再び注目集まる加湿器、4つのポイントで選ぼう

日経トレンディネット

ダイソンが2015年11月に発売した最新モデル「Dyson Hygienic Mist MF01」(実勢価格5万1960円)
ダイソンが2015年11月に発売した最新モデル「Dyson Hygienic Mist MF01」(実勢価格5万1960円)
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加湿器が今またホットになっている。ダイソンやバルミューダといった高級家電メーカーが進出、デザイン性に優れた加湿器も増えてきた。加湿器の選び方のポイントをIT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が解説する。

乾燥しやすい冬には、加湿器が大いに活躍する。最近は空気清浄機に加湿機能を搭載する「加湿空気清浄機」が増えているが、部屋を加湿するためには単機能の加湿器を使うことをお薦めしたい。

加湿器はミストや水蒸気を放出して部屋に湿度を与える機器なので、エアコンの風が通り、空気を循環させやすい場所に置く方が効率的。それに対して空気清浄機は部屋の空気を吸い込んでフィルターでこし取る機器で、人がよく通り、ホコリが舞いやすい場所の近くに置いた方がいい。目的が違うので、最適な設置場所は異なるのだ。

さらに、加湿器が活躍するのは冬場が中心になるが、空気清浄機は年中利用するもの。機器の性質も異なっており、単機能のほうが使いやすい。また、加湿空気清浄機はタンク容量が比較的少ないということもお薦めしない理由の一つだ。

では、加湿器を選ぶ上で重要なポイントは何か、解説していこう。

給水が楽な製品やデザイン性の高い製品が登場

加湿空気清浄機にお株を奪われたように思われた加湿器だが、再び注目度が高まっている。ここ2~3年でさまざまなメーカーから注目製品が登場したためだ。

加湿器を日々利用する上で面倒なのが「給水」の手間。本体からタンクを取り出して、タンクのふたを開けて水道から給水し、ふたを閉めてひっくり返して本体に収める。タンクをひっくり返すときや運ぶときに水がこぼれることもあり、うっとうしいと思っている人も多いことだろう。

バルミューダは2014年10月にRainの後継機種「Rain ERN-1000SD」(実勢価格4万2950円)を発売
カドーは2015年10月にHM-C600Sの後継機種「HM-C610S」(実勢価格4万4220円)を発売

この点に着目したのが、2013年11月に発売されたバルミューダの「Rain」と、2014年11月に発売されたカドーの「HM-C600S」だ。壺のようなユニークな形をしたRainは、上部からヤカンなどを使って水を注ぎ込む給水スタイルを採用している。カドーのHM-C600S、後継機種のHM-C610Sも同様で、細長い透明なタンクの上部にあるふたをスライドさせ、上から給水するスタイルだ。

2014年11月には、ダイソンから同社初の加湿機能付き扇風機「Dyson Hygienic Mist」が発売された。こちらは羽根のない扇風機「Air Multiplier」の技術をベースに、本体下部のタンクで生成されたミストを大風量で部屋中に広げるというもの。「ミストや蒸気を上に放出する」という従来のスタイルとは違う、新たな加湿スタイルを生み出した。

シャープが2015年10月に発売した「S-style HV-EX30」(実勢価格2万1140円)

シャープからは、デザイン性を追求した「S-style」ブランドの加湿器「S-style HV-EX30」が登場した。以前は本格的な加湿器や加湿空気清浄機というと、デザイン性は二の次の製品が多かったが、家電業界全体でデザイン性を追求した製品の人気が上昇している中で、大きく変わろうとしている。

オムロン ヘルスケアが2015年10月に発売した「パーソナル保湿機 HSH-101」(実勢価格2万6150円)

もう一つ注目したいのが「保湿機」という新たなキーワードだ。オムロン ヘルスケアが発売した「パーソナル保湿機」で登場したもので、スチーム式加湿器によるスチームをファンの風で飛ばすことで、就寝中の人の口元あたりを中心に「保湿する」というもの。加湿器は基本的に部屋全体を加湿するものだが、こちらは人の口元あたりを重点的に狙って加湿し、部屋全体の加湿を目的としていないところが新しい。ちょっと変わり種だが、今後こういったコンセプトの製品が増える可能性は高い。

そのほか、コンパクトでかわいらしいデザインの超音波式加湿器も相変わらず家電量販店や雑貨店などで人気だ。

加湿器の種類とメリット・デメリット

まず加湿器を選ぶ前に、方式の種類を知っておこう。

●スチーム式加湿器

象印マホービン「EE-RK50」(実勢価格1万1540円)

