格安SIMを上手に使うキモは「低速モード」
格安SIMを上手に運用するコツは、通信量をコントロールすることにある。特に1カ月で使える高速通信容量が1G~3GBと少なめの場合は、通信容量のこまめなチェックが必要だ。うっかり容量制限を超えてしまうと速度が制限され、クーポンを追加購入することになる。これでは、格安SIMを使っていても通信費は「格安」にはならない。
通信費を抑えるポイントは高速通信容量の節約にほかならない。高速通信を節約する方法として定番なのは、Wi-Fi(無線LAN)の利用だ。大きなファイルをダウンロードしたり、ストリーミング配信を見るとき、写真の自動アップロードや、アプリの更新には必ずWi-Fiを使うようにする。これだけでも通信量がかなり抑えられる。
「低速」に切り替えられる格安SIMがおすすめ
しかし、Wi-Fiだけで通信容量を抑えようとしても限界がある。そこで、よりダイレクトに効く方法をご紹介しよう。「格安SIMの通信速度を『低速』に切り替え、高速通信の容量を節約する」というものだ。低速に切り替えられる格安SIMは、低速通信時の通信量はカウントされない仕組みになっているのだ。
なお、この方法で通信容量を節約したいと思っても、すぐに導入できるものではないことを最初に断っておきたい。これまで使っている格安SIMに速度切り替え機能が備わっていなければ、切り替え機能付きの格安SIMと新たに契約し直す必要があるからだ。手間がかかるし、場合によっては初期費用が必要になることもある。だが、それでもメリットは大きい。
また、これから格安SIMを導入しようという人であれば、低速/高速の切り替え機能付きSIMを検討すべきだろう。
「繰り越し」「バースト」対応を選べ
低速/高速への切り替え機能がある主な格安SIMを以下の表にまとめた。
こうした切り替え機能のある格安SIMを選ぶポイントは、下記の3つだ。
・低速時の読み込みに有利な「バースト転送機能」があるか
・専用アプリなどでラクに切り替えられるか
まず、上記の格安SIMには、翌月(1日単位のプランの場合は翌日)繰り越し機能もある可能性が高い。繰り越し機能があれば、1カ月の通信容量が少なかった場合、余った容量は翌月に繰り越しされる。つまり、翌月には規定より多い容量を使えることになり、かなりお得だ。
選び方のもう1つのポイントは、低速時の「バースト転送」機能。これは低速時の初回通信75Kバイトまでは高速通信を使うという機能だ。
低速モードの速度は200kbps程度。高速通信の数十~数百分の一という、かなり遅い速度だ。低速モードで使う場合は、テキストだけならなんとか我慢できる程度と考えておくべき。画像が含まれるウェブページのブラウズやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のチェックでは、なかなかデータが読み込まれずイライラする。しかしバースト転送を備えた格安SIMであれば、低速時でもある程度、快適に使えるのだ。
低速モード/高速モード切り替えの際の操作性も重要だ。切り替え操作や使用状況の確認のために、ウェブブラウザーからパソコン専用のページを開かなければならないサービスもあるが、こまめに切り替えたいときには不便に感じる。専用アプリなどで簡単に操作できるものを選びたい。
節約スタイルは2つある
速度を切り替えて、容量を節約する使い方にはコツがある。
まず、低速モードを、スマートフォン(スマホ)で作業するとき/作業しないときの2つで大ざっぱに切り替える方法だ。普段は低速にしておき、スマホで何か作業をするとき、もしくはスマホを持って出かけるときに高速に切り替えるだけだ。スマホは操作していないときも定期的に通信をしているが、その「使わない時間」の通信容量を節約できる。手間はかからないが、スマホを操作するときはすべて高速通信を使うので、節約効果はいまひとつだ。
より節約したければ用途によってこまめに低速/高速の切り替えをしていくべきだろう。手間はかかるが、節約効果は期待できる。
例えば、メールやメッセージ、Twitterなどテキストベースのサービスを利用する際は、低速モードのまま利用する。一方ウェブブラウズや、画像検索、SNS、IP電話など低速では厳しいと感じた場合は、高速モードに切り替えればいい。
低速でも使えるアプリやサービスをあらかじめ選んでおくのも手だ。地図アプリなら、地図をあらかじめダウンロードしてオフラインでも利用できるものにする。音楽アプリであれば、64k~128kbpsなど、低速でも聴けるビットレートを選択できるものを選ぶ。そういった工夫で、かなり楽になるはずだ。
