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ミドル転職、時来る 崩れる35歳の壁 若手が減り出番 経験を期待

2016/2/17

DoCLASSEでは高松さん(左から2番目)をはじめ、転身してきたミドル社員が職場をけん引する(東京・世田谷)

若者の人口が急減している今、転職の世界で、35歳以上のミドル世代が貴重な働き手として注目を集め始めている。これまでミドルになると求人が減るという「転職35歳の壁」説がささやかれていた。だが、ベンチャー企業を中心に採用意欲が高まり、もはや35歳の壁は崩れたともいわれる。ミドル復権の兆しが見えてきた。

高松幸太郎さん(46)は長く大手衣料品会社に勤め、自社ブランドの小売店を日本屈指の規模まで増やす仕事についていた。だが「会社が大きくなりすぎた。もっと小売りの現場に近いところで汗を流したい」と、2015年9月、衣料品の製造・小売りで急成長を始めたDoCLASSE(東京・世田谷)に入社した。

これまでの経験を買われ、現在は約20店ある自社店舗の拡大とその収益力向上を担う最高財務責任者(CFO)として飛び回る。さらに会社全体の経理財務や法務を統括している。「任せてもらえるのは大きなチャンス」と目を輝かせる。

同社は自社ブランドの衣料が好調なため、従業員を5年前の約50人から現在約800人まで増やしている。だが、それでも人が足りない。総務人事部マネージャーの対馬加名子さんは「衣料品開発から店舗設計まで、幅広く精鋭を引き抜くために日々努力している」と話す。こうして高松さんのほかにも元気なミドルが相次ぎ入社し、職場が活気づいている。

人材サービス大手のエン・ジャパンが15年6~7月、同社の中途採用支援サイトを利用する約280社にアンケート調査したところ、「直近3年以内に35歳以上の人を採用した」企業は83%、「今後ミドルを採用したい」が81%に上った。

企業の採用を支援する専門コンサルタント約110人にも聞いたところ「1年前に比べてミドルの採用が増加」との回答は74%に達した。年収は500万~1100万円台が多く、経営企画から事務管理、マーケティングまで多岐にわたる。最も採用意欲が旺盛なのは従業員500人未満のベンチャー企業という結果だった。

採用熱の高まりを受け、同社は8月、35~49歳を主対象にした転職情報サイト「ミドルの転職」を始めた。

これまで35歳以上の求職者に対して、求人側の企業は「上司と年齢が逆転するから採用しづらい」などと採用をためらうことが現実に多かった。人手不足でも第二新卒者などの若い求職者の採用で補えた。だが「ミドルの転職」編集長の岡田康豊さんは「今、優秀な若い人を採りたくてもなかなか採れない」と話す。

総務省の労働力調査によると20~34歳の労働力人口は、2005年の合計2029万人から、15年には1609万人まで縮小している。この人口構造の急変がミドルの追い風になっている。「トップと現場をつなぎ、組織を動かす即戦力としてミドルへの期待は大きい。15年がミドル復権元年と位置づけられる」と岡田さんは話す。

  ◇   

山田直哉さん(仮名、46)は大手企業でソフトウエア開発を手掛けてきた。2015年6月、上司に突然、早期退職に応じるよう求められた。「9月末で退職するように言われ、転職活動することに。だが、他の職場で通用する技術も経験もない。自分のような人間が転職するのは難しいと思い知らされた」という。

どんなにミドルに期待がかかっても、急成長する職場に転身してすぐに実力を発揮できる人材は少ない。再就職支援大手、テンプスタッフキャリアコンサルティング(東京・港)事業開発推進部長の平岡智信さんは「ミドルも会社側もキャリアを磨く準備をしてこなかった」と話す。

同社は経済産業省の委託で13年度から、成熟した大企業のミドルが伸び盛りの企業に転身するのを後押しする「人活支援プロジェクト」を始めた。毎年度、研修からお試し勤務まで約5カ月かけ、数十人の転籍・出向を支援する。その際「気持ちを転身へ切り替えてもらうのにも時間がかかる」(平岡さん)という。

社外で通用するようにキャリアを磨き、新天地に挑む姿勢を培うのは、一朝一夕では難しい。いわゆるミスマッチが深刻なのが現状だ。

山田さんは結局、インテリジェンスなどの人材サービス会社を通じて約60社の門をたたき、昨年10月からIT関連企業に転身を果たした。元の職場で「お客様のために」と真摯に働いた姿勢が評価された。今は新しい職場で若い同僚を助けながら仕事し、同時に資格取得などのキャリア磨きに力を入れている。

(平田浩司)

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