友近さん推薦「面白さをもっと知ってほしい人」
「仲のいい先輩を挙げさせていただきます。まずは土肥ポン太さんを挙げたいです。私が大阪にいた頃、土肥さんと小籔(千豊)さんとよくライブをやっていまして。土肥さんは発想が斬新で、人がやらないことをやっている先輩。アイデアだけじゃなくて、何をやってもすごいんです。
例えばクリーニング屋で働けば染み抜きコンテストで関西1位になったり、八百屋で働けば独立して社長になったり、とにかくジャンルを問わない。ただ、ちょっと卑屈な性格なんで、プラス思考になって、お笑いだけに集中したら必ず人気が出ると思うんですよ。私のほうが後輩なんですけど、『才能あるんやから頑張ってよ』って本人にも言ってます(笑)」
土肥をはじめ、友近は身近な芸人の中にまだ知られていない面白さがあることを主張する。日頃ライブで共演する機会の多い芸人の隠れた能力についてはこう語る。
「東京の芸人も面白いですけど、私は大阪の芸人のほうが"何クソ精神"がある分、プラスαがある気がしています。例えば藤崎マーケットはラララライ体操のイメージが強いと思いますけど、2015年の『キングオブコント』では全く違うネタで決勝に残りましたし、本当に実力がある2人。中川家さんと藤崎マーケットと私で即興コントやあるあるネタを持ち寄ってやると、彼らは中川家さんと渡り合ってる。こういう能力はもっと知られてほしいです。
即興コントでいえば、バッファロー吾郎Aさん、チュートリアル徳井さん、ロバート秋山さんもすごい。でも、そういう面って、世間にはあまり知られていない気がして。ハリセンボンの春菜や渡辺直美ちゃんもコントがうまい。一緒にライブをやると「彼女たちにあんなに才能あるなんて知らなかった」って言われるくらいですから」
身近なところ以外では、意外な人物の名前が挙がった。
竹山、有吉はセクシー芸人
「カンニングの竹山さん。なんかあの人、セクシーなんですよ。そう周りに言うと、『え?』って顔をされますけど(笑)。根がいい人だから、何をしていても温かみが出てるんですよね。優しくて面白いっていう。有吉(弘行)さんも竹山さんと同じ色気を感じます。『セクシー』という視点で彼らを改めて見てもらえれば、分かってもらえると思います」
自身は現在、NHK連続テレビ小説『あさが来た』にヒロインのお世話係・うめ役で出演しているほか、大阪では6年前から演歌番組の司会を務めるなど、カバー範囲は広い。お笑い界以外のジャンルにも目を向ければ、まだまだ気になる人物はたくさんいるようだ。
「『エンカメ』(ABC)という演歌の番組を大阪でやらせてもらうようになって分かったのは、演歌歌手の方々の面白さ。びっくりするくらいみなさんボケたがりで(笑)、楽しいことが好きな方ばかりなんですよ。その中の1人である冠二郎さんを以前、『うもれびと』(2012年、フジ系)という番組で紹介したことがあるんですが、とにかくあの人はダジャレを言いたがるんです。ダジャレばっかり言うオッサンって面倒くさがられがちですが(笑)、じっくり待って全部出してもらうと、新たな発見がある。バラエティは演歌の方をもっと掘り下げるべきなんじゃないかなってすごく思いますね。
なかでもピカイチに面白いのは川中美幸さん。直球でちゃんとボケて笑いを取るんです。芸人が見ても勉強になるくらい笑いのことを分かってらっしゃるから、もっと知ってもらいたいんですよ。私、「この人のここが面白い」っていうのを紹介する専門家になりたいくらい(笑)。
演歌の方たちは吉幾三さんも、山本譲二さんも、全員面白いです。昔ながらの、いい意味のデタラメさがあって、ゆるーい冗談がずっと続く。それがすごく心地いい」
『うもれびと』では冠二郎のほかにCBCアナウンサーの石井亮次も紹介した。彼がMCを務める『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』は、東海地区の生情報番組ながら、2015年春からは関東でも放送が始まり、早くも秋から時間が拡大。それに伴い、石井の注目度も着々と高まっている。
日本一面白い石井アナ
「石井さんとは10年以上前から名古屋で仕事をしてきたんですけど、アナウンサーの面白さじゃなくて芸人の面白さなんです。観察眼が鋭いからモノマネもすごく上手で、しょうもないことでも芸人と同じスピードで言い合える。でもそれをあんまり表に出していない(笑)。
「ほんまは芸人になりたいんやろ?」って聞いたら、「そんなことは言えません」って謙虚なところもまた、ね(笑)。モノマネひとつとっても、横山ノックさんが亡くなられたときの上岡龍太郎さんの弔辞とか、目の付け所にうならされます。あまりにおかしいので、「私が死んだときの弔辞を読んで」って頼んだら、即興でやってくれました(笑)。たぶん日本一面白いというか、ふざけたアナウンサーだと思いますよ」
そんな友近も濃厚に作り込んだキャラクターを持つ。「演歌歌手・水谷千重子」がそれで、ここ2~3年は新曲をコンスタントに発表。2015年に迎えたという「芸能生活50周年」を記念して、1月20日にはベストアルバムを発売、豪華ゲストを迎えての歌謡祭をNHKホールで開催した。あまたいる歌ネタ芸人とはひと味もふた味も異なり、取り巻く環境ごと自らプロデュースすることで、笑いを生み出している。
「もともとは5年前の単独ライブで演歌歌手のキャラを作ってみようかなと思ったのが始まりでした。五木ひろしさんが安室奈美恵(with SUPER MONKEY'S)さんの『TRY ME』をカバーしたのを聴いた時、あまりの面白さに衝撃を受けたんです。洋楽やポップスを演歌歌手がカバーすると、すごい化学反応を起こして想像以上の笑いの世界が生まれる。で、実際やってみたら、お客さんも大喜びしてくれたので、これは歌ってしゃべったらリサイタルができそうだなと思って。おかげさまで回を重ねるごとにスケールが大きくなっています(笑)」
(ライター 遠藤敏文)
[日経エンタテインメント! 2016年2月号の記事を再構成]
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