安らぎホルモンが出る、動物と触れ合うペットセラピー
ストレスや不安で気分が沈む――そんなとき、心に安らぎを与えてくれるホルモンがある。愛情ホルモンや絆ホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」だ。
オキシトシンは、出産時に子宮を収縮させて陣痛を促したり、母乳分泌を促す作用がよく知られているが、自治医科大学医学部の尾仲達史教授は「オキシトシンは社会的な『絆』を深める働きを持つホルモンでもある」と説明する。「親子やカップル間など親しい関係でのスキンシップで分泌され、オキシトシンが増えると愛情や信頼感が増して、絆が強まる。さらには社会的な行動を促し、仲間との絆を強くする可能性もあるとされる」(尾仲教授)
また、「オキシトシンはストレスや不安を軽減し、コルチゾールの分泌を抑える作用もある」(尾仲教授)。
こうしたオキシトシンの働きは、人間同士の触れ合いだけで見られるものではない。「人と動物が触れ合うことでもオキシトシンは増える」と話すのは、東京農業大学農学部の太田光明教授。最新の研究では、人とイヌが見つめ合うと、人とイヌ双方にオキシトシンが増えることもわかった。
「オキシトシンがたくさん出るほど愛着行動が増す。するとさらにオキシトシンが出る。ペットと飼い主の関係が良好であればあるほどオキシトシンがたくさん出るともいえる」(太田教授)。ペットを飼えなくても、「動物と触れ合える場所に行き、見る、触る、世話をするなどの行動でオキシトシンは出る」と太田教授は話す。
動物好きなら触れ合いペットカフェに行くのもいい。心に安らぎが得られる人気の動物カフェを紹介しよう。
[注]利用料金は特に記載がない場合、すべて税込価格。
お気に入りのイヌと近所を散歩できる
トイプードルにビーグル、ゴールデンレトリバーの3犬種10匹前後のスタッフ犬と遊べる。触れ合いスペースに入ると、人間が大好きなイヌたちが挨拶しに集まってきて、モテモテ気分を味わえる。相性の良い子を選んで近隣にある代々木公園でのお散歩体験もできる。触れ合うコツは「最初は顔より下から手を近づけてにおいをかがせて、首まわりなどをなでてあげて」(オーナーの土屋由樹子さん)。
入店は予約不要、30分950円から。散歩レンタルは1匹1時間3600円。散歩セット一式を貸し出してくれるので手ぶらでOK。東京都渋谷区富ヶ谷1-45-2 Y'sパークビル2階 TEL 03-3469-4115 http://dog-heart.ico.bz/
フクロウの触感はフワッフワ、手乗り撮影もできる
動物と触れ合えるお店の中でも今、特に注目なのがフクロウカフェ。凛としたたたずまいだが、真ん丸な目やふんわりした体が愛らしいと人気上昇中だ。東京・吉祥寺の「武蔵野カフェ&バー ふくろうの里」では、大型から小型、訓練中のヒナまで、7羽のフクロウたちに会える。触れ合いスペースにスタッフと一緒に入るので、初めての人でも安心。手乗り体験や餌やり体験もできる。
1時間の入れ替え制。ドリンクとお土産付きで2500円(昼料金/Web予約で500円割引)。餌やり体験は別途500円。2015年10月には原宿店もオープン。東京都武蔵野市吉祥寺本町1-26-1 JK吉祥寺ビル201 http://owlvillage.jp/
ゆったりスペースで読書をしながらネコとくつろぐ
東京・池袋のネコカフェ「猫の居る休憩所299(にくきゅう)」は、広々としたフロアーとゆったり座れるソファ席が特徴。店内では約20匹のネコたちが自由に歩き回ったり、のんびりひなたぼっこしたりして過ごしている。店内にはオモチャやブラシが置いてあり、遊び好きなネコと遊んだり、毛をとかしてあげたりできる。約2000冊のマンガや雑誌も閲覧可能。読書などして静かに過ごしていると、ネコが寄り添ってきてくれることも。
入店料金は10分200円から。90分パック1500円。フリードリンク350円。東京都豊島区東池袋1-23-9 近代ビル5階 TEL 03-6914-0071 http://www.nya-n.jp/299/
膝の上でウサギをなでなで、ハリネズミがいるのも魅力
人懐っこくて人との触れ合いが大好きなウサギたちに会えるのが、東京・六本木にある「Ms.BUNNY(ミス・バニー)」。約20匹のウサギの中から気に入った子を、ひざの上に乗せて触れる。ウサギは意外に感情表現が豊か。「日ごろから人に慣れるように訓練しているので、抱っこされるのが好きな子ばかりです」(店長の平野有起さん)。ウサギだけでなくハリネズミに会えるのもうれしいポイントだ。
触れ合い料金は時間制。セルフサービスのドリンク込みで30分850円(税別、平日)/1000円(税別、土日祝日)。お散歩体験は1時間3000円。東京都港区六本木6-7-2 岩堀ビル3階 TEL 03-3404-1182 http://ms-bunny.com/
東京農業大学農学部バイオセラピー学科。東京大学畜産獣医学科卒業。獣医師。東京大学、大阪府立大学、麻布大学を経て、現在は東京農業大学農学部バイオセラピー学科で教授を務める。専門は、獣医生理学、ヒトと動物の関係学。
自治医科大学医学部生理学講座。東京大学医学部卒業。英国・ケンブリッジAFRC研究所British Council Fellow。自治医科大学医学部生理学講座で神経脳生理学部門の教授を務める。研究内容はストレス・摂食・情動・社会行動の神経機構。
(日経ヘルス 長野洋子、越智理奈)
[日経ヘルス 2015年12月号の記事を再構成]
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