アイドルの原石輝く原宿 新しいビジネスモデルに挑む

ファンとメンバーの距離の近さも魅力だ
ファンとメンバーの距離の近さも魅力だ
「原宿駅前ステージ」が入るビルは原宿の竹下通り入り口に面している

若者文化の発信基地として国内外から多くの人たちが集まる原宿。流行のファッションやデザートなどグルメだけでなく、ここにきてアイドルファンの関心も高まっている。その中心が大手芸能事務所ライジングプロダクションが開いた「原宿駅前ステージ」だ。週末を中心に盛り上がりをみせている。原石がきらきら輝くステージにアイドルビジネスの新機軸が盛り込まれていた。

「原宿駅前ステージ」はJR原宿駅前、竹下通りの入り口にあるビルの6階にある。2月6日土曜日。開演時間の20分前にエレベーターを降りると、会場入り口はすでに熱気があふれかえっていた。入場者が席を決める抽選のビンゴを回していた。

2015年8月にオープンしたこの劇場に出演するのが総勢39人の「原宿駅前パーティーズ」。「ふわふわ」「原宿乙女」「原駅ステージA(エース)」「ピンクダイヤモンド」の4つのチームに分かれている。金曜日、土日、祝日にライブを行っている。テレビ出演はまだ少なく、いまのところ、このステージでしかメンバーに会えない。

ファッションショーの舞台のようなランウェイが設けられたステージ

ステージはちょっと変わったつくりだ。ファッションショーの舞台のようにランウエーが設けられ、場内の後方まで伸びる。約100席。チケットはかなりの争奪戦のようで、「チケットの競争倍率はバレンタインのイベントで40倍、通常でも30倍です」と劇場総支配人の田代雅裕さんは話す。

約2時間のステージは音楽やダンスあり、アクロバティックな動きあり……。公演の合間にはファッションショーや一発芸的な笑いをとるコーナーもある。大手が手掛けるだけに小規模なステージながらも照明や音響なども本格的だ。ライジングプロ・ホールディングス(東京・渋谷)の平哲夫代表取締役は「うちはプロモーションに強い事務所ではない。タレントを多く抱えてもなかなか出演機会を提供できないジレンマがあった。そこで多くのタレントをプレゼンテーションする場所としてこの劇場をつくった」と話す。

「原宿乙女」は平均身長167センチのモデルグループ

事務所と契約してから6~7年レッスンしているメンバーもいる一方で、昨年の春休みや夏休みにスカウトしたメンバーもいる。通常だとスカウトやオーディションで選んでスクールでレッスンしてデビューを目指す、という道をたどるが、この劇場があることでいろんなことが試せるようになった。即戦力のメンバーを出す一方で、キャリアの浅い子を公演に出しながら経験を積ませる、さながら職場内訓練(OJT)のような育成もできる。個性ごとに4つのチームに分けた手法が生きる。公演でもチームカラーの幅がアクセントになり、お客さんを飽きさせない。

劇場のあるビルは14年11月に完成した。このビルの5階にライジングプロが港区事務所を港区から移転した際に、6階のスペースを活用しようと劇場をつくった。お客さんが全席着席となったのもビルの事情からだ。「ビルは劇場用につくられていないので天井が低い。ランウエーが15センチ以上高く設定できない。じゃあ着席ということになった」(田代総支配人)。秋葉原や渋谷などアイドルの卵たちがパフォーマンスする小規模の会場は立ち席も多い。落ち着いてショーを楽しめる着席は中高年のファンからポイントが高い。

ステージに向かって正面に設けられる席の配置が一般的だ。ここではランウエーを横から見られる席もある。出演者の横や後ろ姿も見られる。いろんな角度から楽しめる。「いろんなところに座りたい、とお客さんはおっしゃいます」(田代さん)

華麗なアクロバットダンスで魅了する「ピンクダイヤモンド」

席は抽選で決まる。早い時間に来ても、開演ぎりぎりに来ても平等に席が決まる。「お客さんも運試しを楽しんでいるようです」(田代さん)。席とステージも近い。アイドルファンの間では絶好の席を「神席」と呼ぶ。逆に日本武道館や東京ドームなど大規模な会場の後方席、上方の席を「天空席」と表現するなど、運の良しあしでファン同士が盛り上がる。だが、ここはすべてが「神席」だろう。

ステージ上ではそれぞれのメンバーが個性をアピール。距離が近く、ごまかしがきかない。共通してクオリティーが非常に高い。このステージ内容で入場料は1500円(税込み)。コアなアイドルファンほど、レベルの高さが分かるようでチケット入手の競争率の高さもうなずける。それでも田代さんは「最初はまったく無名の女の子のパフォーマンスにいくら払ってくれるのだろう、と不安だった」と振り返る。アイドルビジネスの難しさがうかがえる。

なかなかチケットがとれないファンのために原宿を飛び出して1月に赤坂BLITZで600人規模の出張公演を開いた。3月には東京・港区にあるゆりかもめ・竹芝駅前の特設ステージで出張公演を開く。田代さんは「竹芝駅前ステージでも同じようにランウエーをつくる。大きな会場になるほど席が近くない。そういう場所でもファンの人が楽しんでもらえるパフォーマンスができるかが勝負だ。それができないともっと大きな会場に広げていけない」と話す。

「原駅ステージA」はカワイイとカッコイイが混ざったダンスボーカルグループ
小・中学生に人気のファッション誌のモデルも在籍する、正当派アイドルグループ「ふわふわ」

原宿駅前パーティーズの第1弾CDは「原駅ステージA」と「ふわふわ」の両A面で4月13日に発売される。CDリリースを機に、テレビ番組での露出も増やしていく考え。さらなる飛躍へメンバーは公演で目いっぱいのパフォーマンスを見せ経験を積んでいる。

原宿はアイドルの聖地、秋葉原と同じく海外からの観光客も多い。「原宿駅前ステージ」は「クールジャパン」を海外にアピールするにも絶好の立地だろう。ファッションの中心地だけに、ビジネス的な広がりもありそうだ。原宿から出た新しいアイドルのムーブメントから目が離せない。

(村野孝直)