プロ一押しはセブン、「冷凍しょうゆラーメン」対決
コンビニ食品「実食対決」
麺の色や形状にやや違いが見られる
今回のコンビニ食品実食テストは、"コスパ最強"との呼び声が高い冷凍ラーメンだ。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食テストで、コンビニ大手3社のしょうゆラーメンをチェック。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。ただし、セブンイレブンのしょうゆラーメンは、実食テスト後にリニューアルしてしまった。このため、あくまで参考情報としての掲載と考えてほしい。
実食するのは以下の3商品だ。
○ ローソン「ローソンセレクト 醤油ラーメン 1食入」(100円)
○ ファミリーマート「ファミリーマートコレクション 醤油ラーメン」(96円)
○ <参考>セブンイレブン「セブンプレミアム 具付き醤油ラーメン」(158円)
※セブンイレブンは、商品名を変えずにパッケージや中味を2015年12月にリニューアルした。価格も186円にアップしている
冷凍ラーメンは、ボイルでもレンジアップでも調理可能。ボイルの場合は、袋入りのインスタントラーメンと同様の作り方でOK。電子レンジを使用する場合は、内袋に入った麺をそのままレンジで加熱。液体スープは器に入れて熱湯と混ぜ、そこにレンジアップした麺を入れるだけ。今回はレンジで調理した冷凍ラーメンを食べ比べる。
ローソンとファミリーマートの内容量は、麺180gで同じ。具材なしのシンプルなラーメンという点も変わらない。価格はローソンとファミリーマートでそれぞれ税込み103円、108円とほぼ互角だ。ちなみにセブンイレブンの内容量も麺180g。だが唯一具入りで、リニューアル前の価格は税込み170円で、2社と比べると約1.7倍高かった。
調理前の麺を比べると特徴が見られた。ローソンとファミリーマートの麺を比べると、ローソンのほうが白いのだ。ファミリーマートは黄色味があることから、玉子麺のような味わいになっているものと思われる。実際、レンジアップ後は玉子麺のような香りが立っていた。リニューアル後は不明だが、実食テストの時点ではセブンイレブンの麺はローソンよりも白かった。
麺の太さについては、ローソンはファミリーマートよりもやや太く、中細のちぢれ麺タイプ。レンジでの加熱時間は500Wで約3分と最も短い。ファミリーマートは、細い麺なのに約6分30秒かかるので、加熱時間は麺の太さよりも麺の成分によって変わるのだろう。このことからも、麺の食感や味わいが大きく異なることが予想できる。
スープに関しては、両者ともに醤油と鶏がらをベースとしている。ファミリーマートが最も色が濃く、醤油の香りが強い。ローソンはやや色が薄いが、油は一番多く香りが高い印象だった。
スープの見た目は似ているが、味に違いはあるのだろうか? 麺の色や形状はおいしさに関係があるのか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれの冷凍醤油ラーメンの特徴を見ていこう。
スープは、ローソンは濃厚、ファミマは麺と調和
ラーメンの味の決め手はやはりスープだ。そこで、各コンビニの醤油ラーメンを、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通り。なお、分析は「スープ+麺」で行ったが、グラフはほぼスープの味であると考えて差し支えない。セブンイレブンの分析結果も参考までに掲載した。
ファミリーマートはセブンイレブンと味覚分析の結果が似ていて、棒グラフの長さもほぼ同じ。しかし、よく見ると各味覚の数値がわずかに異なる。この味覚分析の結果について、同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「(セブンイレブンは)塩加減とコクのバランスが取れた比較的あっさり系の味」だと分析する。一方のファミリーマートは、「セブンイレブンと非常に似ているが、複雑さがあって旨味が若干弱いため、麺や具との調和によってさまざまな味が感じられるかもしれない」(菅氏)と話す。
ローソンは棒グラフが一番長いことから、味が強い傾向にあることがわかった。これについて菅氏は、「特に旨味と塩味がしっかりしており、濃厚な味わいが特徴のスープ」と解説する。
では、味の印象に大きく影響する"味の両輪"、旨味と塩味のバランスについて、下図でさらに詳しく見てみよう。
改めてローソンは味が強い傾向にあることが鮮明になったはず。旨味も塩味も数値が高いことから、菅氏が濃厚なスープだと分析したことも納得できる。先味である旨味が強いので、スープを飲んだ瞬間においしさが広がっていくと予想できる。また、セブンイレブンとファミリーマートの味覚の違いも明らかになっただろう。セブンイレブンは塩味控えめ、ファミマは旨味を抑えて複雑さを立たせた味付けだと確認できた。
これらの結果を頭に入れて、プロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合った醤油ラーメンを選んでほしい。なお、プロによる実食テストの結果は、すでにリニューアルしているセブンイレブンも含めて実食テスト当日の発言をそのまま掲載する。
石神氏~圧倒的にセブンイレブンがおいしかった
ラーメンといえばこの人。さまざまなラーメンを食べてきた"ラーメン王"こと石神氏に、コンビニの冷凍しょうゆラーメンの実食をお願いした。どこのコンビニのラーメンがおいしかったのか、その順位も付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 セブンイレブン
