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津田大介のMONOサーチ

スマートウォッチ、カシオの答えは「アウトドア」

2016/2/14

アウトドアで使うことを想定したスマートウォッチ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」(写真:大橋宏明)
「ツイッターの伝道師」「金髪のジャーナリスト」として知られるジャーナリスト津田大介。実は“大のガジェット好き”でもある津田氏が“気になるモノ”に迫る連載がスタートします。最初に取り上げるのは、1月に米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」で大きな話題となったカシオ計算機のアウトドア用スマートウォッチです。Apple Watchを使い続けている津田氏が注目した理由とは? 2回に分けてお届けします。

■Apple Watchと異なる思想を持ったスマートウォッチ

日々いろいろなところを飛び歩いている筆者の仕事には、ノートパソコンやスマートフォン(スマホ)といったデジタル機器が欠かせない。それだけに普段使うパソコンや入力機器は様々なものを一通り試した上で厳選したものが残っていった。一方で、新しい製品には、これまでにない機能や魅力がある。

物に関する情報が氾濫するこの時代、なぜそのモノに魅せられたのか。そして、その製品が作られた理由はなにか。自分の仕事道具として常用できるものはないか。この連載では、そうした好奇心を満たすべく、気になる新製品に会いに行き、直接、触った感想をお届けする。

ジャーナリストの津田大介氏(写真:佐藤久)

連載の第1回は、いま一番気になるスマートウォッチを取材してみることにした。

昨年(2015年)、Apple Watchが発売され、続々と大手時計メーカーや電子機器メーカーが参入、一大ジャンルを形成している。僕自身、普段はApple Watchを使っており、使い勝手としてはおおむね満足している。だが、使い続けた結果、見えてきた不満もある。だからこそ気になったのが、先月発表されたカシオの「Smart Outdoor Watch WSD-F10」だ。

カシオのスマートウォッチ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」

この1月に米ラスベガスで開催されたコンシューマー家電業界の展示会「CES」で発表され、「G-SHOCKのカシオが本気をだした」と世界中から注目を集めた、この腕時計型ウェアラブルデバイスのニュースを初めて見たとき、iPhone連動でさまざまなことができると打ち出した「Apple Watchとは異なる思想を持った“時計オリエンテッド”な製品」という印象を持った。その印象は正しいのか、そしてなぜカシオはこの製品を送り出すのか。それを探るために、東京・渋谷にある同社を訪ね、新規事業開発部企画管理室の坂田勝室長にお話を伺った。

企画を担当した坂田室長に話を聞く津田氏(写真:大橋宏明 以下同)

■スマートウォッチに適した用途は何か?

WSD-F10が注目されたのは、やはり機能を限定したからだろう。この製品は「Smart Outdoor Watch」という名称からもわかるように、アウトドアシーンで使うことを想定したスマートウォッチだ。そもそもカシオはなぜこの製品を、アウトドアに特化させたのか。

坂田勝氏(以下、坂田):「現在のスマートウォッチの課題は、使う用途やシーンがまだはっきりしていないということです。スマホと連動して電話の着信やメールの通知を知ることができますが、スマホには四六時中通知が届くし、スマホを手に持っていればわざわざ腕時計で確認するまでもありません。健康管理やフィットネスという用途も考えられていますが、運動や体調データの管理はリストバンド型活動量計のほうが向いています。健康管理という点では、常時つけていたいのですが、スマートウォッチは充電する必要があるので24時間装着しているわけにはいきませんから」

スマートウォッチに求められる機能の本質とは一体なにか。スマートフォン単体では使いづらいシーンや、スマートウォッチだからできることを追求した結果、同社は「いろいろなことができて、毎日の生活が便利になる」という汎用性の高いスマートウォッチの打ち出し方の対極に到達したという。カシオが開発するスマートウォッチにしかできない、明確な用途を絞り込むことにしたのだ。

