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Money Interview

幼少期に裕福でなかったことが、今の私を支えています 女優 秋元才加さん

日経マネー

2016/2/14

撮影/高山 透
日経マネー

 ──テレビ東京『マネーの羅針盤』への出演も2年近くと、大分長くなりましたね。

 そうですね、でも振り返ってみればあっという間です。最初は「のどから心臓が出る」ような感じでしたが、最近ようやく生放送にドキドキしなくなってきました。本格的な経済番組というのは初めてだったので、すごく光栄だなというのと同時にプレッシャーもあったんですね。最初は出てくる経済用語ももう全然分からなかったです。

 今はさすがに少しずついろんな点がつながり、線になってきて、経済の大まかな流れは把握できるようになってきました。興味もすごく広がって、自分でも勉強を始めたり。2015年には少額ですけど、株と投資信託も買ってみたんです。他人事ではなく、より主観的に、「こういうことが起こると株が上がるんだ」と実体験で学びたかったので。株の銘柄選びも「難しく考える必要はなく、最初は自分が応援したい企業の株を買うのでいい」と、番組でも聞きましたし。

あきもと・さやか 1988年生まれ、千葉県出身。2006年にAKB48劇場チームK初日公演でデビュー。10年からチームKのキャプテンとして活躍する。13年8月にAKB48を卒業。以降、テレビ東京『マネーの羅針盤』レギュラー、映画『ギャラクシー街道』『媚空 -ビクウ-』(15)、ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』(15)、CMなどで幅広く活躍。14年にはフィリピンの観光親善大使にも就任。趣味・特技はバスケットボールと合気道。

 ──素晴らしい。その通りです。

 日本では7%くらいの人しか投資に参加していないんだそうで、投資をしていると言うと、どっちかというと「がめつい」とか「変な人」みたいに見られがちですよね。でも海外だと子供の時からいろいろ学んで投資してる人も多く、日本はマイナスイメージを持ってる時点で既に損してる気がします。

 ──なぜ日本では投資が広がらないんでしょうか。

 初心者だと「すごく勉強しないとできない」とか「大きなお金が動いている」といったイメージがあるからかもしれません。だから「1万円からできるよ」と言われるとハードルが下がるし、その1万円の投資から経済がぐっと身近になって自分の中に入ってくる。始めてみてそう思いました。

 あと、最後に決めるのは自分ですよね。私たち世代はバブルが弾けた後なので、みんな慎重で、どうしても石橋をたたいて渡っちゃう。だから投資の決断もしにくいのかも。私も少し前はこういう世界に飛び込むと思ってませんでしたし。でも、一旦始めてみると、損しても自分の勉強になるし、上がったら「こういう見方で合ってたんだ」と、人生の勉強をしてるなという感じですね。

 ──経済や日本の将来に関して今気になっていることは? やはり年金ですか。

 いえ、私は年金にしても、国から援助してもらおうという感覚が最初からあまりなかったんです。親の教育もあり、働けるうちに働いて、しっかり貯蓄しておかなきゃということを幼少期から考えてました。

 ──幼少期といえば、失礼ながらあまり豊かではなく、真冬にガスが止められて水風呂なんてことも日常茶飯事だったそうですね。

 あはは(笑)。アイドルとしては珍しいでしょうね。でも家族がまず最小単位の社会みたいなものだから、子供には他の家や、世の中全体がどうなっているかは分からなくて、「しょうがないな」と思ってました。

 日本の家庭ではよく「子供にお金の苦労は見せられない」と言いますが、私の父と母は「これにはこれだけお金がかかる」と、何でも私と弟に見せてたんですよ。だから幼少期から、生活するのには月にこのくらいの金額が必要だとだいたい把握はできてました。ガスも何カ月滞納すると止められるとか、小学校の時から知ってましたね。

 節約はまず食費からなので、5時すぎにスーパーに行って半額になったものを買ったり、服もフリーマーケットで買ったりとか。幼少期から常に生の経済に触れていたわけです。

 ──だから秋元さんはしっかりしてるんですね。

 制服、教科書も自分で買いに行ってました。そういうことで言うなら、年金制度より、今後の子供たちに対する教育が不安です。親の収入格差のせいで裕福な家の子だけが塾に行けて、エリート学校や大学に行ってということになると、貧しい子たちは勉強する機会がなくなり、基本的なことも学べないのかというのが、私が幼少期にすごく感じていたことでしたので。

 私は参考書も買えなかったので、学校に業者の方が新しい教科書を持ってくる時に、捨ててある要らない教科書を全部家に持って帰って、それで勉強してたんですよ。それと、1、2回なら塾の体験学習に行けるじゃないですか。それで友達にくっついて行って勉強するとか。