石神氏が1位に選んだのはセブンイレブンだった。「麺がすごくいいですね。かなり歯応えがしっかりしていて、チルドよりずっと歯応えがしっかりしている」とその理由を話す。スープについても「昔ながらの東京タイプですが、コクと旨味がしっかりしている。魚介系のエキスも感じられる」と高く評価した。「麺・スープともにお店で食べるレベル。そのクオリティに比べると具は少しさみしい気はしますが、全体の味としてはよくできている」とコメント。また、この商品が税込み価格170円であることに対して、「めちゃめちゃ安いと思います。170円の味じゃないですよ」と驚いた様子。「ヘタなチェーン店より旨いんじゃないかというぐらい、すごくよくできていますね」と絶賛した。
○2位 ファミリーマート
「オーソドックスなしょうゆラーメン」と評価したファミリーマートが2位に。スープの味については「何かの素材感が突出しているわけでもなく、昔ながらの味わいです。インスタントラーメンでいうとチャルメラみたいな味かな」との感想を述べた。麺に関しては「チルドに比べると歯応えはありますが、やはり味わいは乏しいという印象ですね。小麦の味があまり感じられない」と話す。とはいえ3商品の中では一番安い点は高評価で、「税込み103円という価格を考えれば十分な味」とコメントした。
○3位 ローソン
「スープがインスタントっぽい印象を受けた」ことから3位となったローソン。「こういうスープの香りを僕らは"レトルトっぽい"と呼んでいるんですけど、そういった独特の香りがするんです。レトルトかはわかりませんが少し気になりました」と、専門店のラーメンと比べるとスープが見劣りする点に言及。また、麺に関しても「チルドよりは歯応えがありますが、お店で食べる生麺とはずいぶん食感が違います」とも。しかしながら「108円なら十分」と価格には満足していた。
「圧倒的にセブンイレブンがおいしかったですね。やっぱり価格差がてきめんに出ていて、麺とスープの"ホンモノ"感が違う。具はあまり関係なく、この価格差は麺とスープに出ていると思います。セブンイレブンの麺は小麦の食感と香りも感じられ、廉価なラーメンチェーンのものと比べてもそん色ない出来栄え。スープも素材のだし感がしっかりあって、お店で仕込んでいるような味。これが冷凍ラーメンだとは思わないんじゃないかな。とはいえ3商品とも同価格帯のカップ麺や袋麺に比べるとクオリティが高い。特にセブンイレブンは300円くらいする高級カップ麺より断然おいしく、お店で出てくる"ホンモノ"のラーメンに限りなく近いレベルだと思いますね」
はんつ氏~明らかにセブンイレブンが一番おいしい
食通集団たべあるキングのメンバーとしても活躍中のフードジャーナリスト、はんつ遠藤氏にコンビニの冷凍しょうゆラーメンの実食をお願いした。どこのコンビニのラーメンがおいしかったのか、その順位を付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 セブンイレブン
セブンイレブンを1位に選んだはんつ氏。その一番の理由は麺のクオリティで、「相当レベルの高い麺ですね。お店で食べる生麺と間違えるほど」と高評価だった。「麺にツヤがある。細いながらもコシがあって、真ん中に一本芯があってまわりが軟らかい、いわゆるアルデンテのような仕上がり。舌触りもツルッとしていて喉ごしが良い」という。スープについても、「動物系だけではなく魚介系の深みがある。しょうゆ感が濃いだけじゃなくバランスがいい。いろんな食材の旨味が溶け込んでいる上質な仕上がりです」とコメント。「具は少しさみしいですが、麺とスープだけなら低価格帯のラーメン店と比べても見劣りしない。具を変えれば、昔からある昭和のラーメン屋と同クラス。これで170円で出しているのはすごい。コストパフォーマンスがとても高いですね」と話してくれた。
○2位 ファミリーマート
はんつ氏が2位に選んだのはファミリーマート。「麺はわりとコシがあって、しなやかさもある」と話すが、セブンイレブンと比べると「コシが弱くクオリティが下がる」とのこと。スープについては「しょうゆのテイストを強めに出していて、それがコクになっている。昔ながらの淡麗な仕上がりで、また飲みたいと思わせる作りになっている」とコメント。全体的な評価としては、「袋タイプのインスタントラーメンには勝っている。100円ならいいかな」と感想を述べた。
○3位 ローソン
ローソンのしょうゆラーメンは「お店のレベルとはほど遠い」と辛口評価。「麺がぶよぶよしていてのびたような食感。しなやかさがなくブツブツと切れてしまう」とコメントした。また、スープに関しても「深みが足りない。油でごまかしている感じがします。あと10円くらいアップしてもいいので、原価を上げておいしくしてほしい」と話す。
「明らかにセブンイレブンが一番おいしい。とはいえ他の商品と1.7倍の価格差があるので、例えば1000円のラーメンと1700円のラーメンぐらい違うことになるので、おいしいのは当たり前かもしれません。でも100円と170円の価格差なら、あまり気にせずおいしいほうを選ぶと思います。ローソンとファミリーマートは、もう少し原価をかけておいしくしてくれたほうが消費者としてはうれしいかな」
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2016年1月21日付の記事を再構成]
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