見た目以上に中身が変わった「サーフェスプロ」 後編
モバイルノートの購入を考えていて、マイクソロソフトの「Surface Pro 4(サーフェスプロ4)」を候補にしている人は多いだろう。どんなユーザーに合っているのか、本当にモバイルノートの代わりになるのか。前機種からどこがどれだけ進化しているのか、Surface Pro 3との比較を中心にチェックした。後編ではキーボード、拡張性などを見ていく。
オプションのキーボードが使いやすくなった
中身と同じかそれ以上に大きく変わったのが、同時に発売されたカバー兼キーボードの「Surface Pro 4タイプカバー」だ。オプションだが、これを取り付けることでノートPCのように使える2in1デバイスになるので、パソコンとしてフル活用するつもりならセットで購入すべきだ。価格は1万6400円だ。
キーとキーの間に隙間がある置き石型になったことで、隣のキーを間違って押すことが減った。キータッチはやや硬めでクリック感も強めだ。キーのぐらつきがなくなった。これまでのタイプカバーではキーがグニャグニャとする感触があったが、それが解消されて打ちやすくなっている。
キータッチが重くなったと感じる人もいるかもしれないが。Pro 3用のタイプカバーとは互換性があるので、以前のキータッチが好みならそちらが使える。タイプ音はカシャカシャした耳障りな音から、カタカタしたやや静かな音になっている。
カバーの付け根を折りまげてキーボードに角度を付けた形にすることもできる。キーは打ちやすくなるが、下の机との間の空間で音が反響するため、打鍵音が気になる。静かな場所でこの形で使用するのは注意が要るだろう。
キーピッチは広くなっていて実測で約18.5mmあり、12型クラスのノートパソコンとしては十分広い。
タッチパッドも大きく改善されている。サイズが2回りほど大きくなり、位置がパームレストの中央になった。クリックボタン一体型なのは相変わらずで、筆者の好みではないが、大きくなったことで操作しやすくなったのは間違いない。
設置場所は奥行きが必要
Surfaceシリーズにタイプカバーを取り付けてノートパソコンのように使おうとするとき、注意したいのが置く場所だ。背面のスタンドで立てるため、その分だけ奥行きが必要になる。狭いテーブルや膝の上ではノートパソコンに比べて不安定で使いづらい。
タイプカバーを広げられない場所では、ソフトウエア・キーボードや外付けのBluetooth接続キーボードといった、別のキーボードを使う工夫が必要だ。
拡張性は変わらず
拡張性はPro 3と変わらない。端子は標準サイズのUSB3.0、Miniディスプレイポート、microSDカードスロットがついている。できれば標準サイズのSDカードスロットがほしいところだ。このほかACアダプターには充電用のUSBポートがついている。本体のUSBポートをふさがずにスマホなどを充電したい時に便利だ。
自宅やオフィスでも活用したい人は、オプションの「Surfaceドック」があると便利だろう。これを取り付けると拡張端子が大幅に増えてA4ノートやデスクトップPC並みの拡張性になる。
従来のPro 3用ドッキングステーションはSurface本体を左右から挟んで固定するもので、取り付けると画面の角度が固定されてしまうのが難点だった。「Surfaceドック」はコンパクトな箱型で、Surfaceの電源コネクターにケーブルで取り付けて使うため、画面の角度を自由に変えられるのがメリットだ。
注意したいのは「Surfaceドック」用のACアダプターが「Surfaceドック」自体とほぼ同じ大きさで重さもあること。コンパクトだが持ち運びには向かない。あくまでオフィスや自宅用だ。価格は2万5400円するが、家でも外でもSurface Pro 4一台で済ませたい人には便利だろう。Pro 3や発売予定のSurface Bookでも利用できる。
処理性能は問題なしだが電源プランに難あり
CPUは第6世代のCoreプロセッサーだが、一番安いモデルはCore m3で処理性能はやや見劣りする。価格の安さや若干の軽さを重視して割り切って使える人向けだ。メインマシンとしても使いたい人や、処理性能の高さを求める人はCore i5/i7搭載モデルを選ぶ方がいい。
テストしたのはCore i5搭載、8GBメモリー、256GBのSSDを搭載するモデルだったが、Windows 10を使っていて処理性能や容量に不満を感じる部分はなかった。本体の発熱が気になるところだが、確かにある程度熱くはなるものの、同じように利用したPro 3ほどではなく熱暴走も起きなかった。