 ──本当ですか。涙なくしては聞けない話ですね。

 私はまだ芸能界に行けたから今こうしていますけど、実際高校を出て大学を選ぶという時に、親の収入に格差があるとやっぱり難しいですよね。それと、弟の奨学金の返済も大変そうなんです。私は多少成績が良かったから免除になったんですが、弟は就職してからずっと返し続けているので、国はそういうところにも目を向けて欲しいなと。

 逆に私も国のお世話になってきたので、まだ27歳ですけど、自分が将来日本のためにどんな貢献ができるのかも考えています。米国ではカトリックの影響もあり、社会貢献は割と自然ですよね。私も母がフィリピン人なのでその影響がありまして。だから最近、全くぼんやりとなんですが、「女性が働きやすい社会は」とか「育児しながら働くにはどうすればいいのか」とかも、考えちゃいます。やはり年齢的に結婚なんかが近くなってくると。

 ──AKB48で一緒だった方も、アイドルからそういうリアルな生活に変わっているわけですか。

 そうです。実際メンバーも結婚していたり、もう子供が生まれてる人もいたりするので、みんなの話を聞くと「保育園がない」というのが話題だったり。私も男性っぽいところがあるので、今後景気が悪くなるとすると、男性だけの収入をあてにするのはかわいそうなんじゃないか(笑)、っていうのがあるんですよ。だから女性も自立できる部分はしなくてはいけない。でもその環境が日本にあるかというと、なかなか難しいだろうなと思っていて。

■「男前ですね」と言われると、実はひそかに傷ついてるんですよ(笑)

 ──秋元さんといえば腹筋が話題のように、確かに男性っぽいところもあり、それも魅力ですが。

 運動はそんなにガッツリやっているわけではなく、ピラティスで体幹を鍛えているんですが、自分としては「男前」とか「兄貴」とか呼ばれるのはいささか心外なんです(笑)。そう呼ばれる根本には幼少期の、自分がどうにかしなければ誰も助けてくれない、というのが根付いてるからだと思っていまして。それがこの芸能界で生きているのであれば、親にも感謝しなきゃいけないなと思うんですけど。

 ──豊かでなかったことにはプラスの面もあると思いますよ。私も家業を手伝わないと小遣いをもらえない子供でしたが、おかげで「自分が働いて稼ぐ」という基本は身に付きましたから。

 私もそうでした。バイトを焼肉屋と、母と同じレストランのウエートレスの2つ掛け持ちして、それで学費を全部払って。だから早いうちにお金を稼ぐ大変さに気付けたし、同時に稼ぐ喜びを知ることもできました。

 ただ最近は、お金はためる一方でもまたいけないんだなと気付いてきました。例えば地方ロケに行くと「ここで私が少しでもお金を使ったら、この土地の経済がもっと回るのかも」と思うようにもなってきたんです。なので、地域産品を買ったりするようにしています。

 ──『マネーの羅針盤』で得た経済知識が生きてますね。さてチームKのキャプテンだった頃と1人になった今と、お仕事はどちらがやりやすいですか。

 どうですかねー。あの頃はAKB48というグループの名前があったので、きちんとしなくちゃいけないというのがあったんですけど、個人的にノビノビできてるのは今。もともと私はキャプテン心があるわけでもなく、比較的ぼんやりしてるのを、2番手・3番手の子がサポートしてくれて、成り立ってたんですよ。でもやっぱりそれなりに張り詰めていたので、今見ても、当時の写真は顔がキツいですね(笑)。

 AKB48を見てると企業の縮図みたいで、面白いですよ。設立当初のメンバーがどんどん分かれて、子会社設立みたいになってきて。海外進出もするし、ビジネスモデルの部分も含めて、興味深いです。すごいところに関われたんだなと思います。

 ──なるほど。さて15年のお仕事で最も印象に残っているのは?

 三谷幸喜さんの『ギャラクシー街道』です。登場シーンはそんなに多くなかったんですが、今まで経験した中で最大規模の映画だったので、公開された時に周りからの見方が変わったというか。自分が次のステージに、どうにか指先を引っ掛けて、一段上ろうとしているんだなというのを感じました。

 ──まだ女優と言われるのには気恥ずかしい感じがあるとか?

 はい。AKB48時代に「お前たちは何もないんだから、何でもやってみろ」と言われて、雑草精神でここまで来たんです。だから、これは大島優子も同じことを言ってるんですけど、「秋元さん」とか言われると、そんな扱いをされたことがないので戸惑うという(笑)。

 ──最後に、16年はどんな年にしたいですか?

 人にインタビューして、通り一遍の話ではなく「本当のこと」を聞くのが好きなんです。なので、経済番組やリポーターもどんどんやらせていただいて、その経験をまたお芝居に還元していきたいです。皆さんの中に今以上に「役者」というイメージが定着する年にしたいですね。

(聞き手/大口克人 撮影/高山 透)

[日経マネー2016年3月号の記事を再構成]

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