お宅は大丈夫? マンション「共有部分」の地震保険

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契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、見落としがちなマンションの共有部分の地震保険について見ていこう。

 横浜市都筑区の分譲マンションが杭の施工不良のため傾斜している問題で、不動産会社は住民に対し補償案として全棟建て替えを提示した。これを受けて行われた2回目の住民アンケートでは、区分所有者の89%が全棟建て替えを希望しているという。

 区分所有法では、建て替えに「区分所有者の5分の4」、すなわち8割の賛成を必要とする。今回は全棟建て替えの方向で進むべく、住民の約9割の意見が一致したということになる。

 だが、この合意は“補償としての建て替え”という前提があったからこそ。時間経過により老朽化が進めば、どのようなマンションでもいずれ修繕や建て替えが必要となる。そのときに修繕積立金が充分でなく、住民自らの追加負担が発生することになった場合、果たしてこれほどスムーズに合意が形成できるだろうか。

 年齢、経済状況のみならず、ライフプランも異なる個々の住民が1つの合意に至るには、相当な困難が伴う。建て替えなどに関する合意形成はマンションという分割できない財産を共に維持するため、すべてのマンション住民が抱える避けられない課題だ。

「最悪の事態」への備えを

 さて今回の本題だが、マンションが地震などで大きな被害を受ければ、こうした問題はより深刻となる。「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」でも、地震などで滅失したり重大な被害を受けたりしたマンションの再建、または取り壊し敷地を売却するには、住民の5分の4の合意が必要と定めている。

 残念ながら、地震は修繕積立金が十分にプールされた時を選んでは起きず、被る損害の程度も予測できない。さらに言えば、東日本大震災の際、仙台市の被災マンションが必ずしも老朽化したものばかりでなかった現実もある。

 修繕積立金が不足すれば個々の住民が負担することになる。新築マンションが地震の被害に遭ったと仮定しよう。住む場所を失った上に、ローンがそのまま残っているという状況で、新たに修繕費を払うことは可能なのか。

 回避が困難で、甚大な被害を受ける可能性がある地震に対してこそ、保険による建て替え財源の確保は欠かせない。住民の専有部分のみならず、マンション管理組合が共用部分の地震保険の契約をしておくことは必須だ。

 現状では共有部分の地震保険付帯率は4割弱に過ぎない(上グラフ)。全契約の付帯率6割弱から見ても低い。負担を嫌い、中途付加に反対する住民もいると耳にする。被災後の再建の合意どころか、地震保険料の負担がハードルになっているのだ。

 2017年から段階的に引き上げられるものの、地震保険料は言われるほど高くはない。例えば1981年以降新築の500世帯が住む東京都内のマンション(共用部分の評価額60億円)では、保険金30億円確保のための保険料は、1世帯当たり月900円程度に過ぎない。

 リスクマネジメントの基本は、目先の損得ではなく「最悪の事態の回避」。分譲マンション特有のリスクに気付いた管理組合から準備を進めてほしい。

清水香(しみず・かおり)
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2016年4月号の記事を再構成]

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