身近な誰かの抜てきにモヤモヤ… 分かれ道は発信力池田千恵の「しなやか発信力」の磨き方

日経ウーマンオンライン

2016/2/24
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ネットや雑誌などで目にする、同年代で活躍する女性たち。「こんな行動力があったら」「すごいなぁ」と憧れつつも、「私とは違う雲の上の人だし」「もともとの土台が違うよね」と、自分の延長線上にはない出来事としてあきらめてしまっていませんか。

一方で、会社での抜てき人事。同僚や後輩の女性が急にリーダーになり、あなたを職位の上で追い抜いてしまったとき、自分はリーダーになるつもりはないし、仮に打診されたとしても断ると決めていたにもかかわらず、「え? なんで? 私のほうができるのに」「なんかちょっとずるい」「うまくやったよね」と、心の中で少しだけ毒づいているようなことありませんか?

前者には憧れやあきらめの気持ちを抱くのに、後者には嫉妬の気持ちが出てしまうのはなぜでしょう。

それは、後者がより自分に身近なものと感じているからです。ちょっと頑張れば近づけたかもしれない自分の未来を感じるからこそ、それができなかった自分に自己嫌悪を感じたり、先を越された後輩や同僚に悔しい気持ちを抱いたりするのです。

憧れや嫉妬は自分を高める原動力になる

これは、嫉妬がいけないという話ではありません。なぜなら、嫉妬している相手は自分にも起こりうる未来を少しだけ先に見せてくれる存在だから。

嫉妬はあなたが高みをめざす原動力となるのです。

「あの人にできて、私にできないはずはない」。その気持ちを原動力に目の前の物事に立ち向かえるようになったとき、憧れの人は身近な存在になってくるでしょう。その立ち向かうための手段が、適切な「発信力」を身につけることだとしたら、それを手にしたいと思いませんか?

活躍している女性、抜擢され輝いて見える女性たちと今のあなたにどれほどの違いがあるのでしょうか。

それは…「自分の想いを見極め、醸成して発信する力を付けているかどうか」、たったそれだけなのです。

ここで定義する「しなやか発信力」とは、あなたが本当に実現したい未来のために、変な遠慮や見栄などを取り払い、ちゅうちょなく発信し、誤解なく周囲に届ける力のことです。女性らしい細やかさや配慮を生かしたうえで、それでもキッチリ伝えるべきことは言えるあなたになりましょう。

しなやか発信力を身につけることで「あの人にはできるけど、私にはできない」という思考を捨て去ることができ、本当にやりたいことを我慢することがなくなりますよ。

「控えめ」はもはや美徳ではない

私は女性活躍の推進の流れから女性のキャリア形成、ダイバーシティーなどをテーマに「伝わる」コミュニケーションについて登壇をしているため、30代女性の悩みを聞く機会が多いのですが、そこで常々もったいないなと感じていることがあります。それは、女性の良さである控えめさが行き過ぎてしまっている人が多い気がするのです。ガツガツしない、控えめというのは美徳ではありますが、それが行き過ぎると、あなたの実力や実績までも、他の人の前にかすんで見えてしまうのです。本当はとても実力があるのにもかかわらず、です。

しかし、そうなってしまうのも仕方がないことかもしれません。というのも、ネットやSNSが氾濫し、情報を絶えず摂取するのが当たり前になった昨今、「自分よりもはるかにすごい人」の言動はより良く見えるようになってしまうからです。人は人、自分は自分と頭の中でわかってはいても、目に入る派手なところだけにスポットライトが当たってしまうのは無理もありません。

そこで思い出してほしいのが、先に述べたとおり、嫉妬している相手は自分にも起こりうる未来をちょっとだけ先に見せてくれる存在だということ。自分よりはるかにすごいと思える人だって、一歩一歩階段を上って今の環境を手に入れた同じ人間であることがほとんどです。

「あの人と私は別」と、最初から限定された条件で思考するのに慣れてしまうと、「自分ができるのはこんなもんだ」「自分の稼ぎ力だとこのくらいが適当だから」「本当はこうしたいけど、いきなり人格が変わったみたいで周囲からどう思われるか考えると恥ずかしい」というように、いつも周囲の目を気にして、思考の制限をつけた目線で物事を考える癖がついてしまいます。

周囲の活躍にモヤモヤしたら自分の本心を見つめよう

「私は自分に多くを期待していない」という方は無理矢理自分を変える必要はありません。人にはそれぞれの考え方があります。ただ、嫉妬なんてしていないと心の中では思いつつも、「あの人うまくやっちゃって」とモヤモヤしたまま今の状態に甘んじている自分と、「実力不足かもしれないけれど飛び込んでみよう!」と失敗を恐れずに挑戦する自分、どっちがかっこいいと思いますか?

「もっと評価されたい、私はまだまだこんなもんじゃない」という気持ちが少しでもある人には、ぜひ「発信力」を身につけていただきたいのです。

仕事でもプライベートでも、あなたがどん思いを持ち、何をしていきたいかをしっかりと周囲に伝えることができるようになれば、

・あの人に頼んでおけば安心だ

・あの人なら間違いない

・あの人の活動を応援したい

という信頼関係をベースにご縁をつないでいくことができるようになっていきます。

コミュニケーションにかかわるすべてはプレゼンから

「発信力」というとプレゼンテーション、発表をイメージする人は多いでしょう。プレゼンという言葉に拒否反応を起こして「私には関係ない」と思われる方もいますが、コミュニケーションにかかわるものはプレゼンです。お昼に何を食べたいか、気になる相手をどうやってデートに誘うか、同僚や上司と良い関係を築くために考えること、すべてプレゼンなのです。

今は実力が伴っていなくても、抜擢されるという背伸び体験を一度してみると世界が変わります。背伸びが人を成長させるのです。最初は格好悪いこともたくさんあるかもしれません。

今までにないチャレンジを続けると、自分のダメなところもたくさん見えてきますが、ダメなところが見えたらしめたものと思ってください。心の中であれこれと考えているだけでは見えなかった自分の「のびしろ」が、どんどん伸びていくことを実感するはずですよ。

池田千恵(いけだ ちえ)
 株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や官公庁、個人に向け、図を活用したプレゼンテーション資料作成術、企画書作成術や会議進行術など、「伝わる」コミュニケーション全般について指南。女性のキャリア形成、ダイバーシティーなどをテーマに講演、著述活動も行う。『絶対! 伝わる図解』(朝日新聞出版)、『描いて共有! チーム・プレゼン会議術』(日経BP社)などプレゼン・図解に関する著書多数。

[nikkei WOMAN Online 2016年2月5日付記事を再構成]