タンクから送られた水を蒸発皿で沸騰させて蒸発させる方式。水を沸騰させ、湯気(スチーム)として室内に放出するシンプルな構造。水が煮沸消毒されるため、スチームの安全性が高い。水道水に含まれるカルキ(石灰成分)が蒸発皿に残るため、テレビなどの静電気を持つ機器に白い粉が付くこともない。さらに熱で蒸発させるため加湿能力が高いのも大きな特徴だ。

スチームの安全性は高いが、本体内には熱湯が入っているので、子どもやペットが倒してしまった場合などにやけどをする危険性がある。また、ヒーターの熱で煮沸するため、室温が上がりやすいことや消費電力が大きいことなどがデメリットだ。

スチーム式は作りがシンプルなことから、小型モデルも少なくない。そのため加湿量の目安は120~1200ml/hと幅広い。

●気化式加湿器

パナソニック「FE-KXL07」(実勢価格2万2800円)

水でぬらしたフィルターに風を当て、水分を気化させて水蒸気を生成する方式。スチーム式と違って熱を利用しないため、消費電力が低いのが大きな特徴だ。フィルターに付いた水を気化させるため、水が雑菌などで汚染されている場合でも、雑菌などがそのまま空気中に放出されることはない。一方で仕組みがスチーム式や超音波式に比べて若干複雑なため、比較的小型化しにくいというデメリットがある。

気化式の場合、スチーム式のように熱でむりやり気化させるわけではないので、加湿量はスチーム式に比べると低い傾向にある。また、湿度が高くなるほど加湿能力が落ちるのもデメリットだが、最近ではスチーム式を上回る加湿量を実現したモデルも増えてきた。

加湿量の目安は200~1500ml/h。600ml/hを超えるモデルも多い。

●超音波式

アピックス「AHD-015」(実勢価格4190円)

タンクから送られた水を超音波で破砕してミストにする方式。水タンクと蒸発皿、振動素子さえあれば作れるので、小型化できるのが大きなメリットだ。そのため家電量販店だけでなく雑貨店の店頭などにも数多く並んでいる。ペットボトルを逆さにして差し込んで使うタイプをはじめ、コンパクトで手軽に使える加湿器のほとんどがこの方式だ。

スチーム式や気化式は、どちらも水を蒸発させるため、雑菌が含まれた水でも大きな問題なく使用できる。しかし超音波式の場合は水を超音波で細かいミストに分解するだけなので、雑菌が含まれたままミスト化してしまう恐れがある。殺菌や除菌など何らかの対策を施していない場合、健康に大きな被害を及ぼす危険性があることを知っておきたい。同様に水中に含むカルキ成分もミスト化してしまうため、静電気を帯びやすいテレビなどに白い粉が付着する場合がある。

超音波式は加湿量が最大でも350ml/h程度。スチーム式や気化式に比べて少ないので、その点にも注意したい。

●ハイブリッド式

ダイニチ工業のハイブリッド式(気化式+ヒーター)加湿器「HD5015」(実勢価格1万4600円)

ハイブリッド式はその名の通り、2つの方式を組み合わせたものだ。気化式にヒーターを搭載したものと、超音波式にヒーターを搭載したものの2種類がある。最近は気化式+ヒーターが主流のようだ。

気化式はフィルターに風を当てて“自然乾燥”のような形で水を気化させるため、加湿量を増やしにくい。そこでヒーターを通した温風を当てることで加湿量を増やすというのがハイブリッド化の目的だ。通常の気化式に比べて消費電力は上がるものの、スチーム式のように水を沸騰させるわけではないので、消費電力は抑えめだ。

超音波式+ヒーターも加湿量を増やせるほか、ヒーターで加熱することで安全性が増す効果が期待できる。

加湿量の目安は、気化+ヒーター方式が300~1800ml/hで、超音波+ヒーター方式が300~450ml/h程度だ。

気化式かハイブリッド式がお薦め

加湿器の選び方はさまざまだが、まずは方式から絞り込んでいくといいだろう。先ほど紹介した方式の違いを表にまとめた。

トータルバランスに優れているのは気化式にヒーターを加えたハイブリッド式だ。△がひとつもなく、大きな欠点がない方式だ。

あまりお薦めできないのがスチーム式だ。常に水を沸騰させるため消費電力が大きく、室温も必要以上に上がってしまうケースが少なくない。発生するのも気体になった「水蒸気」というよりも、水の粒を含んだ「湯気」で、壁や天井に付着して壁紙などを変質させてしまう(ふやけさせてしまうなど)恐れもある。倒したら熱湯がこぼれる危険もあるため、表に書かれていない面で危険性がある。

超音波式は最も手軽に入手しやすい方式だが、衛生面で問題があるためあまりお勧めできない。蒸発皿に水をためたまま放置して腐らせるような状況でもなければ、そこまで不安視しなくても大丈夫だろうが、「雑菌を含んでいてもそのまま放出してしまう」ということだけは覚えておいた方がいい。除菌機能などを備えた超音波式もある。

気化式は最もバランスの取れた方式の一つと言っていいだろう。加湿フィルターの大きさと風量さえあれば加湿能力を高められる。加湿する水が汚染されていたとしても、超音波式と違ってそのまま放出されることはない。水を除菌する機能を搭載した機種ならさらに安心だ。

超音波式加湿器は危険なのか?

