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包丁の研ぎ方を指南 刀の傾き、ぶれずに保つ 合羽橋で包丁研ぎ約40年、鎌田晴一さん

2016/2/24

かまた刃研社の鎌田晴一社長(東京都台東区)

新生活の準備で包丁を買い求める時期になった。買った当初はよく切れるが、使い続けると切れ味は悪くなる。手入れしようにも、研ぎ方がわからずそのまま使いがちだ。日本有数の道具街、東京・合羽橋の包丁専門店「かまた刃研社」の3代目、鎌田晴一さんの包丁研ぎの極意は、寝かせた角度をぶれずに保つことだという。広い面を効率よく削ることができ、早く研ぎ上がるそうだ。

――包丁を毎日使っても研がない人は多そうです。

「研がずに使い続けると、刃がなまって切れ味が悪くなります。余計な力が入り、誤って指を切った時に傷がより深くなってしまいます。酸や塩分の強い食品を切ったり、材質が鋼ならぬれたまま放置したりするとさびやすくなります」

――研ぐために何から始めればいいのでしょうか。

「まずは砥石の準備です。砥石には3種類あり、包丁の傷み具合で使い分けます。粒度が粗く削る力が強い順に荒砥石、中砥石、仕上げ砥石です」

「3種類をそろえて、この順番に短い時間で研ぎ上げるのが理想です。ただ一般の家庭で傷みがひどくないなら中砥石だけでもかまいません。だいたい1500円から3000円程度で買うことができます」

「砥石の表面は常に平らにしておくことが大事です。使っていると真ん中が減りがちですが、そのまま研ぐと思わぬ所が刃に当たってうまく仕上がりません。砥石は水に浸して吸わせてから使います。常に水がある状態で研ぐので、砥石の表面に水を保てるぐらいの量を目安にします」

――一般家庭で普及しているのは両刃の三徳包丁です。心がける点は。

「最も重要なのは、包丁を当てる角度を保ちながら、ぶれずに研ぎ上げることです。まず、包丁を砥石に対して斜め45度になるように置いて研ぐことで、角度がぶれにくくなります。研ぐ時間が長くなればなるほど腕が疲れて角度がぶれがちになり、切れ味がよくなりません」

「寝かせた角度で研ぐことで広い面を効率よく削ることができるため、研ぎ上がりが早くなります。我々職人は10円玉1枚分ほどの厚さを目安に、寝かせた角度で研ぎます。一般の人がその角度を維持するのは難しいので、2枚分を目安にするとよいでしょう」

――右利きの場合、どう研ぐのですか。

「刃を5つに分けて、刃元から切っ先に向かって研いでいきます。右利きなら左手の指を研ぎたい部分に添えて、常に砥石の真ん中にくるようにします。大きく上下させながら研ぎます。小さく動かすと砥石の中央部ばかりが減ってしまうからです」

「切っ先は薄くなっており、同じ力で研いでしまうとしなって形崩れの原因になるので、なるべく力を抜いて研ぎます。反対側も裏返して同様に研ぎます」

――研いでいると水が黒くなりますよね。

「黒くなった水は捨てずにそのまま研いでください。水を含ませてこすることで、砥石の粒が溶け出て表面に浮いてきます。その粒と摩擦して金属が削れるので、せっかく浮き出た粒を洗い流してしまうと効率が悪くなります」

――仕上げのコツは。

「目には見えにくいのですが、研いだ後の刃には削れた細かい金属が付着しています。これを刃の『カエリ』といい、このままでは切れ味がよくないです。本来は仕上げ砥石で細かいカエリをとるのですが、ない場合には、新聞紙にこすりつけてとることをおすすめします。新聞紙の紙質はざらざらしているので、代わりになるのです」

――海外の料理人や観光客の来店が増えたとか。

「和食ブームで日本から海外へ料理人が出て行く時代です。同僚となった外国人の料理人が日本の包丁の切れ味に驚き、はるばる来店することもあります。和食は最も繊細な料理で、柔らかい刺し身を薄くひくように、求められる切れ味に対応した包丁が育っているということです」

「柔らかい刺し身や完熟トマトはきれいに切るのが難しい。しっかり研いだ包丁でこういった食材をスパッと切ると、断面がきれいで舌触りが変わります」

かまた・せいいち 東京都出身、62歳。大学在学中の19歳で家業を継ぐため、かまた刃研社入社。1996年、3代目店主に就任。主に料理人を対象にした包丁研ぎ教室を毎月催す。東京合羽橋商店街振興組合の総務委員長としても活動している

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