なお、格安SIMのなかには低速についても通信量の制限が設けられている場合がある。主なサービスは、IIJmioとDMM mobile。これらは「3日あたり366MB」という制限が設けられていて、低速通信時に制限容量を超えた場合、通信速度が制限される可能性がある。
使いやすいのはどれか、3ポイントでチェック
低速モードへ切り替えられる格安SIMのうち、どれが便利なのか。各サービスについてチェックしていこう。
まずは、切り替え付きサービスの草分けである「IIJmio」だ。
速度の切り替えは、「IIJmioクーポンスイッチ みおぽん」というスマホアプリ(Android/iOS)で行う。アプリを起動し、オン/オフのスイッチを切り替えて「適用」をタップするだけでいい。切り替えの他、翌月への容量繰り越しも可能。繰り越し分も含んだ月の残量表示と、過去5日分の使用量も確認できる。低速時のバースト転送も可能だ。
「OCN モバイル ONE」は月単位のプランのほか、1日単位のプランを備えている。どちらも繰り越し(1日単位では翌日、月単位では翌月)できる。
低速モードへは、スマホアプリ「OCN モバイル ONE」(Android/iOS)から「ターボ」の「ON/OFF切替」ボタンをタップして切り替える。アプリからは「直近3日間」「直近3カ月間」「直近13カ月間」の利用状況を参照できる。またコースの変更、通信容量の追加、請求情報の照会なども可能だ。
3番目に紹介するのは「DMM mobile」だ。このサービスは、IIJmioと同様の低速時のバースト転送機能を持つ。翌月繰り越しがあるのも同様だ。
切り替えは、「DMM mobile」というスマホアプリ(Android/iOS)から行う。iOS版はApp Storeからダウンロードできるが、Android用アプリはGoogle Playストアからではなく、ウェブサイトのアプリページからパッケージファイル(.apk)をダウンロードして手動インストールしなければならない。インストールに手間は掛かるが、アプリ自体は使いやすいものとなっている。
次に、auとドコモの通信網に対応した「auプラン」「ドコモプラン」が用意されている「mineo(マイネオ)」をご紹介しよう。
切り替えは、「mineoスイッチ」というスマホアプリ(Android/iOS)から行う。「当月の残容量」に使用可能な容量が表示されているほか、前月からの繰り越し機能、高速通信をギフトできる機能などもある。「mineoスイッチ 節約ON/OFF」ボタンで速度を切り替える。IIJmioやDMM mobile同様、mineoも低速バースト機能を備えている。
最後に紹介するのが「freetel SIM」。提供している「使った分だけ安心プラン」は、100MB/1GB/3GB/5GB/8GB/10GBまでというように、使った高速通信容量に応じて料金が変わる。低速モード/高速モードを切り替えて高速通信容量を節約することが、料金を抑えることに直結するサービスだ。
しかし、残念ながら切り替え用のアプリが用意されていない。速度はウェブブラウザーでマイページにログインし、メニューから「節約モード設定」を選び、電話番号を選択→「節約モードの変更」→「節約モード ON」または「節約モード OFF」をクリックして、切り替える。切り替え作業はかなりの手間が掛かる。
3ポイントそろったIIJmio、DMM mobile、mineo
最後に、筆者のおすすめのサービスを紹介する。
先述した3つのポイント、「速度への切り替えが専用アプリでできる」「容量の繰り越し機能もある」「低速バースト機能を備えている」をすべて備えているのはIIJmioとDMM mobile、mineoだ。これらが便利だろう。
OCN モバイル ONEとfreetelには、「低速バースト機能」がない。ちょっとした調べ物やテキストベースのウェブページを見るだけでも、「遅い」と実感することが多いはずだ。
ただし、一日単位のプランを選択したい場合はOCNモバイル ONE、毎月の使用量に幅がある場合はfreetelを選ぶとメリットが大きい。自分に合ったプランを見つけて、快適な格安SIMライフを送ってもらいたい。
(ライター 青木恵美)
[日経トレンディネット 2015年12月15日付の記事を再構成]
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