緑内障の実力病院、視野維持へ手術多彩 日経調査

検査機器を使って角膜や水晶体などの状態を調べる(広島市の広島大病院)
検査機器を使って角膜や水晶体などの状態を調べる(広島市の広島大病院)

日本経済新聞はこのほど、全国の主な病院の公開データをもとに、疾患ごとの症例数や医療の質向上への取り組みなどを調べる「実力病院調査」を実施した。個別疾患の1回目は、日本人の失明原因の1位という緑内障。視野が狭くなる症状を抑えようと、チューブを使った最新の方法も含め手術に注力する病院が多く、術後の感染症を避ける工夫も行われている。

緑内障は眼圧の上昇などによって視覚情報を脳に伝える視神経に障害が起き、視野が狭くなる。年齢とともに増加し、急速に悪化するタイプを除けば自覚症状が乏しく、進行した状態で見つかることも多い。

眼圧は角膜と水晶体の間を満たす房水という液体の量で決まる。房水は一般的に、水晶体の外側付近でフィルターの役割を果たす線維柱帯からシュレム管を通って目の外に出る。これによって眼圧が調整されるが、これらの組織が詰まるなどすると、目の中に房水がたまって眼圧が高くなる。

今のところ一度欠けた視野を元に戻す方法はなく、治療では眼圧を下げて症状の進行を抑えるのが最も有効とされる。まず点眼薬を試し、十分な効果が見られない場合は手術やレーザー治療を検討する。手術は大きく分けて、眼球に穴を開け新たな排出路を設ける「線維柱帯切除術」と、詰まった部分に切れ目を入れて流れやすくする「線維柱帯切開術」の2種類がある。

広島大病院、「手術あり」400例超

今回の調査で「手術あり」が全国で唯一400例を超えた広島大病院(広島市)。地域の基幹病院として症状が進んだ患者を多く受け入れ、切除術が約7割を占める。切開術に比べ感染症などのリスクは高い一方、眼圧を下げる力も大きい。視覚病態学教室の木内良明教授は「タイミングを逃すと症状の悪化につながりかねない。必要なら躊躇(ちゅうちょ)なく手術を患者に提案する」と話す。

最新の治療法で2012年に保険適用となった「チューブシャント手術」(インプラント挿入術)にも取り組む。チューブ状の装置を目に埋め込み、房水の排出路を確保する手法だ。

糖尿病によって異常な血管ができて起こる血管新生緑内障など、従来の手術が困難か、効果を期待できない患者が対象。通常の手術を2回しても効果がないときに選択肢に入れる。「7~8割は眼圧コントロールが可能になる」(木内教授)

北陸3県から重症の患者が集まる金沢大病院(金沢市)も切除術が主体で、15年は139件手掛けた。02年に着任した杉山和久教授が始めた術式を採用。切除後に表面の結膜を縫い合わせる際、裏打ちするように下の組織も縫い込んで分厚くし、血管が生えるようにして栄養などを行き渡らせる。杉山教授は「術後の感染症の発症率は通常の約半分に収まっている」と話す。

入院期間も一般的な期間の2倍となる2週間程度とし、できるだけ院内で管理し、退院直後の通院も頻度を増やしてもらっている。涙が出たり、目が充血したりするなど感染症の兆候があればすぐ受診するよう呼びかける用紙を渡すなど、術後ケアも手厚い。

「手術なし」治療、最多は北海道大病院

東京医科大病院(東京・新宿)は年間約200件の緑内障手術を手掛ける

一方、「手術なし」の症例は北海道大病院(札幌市)が176件で最多。札幌医科大病院(同)、金沢大病院、新潟大医歯学総合病院(新潟市)も100件を超えた。基本となる点眼薬は10種類以上あり、眼圧の測定値のほか、緑内障のタイプや進行具合によって使い分ける。まず1種類から始め、効果が不十分であれば異なる薬効の点眼薬を追加する。2つの薬効成分が混ざった配合剤もある。

緑内障のタイプによっては、房水の排出路を塞ぐ虹彩に穴を開けるなどするレーザー治療が行われ、効果が得られる場合もある。ただ東京医科大病院(東京・新宿)の後藤浩主任教授は「効果には限界があり、手術による治療に移行せざるを得ないことが多い」と指摘。一般的に点眼薬で進行を抑えることができない場合は手術で眼圧を下げられることが多く、同病院でもこの原則に従って治療計画を立てている。

(次回は2月28日に膀胱がんのデータを公開する予定です)

【調査の概要】調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
▼診療実績 厚生労働省が2015年11月に公開した14年4月~15年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1584病院のほか、導入準備中やそれ以外も含め全国の計2942病院を対象にした。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
▼運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の前に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
▼施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目などを比べた。15年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。
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