バッテリー駆動時間は「最大で連続9時間のビデオ再生が可能」となっている。無線LANでWebサイトやメールチェックをしつつテキストファイルを作成する使い方でしばらく使ってみたが、ディスプレイの明るさをやや落とした状態で6時間近く利用できた。電源のない場所で丸一日仕事に使うのは難しいが、半日なら十分使えそうだ。
気になったのはWindows 10の電源プランの設定だ。コントロールパネルの「電源オプション」を開いても電源プランが「バランス」しかない。例えばNEC、パナソニック、バイオ、東芝といったPCメーカーは、モバイルノート用に細かく設定した電源プランをプリセットして選べるようにしている。Surfaceシリーズはモバイル用途で使うことが多いはずなので、こうしたカスタマイズされた省電力向けの電源プランがほしいところだ。
Windows Helloはスピーディで便利
Surface Pro 4は、Windows 10の新機能である生体認証機能のWindows Helloに対応している。Windows Helloは、顔認証や指紋認証、静脈認証などでWindowsにログオンできるという機能だ。早速顔認証を登録して使ってみたが、顔認識は優秀で、暗い場所や、やや斜めからカメラを見てもちゃんと認識してくれる。
最初はそこまでしなくてもパスワードを普通に入力すればいいだろうと思っていたが、使ってみるとかなり便利だった。電源を入れてカメラに自分が映るとすぐログオンできる。パスワードを入力する手間が省けるだけでなくスピードも速い。画面上をなぞる暗証コードやピクチャパスワードのように画面が汚れないのもメリットだ。
11月のアップデートで日本語版に実装された、アシスタント機能のコルタナももちろん利用できる。自宅で音声入力を試してみたが、マイクの認識は良好で聞き間違えられることは少なかった。屋外のややうるさい場所だとさすがに認識してくれないことが多かったが、これは仕方ないだろう。
モバイルノートとしては使い方を選ぶ
Surface Pro 4は、Surface Pro 3のデザインやキックスタンド、持ち運びやすさなどを継承しつつ、処理性能や操作性、手書き機能などほぼすべての面でパワーアップしている。Windows Helloにも対応し、Windows 10の機能を十分生かせる製品だ。Pro 3はまだ一部のモデルが購入可能だが、価格が高くてもSurface Pro 4の方がおすすめだ。
画面サイズの近いタブレットとしては、12型で約579gの東芝「dynaPad N72」がある。CPUはAtomで処理性能は低いが、ペン入力機能に力を入れているほか独自の手書きノートアプリやボイスレコーダーアプリなどが付属し、ビジネス用途に向いている。Surface Pro 4が有利なのは処理性能の高さ、タブレット単体で自立できること、画面の解像度が高いことなどだ。
Surface Pro 4を11型~13.3型のモバイルノートと比較検討している人も多いだろう。この場合はタイプカバーの価格(1万6400円)も含めて考えたい。重さは本体と合わせると1kg少々になる。
ディスプレイサイズと重さが近い製品としては、2in1タイプなら13.3型で900g台の軽さが特徴のNEC「LAVIE ZERO HZ650」「同HZ750」、12.5型で1.2kg前後あるが光学ドライブ搭載で約12時間駆動できるパナソニック「レッツノートMX」シリーズなどがある。2in1でないモバイルノートなら、軽量で拡張性の高いVAIO「VAIO Pro13|mk2」「VAIO S11」や、パナソニック「レッツノートSZ」シリーズが比較対象に入ってくるだろう。
これらに比べてSurface Pro 4特徴は、スペックの高さ、解像度の高さ、ぺン入力機能、薄くて携帯しやすいことなどだ。逆に拡張性が低いことや、ノートPCとして使うなら奥行きのある置き場所が必要になることに注意したい。ペン入力を重視する人、ノートよりもタブレットとして使うことが多い人、タイプカバーを広げられる場所で使える人、外出先でではたくさんの拡張端子を使わない人に向いていると言えるだろう。モバイルノートとしては用途を選ぶが、ハイスペックなWindowsタブレットとしては非常に有力な候補だ。
(IT・家電ジャーナリスト 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2016年1月12日付の記事を再構成]
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