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2016年春夏のおしゃれ 6大トレンドを先読み

宮田理江の「ファッション戦略論」

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NIKKEI STYLE

遊び心を宿した、女っぽい装いが戻ってくる。2016年春夏ファッションの傾向はワクワク感やたおやかさを前面に押し出すトーンに。透ける布、深いスリット、肩の露出などがセクシーを主張。色数が増えて、リゾートやアフリカンの気分も帯びる。お茶目なディテールやひねりの利いたアレンジは着姿を朗らかに見せる。春の到来を前に、6つのキーワードから新トレンドを駆け足チェックしてみよう。

◆トレンドスタイル1 「プレイフルフェミニン」

全体的に見た目の印象が若返る点がこの春夏の大きな変化ポイント。大人フェミニンのムードを軸にしつつ、初々しくフレッシュな演出を利かせていく感じだ。具体的には素肌美を生かす見せ方が増える。両肩をさらすベアショルダーをはじめ、膝上まで切れ込むディープスリット、両脚をのぞかせるダブルスリットなどが装いをつやめかせる。トップスの首もとから深く素肌を見せるプランジネックのような大胆ヌーディーも提案されている。薄布越しのシースルーや肌見せレース、カットアウト(くり抜き)、メッシュはチャーミングな着姿に導く。

意外感やいたずらっぽさを忍び込ませる「プレイフル」の仕掛けが目新しさを生む。前後や左右でバランスを崩すアシンメトリーは、「不ぞろいの美学」をうたう。背中に大胆な驚きを秘めた装いは「二度見」を誘う。ディテール面では布のドレープ感が楽しいラッフル(フリル)、裾で揺らめくフリンジなどが着映えを弾ませる。袖に穏やかなふくらみを持たせるベルスリーブ、コケットな風情を帯びるパフスリーブも復活する気配だ。

◆トレンドスタイル2 「グラマラスグリッター」

パワーやチアフル感を印象づける、グラマラス気味の装いが活気づく。メタリックな演出はその象徴と言える。ラメやスパンコール加工を施した生地がグリッターな華やぎを呼び込む。シャイニーな光り物系ディテールはSFっぽいフューチャー感をまとわせる。大ぶりの耳飾りやジュエル付きの靴も光輝を招き入れる。ナチュラルな風合いの布やレトロ顔のアイテムを組み合わせ、質感の違いを引き出し、全体に深みを出す着こなしがこなれ感を生む。ビニール系のケミカル素材もクールな雰囲気を漂わせる。

色数が増えるのも、来春夏の目立った変化だ。ポジティブカラーがおしゃれ心にエンジンをかける。マルチカラー使いは着姿にエナジーを注入。目を引くグラフィカル柄や、異なるモチーフ同士の引き合わせも装いにダイナミックな動きをもたらす。キッチュやギークと呼ばれる、「ちょいダサ」風で茶目っ気たっぷりの演出は、ファッションに「笑い」という新スパイスをふりかけてくれる。アートっぽい絵柄も程よい飾り気が今の気分を映す。

◆トレンドスタイル3 「アフリカントライバル」

エスニック(民俗調)テイストはアフリカンが盛り上がる。砂漠や草原のイメージを伴うアースカラーやナチュラルカラーがくつろいだ風情にいざなう。サファリジャケットに代表されるワイルド系のアイテムにも見直しが進みそう。勢いが続くボヘミアン(ボーホー)では、チュニックやペザントブラウスがのどかな着姿のキーアイテムに。身体を締めつけないリラクシングなウエアが伸びやかな気分を寄り添わせてくれる。

大自然の生命力を写し込んだようなモチーフが装いをダイナミックに彩る。レオパード(ヒョウ)やゼブラといったアニマル柄に加え、植物モチーフもアフリカンに染まる。先住民の伝統的な手描き柄、土俗的な抽象模様などがプリミティブ(原始的)なムードをまとわせる。日本の絣(かすり)に似たイカット織物にも素朴な表情が宿る。風通しにすぐれたエアリーな仕立ての服、気負わずに歩きやすいフラットソールのサンダルも南国ムードの着こなしになじむ。

