「会社は男の論理で動く」 女性活躍推進役のホンネ

2016/2/13
企業の女性活躍推進を担当する女性6人が集まり行われた座談会
企業の女性活躍推進を担当する女性6人が集まり行われた座談会

企業でダイバーシティー(多様性)を進める組織を率いるのは、ロールモデル役の女性であることが多い。女性の活躍がなかなか進まない理由は何か。真に必要な施策とは。現場を知り尽くす担当者の本音を聞いた。

――ダイバーシティー担当に任命されたときの気持ちは。

田中良子さん 女性の活躍といいながら福利厚生的な取り組みだったことにもんもんとしていました。女性が本当に活躍できるような施策をやろうと思いました。

鈴木道子さん 組織ができたばかりだったので、何をしていいか分からない状態。最初の半年は行動指針や計画策定に奔走しました。

川村理恵さん 本業で活躍したいと思っていたので「飛ばされた」と感じ、非常に落ち込みました。

石川由美さん 仕事の成果ではなく、子どもがいる女性という私的なことを評価された気がして……。周囲からも同情されました。

佐藤弥生さん 当時はダイバーシティー推進組織の必要性を感じていなかったので嫌でしたね。でもセミナーなどに足を運ぶうちに、新しい角度から組織や事業を見るチャンスだと思いました。

中村洋子さん 業務としてではなく自主的にママ社員のネットワークをつくりました。ダイバーシティーをボトムアップで進めたかった。

――実務で気づいたことは。

川村 社員の意識調査をしたら男女に驚くほど差がありました。やる気は変わらないのに女性は管理職になりたがらず、組織への貢献実感や挑戦意欲が男性より低い。世間で言われていることだけど、初めて実感しました。

キャリア形成、男性ばっかり

石川 私も意識調査の数字で目が覚めました。会社は男性のキャリアを高めることは長年やってきたけれど、女性を高めるには同じやり方ではダメだと思いました。

鈴木 女性社員の聞き取りで、上司が女性をあまり鍛えようとしていないことが分かったんです。期待していないわけじゃないけれど「大変な仕事はやらせられない」という過度な配慮がありました。

――女性リーダーの育成がなかなか進まない要因は。

田中 上司が女性に大きな仕事、レベルの高い仕事をさせていない。また長時間労働を見直さないと女性管理職を増やすのは難しいですね。

石川 管理職になるまで長い時間がかかるのが問題です。海外のように優秀な人がどんどんステップアップできれば、結婚や妊娠などのライフイベントを迎える前に管理職になれる女性が増える。一方で、社内ネットワークに参加することの重要性を女性があまり認識していない面もあります。私自身、出産してからは飲み会などの人脈作りに参加しなくなりました。仕方なかったし結果は受け入れているけれど、チャンスを得る土台づくりの努力を怠っていたと思う。

川村 女性は「自分の仕事だけきっちりやればいい」と思いがち。若手のうちから、人脈を広げて仕事を大きくすることの大切さを教えるべきです。

中村 年代や部署をまたいだ研修の機会を提供するなど、ネットワークをつくる仕組みも重要だと思います。

佐藤 女性は政治力がないんです。男性は仕事のドロドロした部分を「ときにはそういうこともあるよ」とのみ込めるけれど、女性は拒否しがち。でもそれがないと達成できないミッションもある。

議論する座談会の参加者

――仕事と育児の両立支援はどうあるべきでしょうか。

鈴木 当初は女性の就労継続が課題だったので、両立支援制度の充実で退職を食い止めました。一方で、長い育児休業はキャリアの阻害要因になります。それは本意じゃないということで大きく活躍推進に舵(かじ)を切りました。

田中 育休期間はなるべく短くして早く復帰しようというメッセージを出しています。短時間勤務を利用するならどこでフルタイムに切り替えるかを真剣に考えよう、とも伝えます。

――自分がロールモデルにならなくては、というプレッシャーはありましたか?

石川 かなりありました。そもそも私は、外見は女性でも中身は男性と同じように仕事をする「チャック女子」。そうしないと生き残れなかった。でもダイバーシティ担当になってからはチャック付きの女性の着ぐるみの上に「ロールモデル女子」をかぶっていました。外で話せるプライベートなネタを、あらかじめ準備して。

中村 私もチャック女子。管理職になれたのは、転勤を断らなかったことが大きかったと思います。

田中 20代の女性社員に「田中さんみたいな働き方は嫌」と言われました。育休や時短を取っていても、そう言われてしまうオーラが出ているんだと自覚しました。

会社は男の論理で動く。「自分の仕事だけ」じゃダメ

川村 会社は男性の論理で動くので、ある程度男性的な要素がないと居づらくなります。それを知った上でどう振る舞うかが女性の課題です。

――男性中心の組織文化を重んじる上司を変えるには。

佐藤 ガチガチの考えの人を変えるのは無理。ダイバーシティーに理解があり、オピニオンリーダーになってくれそうな男性上司を発掘して、巻き込むことが重要だと思います。

石川 海外赴任を経験した人は、多様なメンバーをマネジメントする苦労を知っているので、理解がある人が多い。皆を海外に赴任させればいいのに。

――女性がもっと活躍するために必要なことは。

中村 まだまだ企業の上層部には女性が少ない。もっと管理職が育つ必要があります。

鈴木 マネジメントが重要。期待することと鍛えることが、成長につながります。育児中であっても、期待して鍛えることが大切です。

川村 すべての人が当事者としてダイバーシティーに取り組むこと。一人ひとりがかかわり方を考えることで社会は変わっていくと思います。

佐藤 「皆と同じだと安心」するのではなく、周囲と同じでいいのかを常に問い直すという発想を持てば、ダイバーシティーは加速できます。

石川 女性が「この国で働けて良かった」と思える環境を整えること。今のままでは人口も増えないし、日本はだめになると思います。

田中 働く母親の一つの形を演じながら、「絶対に後悔しない」と自分に言い聞かせてやってきました。でも、もっと自然にできたのかも。柔軟な働き方の実現と長時間労働を脱することが重要だと思います。

田中良子さん 教育会社勤務。人材育成などを経て、ダイバーシティー推進を約4年務めた。50代前半
鈴木道子さん 金融会社勤務。営業を経てダイバーシティー推進を約5年務めた。40代後半
川村理恵さん メーカー勤務。マーケティングなどを経て約10年ダイバーシティー推進を担当。50代前半
石川由美さん IT会社勤務。技術畑でキャリアを積んだ後、ダイバーシティー推進を約4年務めた。40代後半
佐藤弥生さん IT会社勤務。エンジニアを経てダイバーシティー推進を担当。40代後半
中村洋子さん メーカー勤務。社内の女性社員のネットワークを自主的につくり、運営に従事。50代前半

(女性面副編集長 佐藤珠希)

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