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「サ高住」って何? 高齢者向け住居の選び方

2016/2/28

 週末の夕方。初野家では利子と新衣紗が夕食の準備をしています。藤志郎の田舎でとれた野菜を使った鍋料理のようです。一方、藤志郎は居間で何やら考え込んでいます。そこに夕食に誘われた鯛吉がやってきました。
大学で金融を勉強中の初野新衣紗(はじめの・にいさ=上)と父の藤志郎(とうしろう=中左)、母の利子(りこ=中右)、隣に住むファイナンシャルプランナー・税理士の有賀鯛吉(ありが・たいきち=下)

 とうしろう 遅いぞ、鯛吉くん。そろそろ食事と相談はセットだと察してくれよ。

 たいきち ……。で、今回は何を聞きたいんです?

 とうしろう 先週の祝日に日帰りで実家の様子を見てきたんだ。そのときオヤジが「そろそろ終(つい)のすみかについて考えたい」とか「トクヨウやサコウジュウも検討したい」と話してたけど、さっぱり分からなくて。

 りこ 「終のすみか」って、老後の住まいのことよ。トクヨウやサコウジュウは確か高齢者向け住居の種類じゃないかしら。お父さん、今は元気だけど将来が心配なのね。相談に乗ってあげなきゃ。

 たいきち 健康や体力に不安を感じる高齢者にとって、住まいをどうするかは切実な問題です。自宅をバリアフリーに改修するのも手ですが、身の回りの世話や介護サービスを受けられる高齢者向け住居に入るのも選択肢です。トクヨウは特別養護老人ホーム、サコウジュウはサービス付き高齢者向け住宅の略称ですね。ほかに有料老人ホームなどがあります。

 にいさ 高齢者向け住居に入る人は増えているの?

 たいきち そうだよ。特に最近増えているのが「サ高住」なんだ。高齢者の住まいを安定して確保するため、国が後押ししている。2011年秋から登録が始まり、件数は14年度末で約5500件と11年度末の6倍あまりになった。特養や有料老人ホームの数も右肩上がりだよ。

 とうしろう 施設はどう選べばいいのかな?

 たいきち 大まかにいって、費用を比較的抑えたいなら特養かサ高住が選択肢になります。特養は要介護3以上の人が対象で、食事や入浴、日常生活の世話などを受けられます。自治体や社会福祉法人が運営するため入居一時金が不要で、月費用も安めです。所得や資産の額などの条件を満たせば負担を軽減する仕組みもあります。入居者は現在、60万人を超えます。

 にいさ あら、特養がいいじゃない。

 たいきち でも特養に入りたい人は多く、現在は入居者と同程度の人数が待機しているとされる。都市部では2~3年待ちも珍しくないんだ。

 りこ 現実的にはサ高住が有力候補ということね。

 たいきち サ高住は60歳以上か要支援・介護認定を受けている人が対象です。賃貸契約が一般的で、高額な入居一時金を払う必要がありません。安否確認サービスが法的に義務付けられているほか、賃貸とはいえ食事サービスがある施設も珍しくはありません。介護サービスも受けられますが、入居者が自分で外部事業者と契約するので別途費用が発生します。介護保険の要介護度ごとに決まっている利用限度を超えた分は全額自己負担になります。

 にいさ 有料老人ホームはどんな特徴があるの?

 たいきち あくまで目安だけど、入居一時金は数十万~数億円、月費用は12万~35万円かかる。予算に余裕がある人向けと考えた方がいいね。主に民間企業が運営し、「介護付き」と「住宅型」の2タイプがある。どちらも介護や食事などのサービスを利用できるけど、介護付きはホームの職員が包括的に介護を担い、サービスと費用は入居者の要介護度に応じて基本的に一律なんだ。住宅型はサ高住と同じで、自分で外部の事業者と契約するから、利用状況に応じて費用が増減するよ。

 とうしろう 予算に応じて、サービス内容の優先順位を考えるのが大事だな。

 たいきち 高齢者向け施設は無料で見学できるのが一般的です。職員の働きぶりを含めて施設の雰囲気も確認するといいですね。ファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子さんは「医療面での対応も重要なポイント」と指摘しています。高齢になると病気にかかるリスクは高く、持病を抱える人も多いのです。医療機関との提携の有無や具体的な中身をチェックするといいでしょう。立地も大切で、長年暮らした地域だと環境の変化が少なくなります。面会に来てもらいやすいなどの理由から、子や孫の住む街の近くを選ぶ人もいます。

 にいさ どこにどんな施設があるかは、どうやって調べればいいの?

 たいきち 最近ではインターネットを利用するのが便利だね。公的な主なサイトでは「介護サービス情報公表システム」と「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」が充実しているけど、前者は特養と一部の介護付き有料老人ホームなど、後者はサ高住に限られる。民間のサイトは幅広く掲載しているものの、広告料を払っていない物件の詳細を得にくい場合もある。行政と民間のサイトを併用するといいよ。

 りこ ネット以外で探すにはどうすればいいかしら。

 たいきち 介護保険制度を利用して自宅で介護を受けている人は、ケアマネジャーに紹介してもらう手があります。自治体の窓口に行けば、地域にある高齢者向け住居の一覧表をもらえる可能性もあります。いずれの場合も早めに動いて、慎重に検討するのが無難でしょう。

40代後半から情報収集を
 長谷工総合研究所上席主任研究員 吉村直子さん
 高齢者向け住居の情報はできるだけ早くから集めましょう。急な入院後、退院までの数週間で慌てて探すようなことになると情報不足でトラブルのもとになりかねません。親の入居に備えて、40代後半から取り組んでも早すぎることはありません。
 有料老人ホームやサ高住は受けられるサービスの内容や質、月額費用など施設ごとに大きな差があるので、入居前によく確認しておきましょう。負担できる金額には限りがあるため、どんなサービスにどの程度の費用がかかっているのかを確認しておかないと、入居者の満足度が変わってきます。候補の施設は複数回、見学するのも手です。その際は曜日や時刻を変えたり、入居者以外の付き添い人を変えたりするのも一案です。最初の見学時に見落としていた点に気がつくこともあるからです。(聞き手は藤井良憲)

[日本経済新聞朝刊2016年2月20日付]

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