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金・プラチナ投資、株安で弾み 実物資産に安心感

2016/2/28

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写真提供=田中貴金属工業
写真提供=田中貴金属工業
貴金属への投資が広がってきた。株価の乱高下を受け、実物の安心感から資金を分散する投資家が目立つ。金では上場投資信託(ETF)の残高が過去最高水準に達し、プラチナ(白金)では地金や積み立ての販売が伸びている。貴金属の価格は株価との相関が低く、資産を守る効果も得られやすい。

ETF残高最高

日経平均株価が900円超下がり、長期金利が初のマイナスになった9日。東京商品取引所の金相場は1グラム4362円と約3カ月ぶりの高値を付けた。東商取の金相場は三菱UFJ信託銀行が管理する金ETF「金の果実」の価格指標になる。さらなる上昇を期待した投資家が「金の果実」を積極的に買い付け、純資産残高は金額ベースで444.9億円と過去最高水準に膨らんだ。(グラフA

「金の果実」は購入時に裏付けとなる地金を保管する仕組みなので実物資産の安心感がある。実際、現物株や株価指数ETFを選好していた投資家が資金の一部を振り向けている。マイナス金利導入により、預金の一部を引き出し金に換える動きもあるようだ。

金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は「原油安やドイツ銀、米石油企業の信用不安など複合的不安が背景にある。米国債など安全資産シフトが進んでいたが、金にも新規の買いが入り始めた」と解説する。

先物取引もにわかに活発化してきた。商品取引会社、岡安商事(大阪市)では2月(16日まで)の金標準取引の1日平均売買高が前月比で46%増えた。決済期限のない限日取引も1月は8%増、2月は27%増になった。ネット商品会社、北辰物産(東京・中央)でも1月は標準が3%増、2月(15日まで)は53%増えた。限日も2月は22%増と4カ月連続のプラスだ。

東京都世田谷区の会社員の50代女性は「株価と反対の動きをすると聞いて株のヘッジに買った」と明かす。「米利上げが織り込み済みとなり、金が反発すると期待していた」と話すのは静岡県の自営業の50代男性。山梨県の自営業の40代男性は「FX(外国為替証拠金)取引がうまくいかず金買いを始めた」という。

北辰物産の岩田康男事業開発グループ部長は「金の組み入れは資産保全になる。株が不安定なら買われるし、ドル安になればドルの代替通貨とされる金にマネーが流入し、円高でも上昇しやすい」と指摘する。

地金ではプラチナの好調ぶりが目立つ。田中貴金属工業グループの2015年のプラチナ地金販売量は前年比3.6倍の16.73トンと過去最高に達した。今年1月も前年同月比で18倍と大幅に増えている。石福金属興業の販売量も昨年は2倍に拡大。今年1月も10倍という。月々3000円から予算に合わせて地金を購入できる純プラチナ積立も好調だ。石福金属興業では1月末残高が前年同月末比で48%増加。三菱マテリアルも56%増になっている。

人気の理由は通常なら金より高い相場が逆に安くなっているという点だ。18日のニューヨーク先物は金が1トロイオンス1226ドルだがプラチナは945ドルと281ドル安い(グラフB)。田中貴金属工業の18日の小売価格も、1グラム4828円の金に対しプラチナは3837円にとどまる。500グラムバーなら消費税込みで191.85万円になる計算だ。

「プラチナの世界生産は金の約20分の1と希少性があり、価格も再び金を上回る可能性が高い。購入層の中心は40~50代と金より低く、今後も若い世代の需要を喚起したい」と話すのは田中貴金属工業の加藤英一郎貴金属リテール部長。同社は4月からオーストリア造幣局製造コイン「プラチナウィーンコイン ハーモニー」の販売も始める。

こうした積極投資も相場上昇を期待してのことだけに今後の相場が気になるところ。カギを握る需給だが、そのポイントになるのが金とプラチナの需要構造の違いだ。(グラフC

まず金。需要の中で最も大きいのが6割近くを占める宝飾品だ。今年は中国で伸び悩むもののインドでは堅調に推移しそう。2割強を占める投資需要も金融不安を受けて増加傾向にある。1割超の中央銀行の需要も中国、ロシアなどがドル、ユーロからの分散を狙って金を積み増している。

米利上げに注意

注意が必要なのは米国の利上げだ。ペース減速の可能性を示唆しつつ追加利上げ方針は堅持している。実際に利上げが進めば、金利や配当がつかない金の足取りは重くなりやすい。

プラチナ需要は全体の4割強が自動車の排ガス触媒向け。14年夏以降の下落は中国景気減速や欧州景気の伸び悩みを受けて自動車需要が鈍化したからだ。昨秋の独フォルクスワーゲンの排ガス規制不正問題ではディーゼル車の需要減見通しをはやして下げ足を速めた。中国や欧州の景気回復は時間がかかる見通しで当面大きな伸びは期待できない。3割強を占める宝飾品向け需要も低迷している。

相場が堅調に推移するとすれば供給と金の影響だ。プラチナは生産国が南アフリカ共和国だけで7割を占める。南アの有力鉱山に供給不安が起きれば上昇しやすい。同じ貴金属の金につられやすい面もある。

市場が不安定になるほど輝きを増す貴金属。そんな貴金属も米国の利上げや世界景気悪化の影響を免れない。相場には弱材料もあるだけに資産全体の5%前後をメドにした慎重な投資が欠かせない。(浜部貴司)

[日本経済新聞朝刊2016年2月24日付]

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