先ほど超音波式加湿器は「殺菌や除菌など何らかの対策を施していない場合、健康に大きな被害を及ぼす危険性がある」と紹介した。実際に超音波式加湿器を使用していた人が、加湿器内に繁殖していたレジオネラ菌の感染によって死亡するという事故が生じたこともあり、こうした危険性があることは否めない。

殺菌や除菌機能を備えていれば問題ないのだが、コンパクトで低価格な超音波式加湿器のほとんどはそういった対策がとられていないのも確かだ。

だからといって、「超音波式=危険」に直結するわけではない。タンクを清潔に保ち、使用しないときは水を蒸発皿に張ったままになっていないように水を捨てるなどの手入れをしていれば、事故が起こるようなことはまずない。コンパクトでどこにでも持ち運びやすいので、適材適所で賢く使えばいいだろう。

ただし、超音波式は他の方式とは違う危険性があるということだけは認識してほしい。

部屋の大きさに合わせて加湿量、タンク容量を選ぼう

加湿量1800ml/h、タンク容量12Lのパワフル加湿を実現したダイニチ工業の「HD-181」(実勢価格4万5660円)

続いては「加湿量」と「タンク容量」をチェックしたい。「適用畳数」は1つの目安だが、それよりも加湿量とタンク容量をチェックした方が「どれだけの加湿量でどれだけの時間連続運転できるか」がすぐにわかる。

例えば加湿量600ml/h(適用畳数は木造和室で8.5畳、プレハブ洋室で14畳)でタンク容量が4.2Lの場合、最大能力で約7時間の連続運転が可能ということがわかる。加湿量500ml/hでタンク容量6.5Lなら、加湿量は劣るものの、約13時間と長時間加湿できる。本体サイズも重要な要素になるため一概には言えないが、給水の手間を考えると後者の方が使い勝手はいい。

そのあたりは、大きさも含めてバランスを考えて選ぶといいだろう。

日々使う上で消費電力は重要

消費電力8Wを実現したパナソニックの「FE-KFL05」(実勢価格1万7670円)

方式によって省エネ性が大きく異なるため、消費電力のチェックも重要だ。電気料金の目安としては、1日8時間使用すると想定して、消費電力100Wあたり65円前後(電力料金目安単価1kWh=27円/税込みで計算)と考えるといい。

加湿量300ml/h以上のモデルを対象にした消費電力と電気料金の目安は以下の通りだ。

・スチーム式:250W(350ml/h、月額約1620円)~1000W(1200ml/h、月額約6480円)

・気化式:8W(600ml/h、月額52円)~60W(1500ml/h、月額約389円)

・超音波式:22W(300ml/h、月額約143円)~42W(600ml/h、月額約272円)

・ハイブリッド式(気化式+ヒーター):98W(300ml/h、月額約635円)~390W(1800ml/h、月額約2527円)

・ハイブリッド式(超音波式+ヒーター):55W(300ml/h、月額約356円)~90W(450ml/h、月額約583円)

静音性もチェックしよう

ベッドルームなどで使用する場合、あわせて静音性(最小運転音)もチェックしたい。目安は以下の通りだ。スチーム式は水を沸騰させることもあって基本的に運転音は大きい。気化式は超音波式に比べてもかなり静かなのが特徴だ。

・スチーム式:27dB~

・気化式:6dB~

・超音波式:22.7dB~

・ハイブリッド式(気化式+ヒーター):13dB~

安蔵 靖志(あんぞう やすし)
IT・家電ジャーナリスト、家電製品総合アドバイザー デジタルAV機器を中心に、デジタルガジェットから白物家電まで幅広く取材・執筆している。All About「パソコン・PC」「iPad」などのガイドも務めている。「日経ビジネスオンライン」にて「市場に挑む『革新モノ』」連載。KBCラジオ(九州朝日放送)を中心に全国6放送局でネットしているラジオ番組『キャイ~ンの家電ソムリエ』にも出演中!

[日経トレンディネット 2016年1月27日付の記事を再構成]