◆トレンドスタイル4 「アーバンビーチ」

場面を限定しない「シーンフリー」の着こなしがさらに広がる。広く支持を集めそうなのは、リゾート気分を街着に持ち込むスタイリングだ。とりわけ、海辺の装いをアーバンルックに融け合わせる着こなしは解放感や涼やかさが高い。キャミソールワンピース風のストラップドレスをはじめ、タンクトップドレスや、前丈が短いショートトップスなど、コンパクトなフォルムのアイテムはみずみずしい着映え。ブラトップの上からサマーアウターを羽織るような、ビーチウエアとのミックスも打ち出されている。

海の雰囲気を感じさせる色やモチーフが気持ちまでほどく。カラーリッチなパイナップルやハイビスカス、ココナツといったトロピカル柄のプリントはそのアイコン。でも、セオリー通りの南国調ではなく、モノトーンやぼかし加工などで街着に落とし込みやすくアレンジするのが来季らしい工夫。絞り染めのタイダイはサーフィンカルチャーの薫りを連れてくる。全体にハッピー感が高く、色は明るく前向きだ。つばが短めのバケツハット、オープントゥの靴なども伸びやかな着姿を印象づける。

◆トレンドスタイル5 「ソフトユーティリティー」

ミリタリーの人気が衰えず、ワークウエアの取り入れも進む。共通しているのは実用性を重んじる「ユーティリティー」の感覚。ただし、武骨さや素っ気なさといった持ち味は薄めて、ソフトな雰囲気に着地させるのが今の操り方だ。両胸にふた付きポケットを備えたシャツや、ツールポケット付きのエンジニア風パンツ、太いベルト通しのジーンズなど、ディテールに本来のイメージを残している。ボマージャケット風のシルエットを写し取ったり、軍服に由来するトレンチコートを春夏向きに変形させたりという置き換えも試みられている。

気取らないムードを生かしながらも、肌見せやレース使いなどのフェミニン演出と組み合わせて、やさしげに落ち着かせている。ガウチョの大ヒットを生んだ、コンフォート(着心地)志向を背景に、窮屈さを遠ざけたスタイリングで、マニッシュ風味の角を丸くすると、全体がしなやかにまとまる。デニムやチノは飾らない素材感をベースにしつつ、スカーフやレースなどのたおやかな表情を重ね合わせたい。サマーレイヤードやワントーン・コーディネートに組み込むと、ユーティリティー系ウエアも大人っぽくまといやすい。

◆トレンドスタイル6 「ニューノーマル」

気負いや力みを感じさせない「エフォートレス」の着こなしがさらに進化して、これまでの見慣れたウエアにもリラクシングな着こなしが広がってきた。この春夏はシャツやパンツといった身近な服でも、着心地よさげにスタンダードを崩す「ニューノーマル」のアレンジが浸透しそうだ。ジーンズの上からサマーアウターを軽やかに羽織ったり、ノースリーブとパンツでセットアップを組んだりと、定番的なアイテムから新たな表情を引き出すマッチングを試す「プチ冒険」は着こなしバリエーションを格段に増やしてくれるはずだ。

ニューノーマルではコーデの工夫が大切となる。たとえばボーダー(横縞)柄のカットソーのようにごく当たり前のアイテムでも、ボーダー幅を極太に変えるだけで別の顔を見せる。ボーイッシュに見られやすいチェック柄シャツは裾を正面だけウエストインする「ゆるイン」で、くつろぎムードを呼び込める。ベルトの端を余らせて、無造作に垂らす小技は装いを堅苦しく見せない。シンプルな着映えでありながら、巧みな「はずし」でヌケ感を出すコーデを意識したい。

16年春夏で急浮上するのは、おしゃれで「遊ぶ」という感覚だ。「楽しむ」を超えて、面白がったりチャレンジしたりするような気持ちでスタイリングを、いい意味の「自分勝手」に組み立てるトレンドと言える。過剰な装飾ではなく、適度な「こなれ感」を重んじ、着心地のよさや気張らない雰囲気を求めるテイストでもある。しばらく続いた、素っ気ない「ミニマル」がようやく後退し、おしゃれを通した自由な表現を応援してくれるようなうねりが盛り上がってきたのだから、この春夏はさらに自分らしさを押し出した着こなしが楽しめる期待が高まるだろう。

宮田理江(みやた・りえ)
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説 などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。

(画像協力)ブランドニュース http://brand-news.jp/

[nikkei WOMAN Online 2016年2月6日付記事を再構成]

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