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相続トラブル百科

不動産相続にはリスクあり 損益バランスを要検討 司法書士 川原田慶太

2016/2/12

 日本には不動産に対する根強い信仰のようなものがあります。バブル以降、かなり薄まってきたとはいえ、依然として「土地神話」は珍しくありません。「土地は貴重で価値が高い」「土地は値崩れしない」「最後に残る確かな財産は土地だけだ」といった価値観を、時代に合わない古い感覚だと切り捨てるわけにはいかないでしょう。

 このような不動産重視の価値判断は、ある意味では真実です。財産構成に不動産が含まれると、評価額が大きくなるのは確かです。マイホームの不動産が資産の相当部分を占める家庭は少なくありません。また、相続税が課税されるような富裕層でも、国税庁のリポートによりますと、年々比率は低下しているとはいえ、いまだに土地が総財産の40%以上を占めています。

 しかし、不動産が大きな比率を占めていることが、トラブルの呼び水となってしまうことがあります。「遺産相続で劇的に変わる 自分と家族の資産構成(1月29日付)」で触れたように、相続のタイミングとも無関係ではありません。不動産のように巨大な資産が突然、自分のものになると、思ってもみなかった影響が出ることもあるのです。

 一口に不動産といっても、性質は単純ではありません。故人から不動産を相続した場合、投資対象として考えると、次のような視点が出てきます。

(イ)現金収入をもたらす/もたらさない

(ロ)換価できる/できない

(ハ)値上がりする/しない

 つまり「保有することで現金収入が得られ、いざというときは売却でき、将来の値上がりも期待できる」というAAAクラスの不動産から、「収入にはつながらず、現実的に売ることも難しく、どんどん値下がりしていく」という三重苦の不動産まで存在しているのです。はた目には同じ不動産の相続とはいいながらも、ピンからキリまであることがわかります。

 こう考えると、意外なことに自分を含めた親族の誰かが居住するための不動産は、逆に「お荷物」となってしまうことがあるのです。地代や家賃を取ることができない身内が使う場合、(イ)の現金収入の面で問題を抱えます。

 さらに、自分たちが住み続けるということは、すなわち売却が難しくなるということなので、(ロ)の換価性の面でも不利となります。相続人やその家族などが自宅として使うために引き継ぐ不動産は、その時点で「2アウト」が濃厚となり、実は投資対象としては「不良資産」になってしまっているケースもあるのです。

 不動産は高価値への期待が大きく、見た目の値段も張る分、相続人の資産のバランスを崩しがちです。保有しているだけで固定資産税などの維持コストもかかってくるので、キャッシュフローとしてはマイナス、もしくは持ち出し覚悟で引き継がないとならないケースも少なくありません。

 売るなら売るで、名義変更費用や仲介手数料、測量や取り壊しなどの費用がかかるほか、売却で一時的に所得が増えることによって税金や健康保険料が上昇するなど、想定外の出費が膨らむ可能性があります。不動産だからといって事前の検討なしに引き継いでしまわないよう、いろいろな観点から損益計算をしてみることが望ましいでしょう。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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