名義変更

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