ロードバイク、かっこよさなら「エアロ」を選ぼう
2016トレンド大予測
自転車は100年をはるかに超える長い歴史を持つ乗り物だけに、フレームの基本形状など、根本的な部分で劇的な変化というのはなかなか起こりにくい。しかし、ロードバイクやマウンテンバイク(MTB)などはレースシーンでの影響を強く受けながら、毎年少しずつ進化している。当初は一部のメーカーだけが採用していた先鋭的な技術であっても、レースでその優位性が実証されれば、他のメーカーだって指を加えて見ているわけにはいかないからだ。こうして新しい技術はやがて各社に共有され、数年後にはひとつのトレンド、ひいては新たなカテゴリーとして成立することになる。
一方、クロスバイクに代表される街乗り向け自転車も、ユーザーのライフスタイルの変化に応じて細分化が進む。こちらはカルチャーとして、新たな楽しさをもつ自転車が続々と登場しているのだ。
ここでは、近年になって普及が進んだ新世代の自転車の概要とその魅力について解説していこう。今回はロードバイクだ。
高速巡航を得意とするエアロロード
ひと口にロードバイクといっても、実は目的ごとにさまざまな特性に作り分けられている。
アップライトなポジションと振動吸収性の高さで長距離を快適に走ることを目的とした「エンデュランス」。高剛性で軽く、あらゆるシチュエーションでレスポンスに優れる「オールラウンド」、そして平地での高速巡航性能を重視して誕生した「エアロ」ロードバイクといった具合である。
エアロロードバイクはフレームやフォークを流線型断面にすることで空気抵抗を減らし、よりラクに高い速度を維持できるというのがその特徴だ。サドルを支持するシートチューブがリアタイヤに沿うようにデザインされているのも空気抵抗を低減するためである。コースが平地基調で、ドラフティング(前走者を風よけにしてすぐ後ろを走ること)が禁止されているトライアスロンでは以前からこういった形状のバイクが用いられていたが、それが一般的なロードバイクにも広く普及したのはここ数年のことだ。
一般ユーザーはエアロの恩恵よりカッコよさが魅力?
カーボンフレームの製造技術が進化したことで、エアロフレームの弱点といわれていた剛性や乗り心地が克服されたことに加え、それまで大きなテーマだった「軽量化」が行き着くところまでいってしまったことも背景にある。ツール・ド・フランスに代表されるプロレースでは自転車の最低重量が決められているが、現在の技術では剛性などの他の要件を十分に満たしてもなお、最低重量を下回る自転車が作れるようになった。そうした中で少しでも速く走るために生み出された概念のひとつが「空力」である。もっとも、オールラウンド系の軽量モデルと比べれば、構造上エアロロードはどうしても重くなるため、斜度のきつい上り坂が連続するようなシチュエーションはやはり苦手だ。
実のところライディング中にもっとも大きな空気抵抗となっているのはバイクよりもライダー自身といわれる。筆者を含む(レースを走る訳ではない)一般ユーザーがエアロフレームによる恩恵を実感する機会はごくわずかだろう。となると、その最大の魅力はカッコいいルックスということになるが、ロードバイクという商品の特性を考えるとそれはそれで間違ってはいない。カッコよさも性能のうちだからだ。
(ライター 佐藤旅宇)
[日経トレンディネット 2016年1月18日付の記事を再構成]
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