経年劣化を知る 中古住宅、住宅診断のメリット不動産コンサルタント 長嶋修

「欠陥住宅など、買ってはいけない住宅ではないか」「買った後、いつごろ、どこにいくらぐらいのお金がかかるのか」「あとだいたい何年ぐらいもちそうか」――。中古住宅を購入する前に、建物のコンディションをホームインスペクター(住宅診断士)などの専門家に診断してもらうことは、このような購入の可否判断や資金計画を立てるために重要だ。さらに、購入時の家のコンディションを把握しておくことで、入居後の経年による劣化を比較して知ることができるといったメリットもある。

写真1 一般的にサッシの周りにはこのような亀裂が生じやすい

神奈川県に立つ築17年の木造中古住宅。一般的に築後15~20年目になると、外壁や屋根の再塗装をするなどの大規模修繕をはじめ、必要に応じたメンテナンスが必要な時期に差しかかってくる。

建物はメンテナンスによって寿命が大きく変わるが、この建物はみたところ、新築後に点検や劣化の度合いに応じたメンテナンス等が何も行われていないようだ。こうした建物はいかにもみすぼらしく見え、流通しにくい傾向にある。言いかえれば、安く購入できるのがメリットだ。もちろん、建物に大きな問題がないことを前提としてだ。

外装塗装には大きな亀裂が確認された(写真1)。原因には「建物全体のゆがみ」「地盤の傾き」「施工不良」「地震」などが考えられるが、建物全体を総合的に診断すると、地震によるものと推定できた。構造や地盤に課題がある場合にはリカバーが難しい場合もあるが、このようなケースでは内部に雨水が浸透するなどして、カビや腐食が進行していなければ大きな問題とはならない。

写真2 雨どいが詰まっていると雨漏りの原因になる

南側の屋根を見ると、周辺には木々が多く、雨どいに大量の落ち葉がたまっていた(写真2)。落ち葉を取り除いておかないと雨水が滞留し、雨漏りの原因になる。現時点ではそうした兆候は見られなかったが、落ち葉対策用のネットを雨どいの上に取り付けるなどして、詰まりを予防したいところだ。

室内をみると、和室の木製建具の上の壁にひび割れがあった(写真3)。これは構造上の不具合といった大きな問題が原因ではなく、建具を取り付けるためのかもいのたわみによるものと思われる。アルミサッシに近い木製枠には、水シミが見られるが、これは雨漏りではなく結露によるもの(写真4)。屋根裏には、必要な金物が取り付けられていない箇所があった(写真5)。

写真3 壁に亀裂があっても構造や地盤に問題がなければ補修可能
写真4 水シミの原因が雨漏りなら、建物内部に問題がある場合も
写真5 必要な金具がないと設計上の耐震性は確保できない

さて、これだけ不具合の見つかる建物は一般的には購入の判断が難しい。しかしどの事象も建物に決定的なダメージを与えるものではなく、十分に対処が可能だ。この依頼者は修繕、リフォームに必要なだけの値引き交渉をして本物件を契約した。そして入居後に大々的な修繕、リフォームを行った結果、見違えるような建物に生まれ変わった。現在は快適に暮らしている。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。
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