世界で活躍する人の「自己イノベーションの起こし方」石倉洋子さん(一橋大学名誉教授) 第1回

2016/2/14
写真:鈴木愛子
写真:鈴木愛子
日本人女性で初めてハーバード大学大学院にてDBA(経営学博士)を取得。世界有数の企業でキャリアを積み、現在は一橋大学大学院の教授として世界で活躍する石倉洋子さん。ますますグローバル化する社会を生きていく女性たちへ、石倉さんから時代を生き抜くセルフイノベーションの起こし方についてメッセージが届きました。

現代は、国や企業などの境界がどんどんなくなり、世界はつながって日々変化しています。先日は日本でもマイナス金利の導入が決まりましたけど、この先に何が起きるのかは本当に予測できない時代です。

こんな時代に一番まずいのは、変化を怖がって守りに入ることですよ。日本人は安定を求める思考が強いけれど、「安心安定は悪魔のささやき」(笑)。守りに入るのは自信のなさの裏返しですが、これからの社会を生きていくためには、何とかやっていけるという自信を持つことが重要になるでしょう。

30代から40代にもなれば、これまでに積み重ねた経験やキャリア、物事に対する姿勢など、何らかの強みを持っているものです。それが自信の土台になります。大きな可能性を秘めているこの世代こそ、自分にイノベーションを起こすことを楽しまないと、もったいないじゃない。

意識ではなく、行動を変える

とは言っても、あまり大げさに考えすぎることはないんです。よく「意識改革が必要だ」などと言いますが、意識なんてそう変えられません。変えられるのは行動だけ。それも、大きなことでなくていいのです。

守りに入って「このままでいいや」と、同じ場所への行き帰りや同じ人ばかりと行動するルーティーン化した毎日を送っていたら、確実に気持ちもよどんできます。今日から毎日、新しいことをしてみませんか。例えば、一つ前の駅で降りて家まで歩いて帰る、読んだことのないジャンルの本を手に取る、毎日違うお店でランチする、といったことならできるでしょう? レストランに行ったら意地でも、ほかの人とは違うものを頼むとか。「いつものアレで」は悪魔のささやきよ(笑)。身近なことから行動するだけでも、気づきがあります。

自分の人生、選択のオプションは常に広い視点を持って

30代から40代の人であれば、時に大きな決断を迫られることがあるでしょう。人生の岐路に立った時は、自然体の自分に帰って「私は何がしたいのか」「絶対大切なものは何なのか」を考えれば、どうすべきかはだいたい分かってくるものです。

私の40代のころの話をしましょう。当時はコンサルティング企業で働いて、キャリアアップを目指していました。しかし、慢性の病気を患っていた夫の健康状態が悪くなり、仕事が忙しい一方で家族との生活のバランスがとりにくくなったのです。考えた末、大学で教鞭をとる仕事へキャリアを転換し、夫との時間を優先することにしました。企業での仕事は続けたかったけれども、取り替えがきくものです。でも家族はそうではありません。おかげでその後10年間、夫との充実した日々を送ることができました。

40歳前後の女性は一般的に仕事、家事、育児などさまざまな役割を合わせ持っており、私のように、人生の岐路に立つような出来事もあると思います。そんなときは、自分が求めるライフスタイルは何かをあらためて考え、自分の意思で選択することが大事です。その際、オプションはできるだけ広く考えること。我慢してぎりぎりまで頑張って突然辞めてしまう人がいますが、そうなる前にほかの選択肢はないのか視点を広げてみる。何が正解かは誰にも分からないのですから。

(写真:鈴木愛子)
石倉洋子さん
米バージニア大学大学院 経営学修士(MBA)、米ハーバード大学大学院 経営学博士(DBA)を修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社でマネジャーを務めた後、青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授のほか、各種企業の社外取締役を歴任。専門は経営戦略、グローバル競争におけるイノベーション戦略、競争力、グローバル人材。『世界で活躍する人が大切にしている小さな心がけ』(日経BP社)ほか著書多数。

(ライター 内藤綾子)