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大学費用、私大・自宅外なら1200万円 支出時期を把握

2016/2/27

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 大学受験シーズンが佳境に入っている。首尾良く合格できれば、気になるのが学費や生活費を工面できているかどうか。私立大学に自宅外から通えば1人当たりの総額が1000万円を超える可能性があるが、入学時に全額を用意する必要はない。支出する時期をつかみ、貯蓄と運用による自己資金を中心に計画的に用意しよう。

 愛知県に住む公務員のAさん(50)は1浪中の息子の進学先で悩んでいる。自宅から通える名古屋大学が第1志望だが、センター試験の結果が予想外に不調。首都圏の私立大学も候補に浮上し「名大での4年間に備えていた資金では足りない。どう用意したらいいだろうか」と話す。

 受験期は親の関心も合否に集まり、進学後の費用は後回しになりがちだ。「目の前に来た請求を場当たり的に貯蓄から取り崩して払う人がほとんど」とファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子氏は指摘する。しかしこれでは親の生活設計にしわ寄せが起こりかねない。

 まず親の生活費、特に老後資金を確保できるかどうかを考えることが大切だ。畠中氏は「一般的な会社員なら退職時に現在の年収の5~6倍の資金があるといい」と話す。年収が500万円で60歳で退職するなら、2500万~3000万円程度だ。大卒会社員の平均退職金は2000万円強なので、残り500万~1000万円を用意する。

 大学受験期の子がいる親の年齢なら定期預金や保険商品などである程度の資産を持ち、人によっては投資信託などで運用している場合もあるだろう。こうした自己資金で老後資金の見通しを立ててから、学費や生活費などの大学費用を準備するのが基本だ。

■1都3県で1200万円

 では大学費用はどれくらい必要なのだろうか。全国大学生活協同組合連合会と文部科学省の調査から試算すると、最も費用が大きくなるとみられる「1都3県の私立で自宅外通学」の場合で、学費と生活費の合計は平均約1200万円。「国立で自宅通学」なら600万円弱だ。

 もちろん大学費用は一度に支払うわけではない。重要なのはいつ、いくら必要になるかを知ること。私立で自宅外通学なら入学初年度に多額の費用がかかり、2~4年生のときは毎月の生活費に加えて春と秋に学費の支払いで支出が多くなる例がある。金額の差はあるものの、国公立で自宅通学もほぼ同じ傾向だ。

 子どもの通う大学のパターンに合わせて、自分の貯蓄・運用手段のうちどれを充てていくかを考えるといい。いま手元にある資金で払える費用が明確になるほか、保険金などで将来手当てできる費用もはっきりする。

 FPの豊田真弓氏は「入学までに自宅通学なら300万円、自宅外通学は500万円の自己資金を用意するのが最低の目安」と話す。準備は早く始めるほど有利になる。例えば児童手当は所得制限などの条件があるが、子どもがゼロ歳から中学生まで通常は月1万~1万5000円を受け取れる。使わずにためれば約200万円だ。

■2分の3は元本確保型

 残りを毎月の収入などから少しずつ用意していく。大学費用は必要な時期がほぼ決まっているため「確実にためることが最も大事。目標額の3分の2程度は元本の安全性の高い金融商品で準備したい」と豊田氏は助言する。預金や学資保険などが選択肢だ。学資保険は未加入なら、マイナス金利政策の影響で予定利率が下がる前に契約してもいいかもしれない。

 将来のインフレへの備えも欠かせない。現在の超低金利で資金を長期間固定すると、実質的に目減りしかねないからだ。金利上昇にある程度ついていける期間が短めの定期預金や個人向け国債・10年変動金利型が一案になる。

 ただし元本確保型だけでは目標額に届かない可能性がある。残りの3分の1は投資信託などリスク性商品が候補になる。低コストで商品性が分かりやすい分散型のインデックス投信が初心者向きとされる。価格変動で元本割れがあり得るので、どの程度リスクをとれるかはよく考えよう。

 自己資金だけで大学費用を賄いきれない場合は借り入れを考えることもあるだろう。マイナス金利政策で借入金利が下がる可能性はあるが、返済負担の軽いものから選ぶのが基本だ。特に奨学金は子ども名義で借りる。返済の必要がない給付型、無利子の貸与型、有利子の貸与型の順に検討するのが無難だ。

 親名義で借りる場合も生命保険の契約者貸付や社内融資、教育ローンなど幅広く検討し、できるだけ利率の低い方法を選ぶことが大切だ。教育ローンは子どもの在学中は元金据え置きで利息のみの支払いが多いが「老後の負担を軽くするため、在学中から元金の返済を始めておくべきだ」(畠中氏)という。(川本和佳英)

■貸与型の奨学金 返済負担考慮を
 貸与型の奨学金を借りる際は、卒業後の返済負担を考えて金額を決めよう。例えば月に約5万円借りれば総額約240万円になる。15年間かけて返済する場合、無利子型でも毎月の返済は1万3000円程度だ。大卒初任給の平均は2015年で20万2000円だが、一人暮らしなら住居費や食費なども自分で賄う必要がある。
 返済が滞ると延滞金がかかるほか、3カ月以上延滞すると信用情報機関に情報が伝わり、住宅ローンなどを組んだりする場合に審査が不利になる可能性がある。卒業後の収入が少なく返済が難しい場合は、返済額を減らしたり、先延ばししたりできる仕組みもある。

[日本経済新聞朝刊2016年2月24日付]

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