その第1弾として着目したのが「アウトドア」だった。

ちなみにWSD-F10のHPでは、アウトドアの中でも、登山、釣り、サイクリングの利用シーンを紹介している。


坂田:「登山、釣り、サイクリングといったアウトドアを楽しむ人たちは、地図を見たり、天気を調べたり、かなりスマホを活用しています。方位や高度、気圧の変化、日の出日の入り、潮の満ち引きなど、専用のアプリも多数提供されています。しかし、実際にスマホを使おうとすると、自転車のハンドルやトレッキングポール、釣りざおなどで手が塞がっていたり、グローブをはめていたりするので、すぐに取り出して画面をタッチできません。ましてやスマホを使っている最中、崖や水中に落とそうものなら、大変なことになりますよね」

スマホを使いたくても使いづらい場合がある。WSD-F10があれば、スマホはリュックやポーチに入れたまま、アウトドアの活動で必要な情報を、手元でサッと確認できるわけだ。

■「意外と大きい」サイズに秘められた狙い

開発の背景を確認した上で、WSD-F10を実際に装着してみる。腕につけてみた第一印象は「意外と大きい」というものだった。だが、それにも理由があるという。

坂田:「実用性に関して、特にこだわった技術が3つあります。ひとつが5気圧防水です。今のカラー表示でマイクのあるスマートウォッチはほとんどがスマホ並みの生活防水です。それを、腕時計並みの5気圧防水にあげています。水泳などのアクティブなウオータースポーツにも対応できる防水性能が備わっています。2つ目は、2層液晶です。カラーとモノクロ2枚の液晶を重ねていて、用途やシーンに応じて使い分けることができるようになっています。3つ目が、耐環境性能です。タフな環境でも使っていただけるように、米国防総省が制定した米軍の物資調達規格であるMIL-STD-810Gに準拠する10項目をクリアしています。また、内部にさまざまなセンサー内蔵していますので、そうしたハードウエアの構造をカバーするには、ある程度の大きさが必要でした」

さらに、大きな画面でサッとみてわかる視認性を実現して、このサイズ感になっているそうだ。

ボタンの数も多い。WSD-F10は、右側面に3つのボタンがある。真ん中が、いわゆるホームボタン(電源ボタン)で、上がTOOLボタン、下がAPPボタンだ。左側面はマグネット圧着式の充電端子と圧力センサー。時計的な感覚で、TOOLボタンを押していくと、液晶に表示される情報が方位、高度、気圧と次々に切り替わっていく。

坂田:「TOOLボタンは、プリセットされているアウトドア専用アプリを表示します。APPボタンはアクティビティに割りつけていて、経過時間や移動速度、距離、気圧変動など、リアルタイムで変化する情報を表示できるようになっています。また、設定した条件で自動通知やアラートを送るモーメントセッターという機能も搭載しています。これらは必要なものだけ表示するようにしたり、別のアプリを割りつけたり、文字盤の小窓のメーターに割りつけるといったカスタマイズもできます」

説明を受けている途中で、WSD-F10が振動した。事前に設定されていたアラートだったのだが、バイブレーションが大きくて驚いた。しかも、どこかリズミカルだ。

坂田:「ウェアなどの上に装着することを考えて、バイブレーターは長めにしています。さっきのモーメントセッターのバイブレーションは三三七拍子、なんですよ(笑)」

■スマートウォッチの問題はスマートではないこと?

坂田氏によれば、用途以外にも現在のスマートウォッチにはもう1つ、大きな課題があるという。それは「スマートウォッチなのに時計としてスマートではない」ことだ。僕はApple Watchを使っているが、坂田氏があげた課題の中には、僕自身が実感している問題もあった。後編では、そのことについて話を聞くことにする。

●今回のまとめ●

電子機器をアウトドアで使う時は、どうしたってハードの取り扱いに慎重になる。ましてアウトドアは、ビジネスより情報を活用するシーンが考えにくい。相性が良い印象はなかったのだが、今回の取材で、アウトドアでは情報機器が思っている以上に活躍することを知った。身につける電子機器は、やはり便利なのだ。

なんでもできそうで、なにができるのか今ひとつつかみきれなかったスマートウォッチ。だが、このカシオのWSD-F10は、活用シーンをアウトドアに絞り込んだことで、逆にスマートウォッチの持つ広がりを感じさせるところが、興味深い。

(編集協力 波多野絵理)

津田大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。大阪経済大学客員教授。京都造形芸術大学客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。フジテレビ「みんなのニュース」ネットナビゲーター。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。株式会社ナターシャCo-Founder。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

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