なぜそこまで熱中? 外国人の「ニホンザル愛」
インバウンドサイト発 日本発見旅
日本を訪れる外国人観光客は年々増加しています。昨年(2015年)の訪日外国人数は1973万人を超えて過去最高となり、2000万人突破も目前となりました。
そんな中、スイス人の夫ステファン・シャウエッカーが運営する英語の日本情報サイト「japan-guide.com」(1996年開設)もアクセス数が増え続け、現在では月間800万~1000万のページビューを数えています。私は夫や外国人社員たちの仕事をサポートしつつ、時には一緒に取材に出かけ、彼らの目を通して日本を見直したり、日々意外な発見があることを楽しんでいます。
さて、2016年はサル年です。サルといえば外国人観光客に大人気なのが、テレビなどでおなじみの「温泉に入る野生のニホンザル」。長野県山ノ内町にある地獄谷野猿公苑で見ることができます。アメリカでは1970年に『LIFE』誌に紹介された同苑のサルの写真で、既に「スノーモンキー」として話題になっていました。
私も何度か取材で行きましたが、人間のようにホッコリと温泉につかるおサルさんたちの光景は本当に面白くて、いつまで見ていても飽きません。しかしそこには、常に日本人よりもはるかに多い外国人観光客の姿があるのです。
驚くのは彼らの滞在時間の長さ。我々の撮影も1時間近くかかるのですが、それ以上に長時間とどまっている人のなんと多いことか! 熱心に写真を撮り、サルたちの様子を本当にうれしそうに眺めていて、心から楽しんでいるのが分かります。
尋常でないほど熱中するのは、世界に類がないから
彼らがこれほどまでに熱中する理由は、「先進国の中で野生のサルが生息しているのは日本だけだから」だそうです。意外ですよね。私も数年前、夫からこの話を聞かされた時は、そんなことはないだろうと心の中で否定していました。でも調べてみたら、本当にその通りだったのです。
スペイン南部の英領ジブラルタルでも野生のサルが見られますが、それらはアフリカから連れてこられたもので、日本のように元々生息していたサルとは違います。欧米の人たちにとって、ニホンザルは本当に珍しい存在なのです。
また、サルは本来、暖かい地域にすむ動物なので、寒冷地、特に雪が降る地域で見られるスノーモンキーは、世界に類がないのだそうです。どうりで夫や社員たちが、サルについては尋常でないほどの興味を示すわけだと思いました。
以前、アメリカ人の社員が、日本に来たご両親を京都に案内した時、嵐山にある「嵐山モンキーパークいわたやま」にも行き、「すごく面白かった」と興奮気味に話していたことがありました。それに同意する夫との間で話が異様に盛り上がっているのです。
私だったら、京都では他に行きたい所がたくさんあるので、モンキーパークにはまず行かないだろうと思うのですが、彼らにとっては野生でなくてもサルを見られるのは本当に興味深い体験らしいのです。だからわざわざご両親を連れていったのですね。
私たち日本人は野生のサルと聞くと、民家や農作物への被害などのニュースも連想してしまいますが、いまや日本観光の一つの魅力になっていることは間違いありません。人間との共存もうまく図っていければと願うばかりです。
ジャパンガイド(株)取締役。群馬県生まれ。海外旅行情報誌の編集者を経て、フリーの旅行ライターとなり、取材等で訪れた国は約30カ国。1994年バンクーバーに留学。クラスメートとしてスイス人のステファン・シャウエッカーと出会い、98年に結婚。2003年、2人で日本に移住。夫の個人事業だった、日本を紹介する英語のウェブサイト「japan-guide.com」を07年にジャパンガイド株式会社として法人化。All About国際結婚ガイド、夫の著書『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)『外国人だけが知っている美しい日本』(大和書房)等の編集にも協力。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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