プロ仕様で味をランクアップ こだわりの料理道具
合羽橋のプロが選ぶグッズ3選
プロの味に近づけようと、レシピどおりに作ってもなかなか味が決まらずにイライラすることがある。リサーチしていくと、どうも道具ひとつで大きく変わるということがわかってきた。家庭用とは違うほんのちょっとの差が味を引き立てるのだ。今回は、テーブルまわりの道具から業務用を家庭向けにアレンジしたものまで、プロが認めたグッズ3選を紹介する。
・ユニオンのタカヒロ ドリップコーヒー用ポット
・飯田屋のコール&メイソンペッパーミル・ソルトミルセット
・釜浅商店の炭火焼ゆうじとのコラボロースター
ユニオンのコーヒードリップ用ポット
全自動のコーヒーメーカーやカプセル式が話題だが、コーヒー通の間では、一杯をドリッパーでていねいに淹れるオーソドックスな方法が見直されている。昭和33年創業の喫茶器具総合商社、ユニオンの「タカヒロ ポット」は、そんな正統派のコーヒー好きやコーヒーバリスタ、カフェのオーナーに長年愛用されている商品だ。
営業部の田谷勝彦さんいわく「1杯からおいしいコーヒーが淹れられるのがドリップ式の長所。コーヒーの粉にまんべんなくお湯を通すためには、ドリップ用のポットを使うのが一番です。注ぎ口が細いものを選ぶと均一にムラなく抽出しやすいのですが、細ければ細いほど手間がかかるので値段が高くなる傾向にあります。タカヒロというメーカーは喫茶業界ではかなり有名で、最近では吉永小百合さん主演の映画『ふしぎな岬の物語』にもこのポットが登場しました。コーヒー通にはおなじみのブランドです。本体と注ぎ口の溶接も非常によくできています」
細かいところに職人の技が活かされている定番商品なのだが、人気で供給が追いつかない状態だという。ところでこのポットの色はステンレスに黒い焼き付け塗装をしたもの。ステンレスに色をつけるのは非常に難しく、値段が一気に高くなってしまうそうだ。正直、これで味が変わるわけではないが、見た目が美しく、ひと味違うポットを探しているこだわり派が好んで買っていくという。
飯田屋のペッパーミルとソルトミル
最近ではスーパーマーケットの棚に並んでいる塩・胡椒でも安価でミル付きのものがあり、使うたびに挽くという行為は特別なことではなくなった。だったらよけいに知りたい。タダで付いてくるミルと、ひとつ何千円もするミルの違いを。
キッチングッズなら何でもそろうと評判の店、飯田屋の6代目飯田結太さんが太鼓判を押すのは英国製のコール&メイソンの「ペッパーミル・ソルトミルセット」だ。
「ミルというのは臼の原理で"すり潰す"のが基本です。ところがこのコール&メイソンのものは塩の結晶や胡椒粒を"カットする"のです。有名なミルのブランドはいくつかありますが、カット式はここだけ。カットするとどう良いのかというと、まず香りの立ちかたが違います。そして挽いた後の塩・胡椒が美しい。挽いた時の手ごたえの軽さも圧倒的。これは刃の鋭さゆえ。本体のデザインもシンプルで飽きがこないし、テーブルの上の世界観を壊しません。そして、これにはもうひとつ唯一無二の特徴があります。それは永久保証をうたっていること。ミル界ではここだけ」(飯田さん)
コール&メイソンは1919年創業の老舗であるが、日本での知名度はまだまだ。単体で9180円(税込み)だが、ソルト&ペッパーのセットだと1万6200円(税込み)とお得。1万円代で世界最高の一生モノを買うというのはおおいにアリだ。
釜浅商店の炭火焼ロースター
上等な肉さえ用意すれば、複雑な調理は不要、焼くだけで最高のものが食べられるのが自宅焼肉のいいところ。しかし、いくら焼くだけといっても、焼肉店の業務用ロースターで焼いたものと比べると味わいが劣るのが常だ。
料理道具の老舗・釜浅商店が東京、渋谷にある有名焼肉店「炭火焼肉ゆうじ」の依頼で作ったロースター「炭火焼ロースターYK-T」は、そんなもどかしさを解消した商品だ。釜浅商店の広報・湯浅碧さんに特徴を聞いた。
「炭火焼肉ゆうじの樋口裕師氏より、弊社社長の熊澤大介に『理想のロースターを作りたい』という話があり、約1年間の試行錯誤を経て商品化されました。ポイントは鋳物とステンレス、2種の網がセットになっているところ。赤身の肉には鋳物、ホルモンにはステンレス網を使用します。本体は空気層を二重にし、燃焼効率を高めつつも側面が高熱にならないよう工夫しました。アウトドア好きの男性にもウケていて、2011年の発売以来、好評のヒット商品です」(湯浅さん)。業務用をほうふつとさせる無骨な外観だが、それがかえって本格派志向の男性にウケている理由だろう。
(ライター 三井三奈子)
[日経トレンディネット 2015年12月8日付の記事を再構成]
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