吉田カバンの80周年限定モデルが売り切れ続出のワケ
最新ビジネスギア情報局
2015年3月、吉田カバンは創業80周年を記念した新製品とポール・スミスやミッソーニ、アディダス オリジナルなどさまざまなブランドとのコラボレーションモデルを発表した。このほど開催された2016年春夏の製品展示会でも、80周年のラストを飾る記念モデルが多数発表された。
80周年記念モデルは、創業者吉田吉蔵氏の思いと吉田カバンが受け継いできた技術、時代に寄り添って作り上げたデザインや機能といったものを一本のラインでつなぐような製品が中心になっている。2016年春夏モデルではそうした傾向がとても顕著だ。
展示会では、吉蔵氏が開発したという、ジッパーでマチ幅が変えられる革かばんという原点に立ち帰った限定シリーズ「PORTER ELEGANT BAG」が登場。他にも限定ではないが、1995年に発表した「ゾーン」をオリジナルのムードは変えずに現在の使い方に合わせて軽量化し、使いやすさを向上したモデルなど、吉田カバンの歴史を改めて辿れる製品が発表された。
特に、上下それぞれにマチ幅を変えて使える「PORTER ELEGANT BAG」は、一つのカバンが3段階に変化する。どのフォルムでもエレガントに見えるという、ギミックとデザインの融合が見事。売り切れる前に入手したいモデルだ。
展示会では、吉蔵氏が実際に使用していた道具やその姿を再現したディスプレイ、布や革を運んでいた当時のリヤカーなどが展示され、同社の歴史とスピリットを感じさせるレイアウトになっていた。
晩年、かばん作りに復帰した吉蔵氏は製作時にはきちんとネクタイを締めていたという。その姿は現在の同社製品の佇まいにも自然に表れているように思える。
代表シリーズが思い切った限定デザインに!
ここからは、注目の吉田カバン80周年記念モデルを紹介していく。
まずはタンカーの80周年記念モデル「TANKER 80th ANNIVERSARY EDITION」。従来のタンカーの内装で使われて、タンカーを印象づけるカラーとも言えるインディアンオレンジカラーを表生地に使ったモデル。タンカーの初期モデルを中心にラインアップされた製品群は、このままレギュラー化してもよいくらいに鮮烈な色合いがなじんでいる。タンカーシリーズのデザインの元になったフライトジャケットMA-1も、リバーシブル仕様で内側のオレンジを表にすることができた。しかも、それは、パラシュートなどで脱出した際に味方に発見されやすくするため。実はミリタリー用途に基づいたカラーリングなのだ。
「PORTER GRIPPER」は、1981年に発表され、ニューヨーク・デザイナーズ・コレクティブという展示会に出展した製品の1つ。世界に吉田カバン「PORTER」の名前が認知された記念すべきシリーズだ。
80周年モデルのPORTER GRIPPERは、発表当時の3つ穴のデザインと、同一の生地の表面と裏面を場所によって使い分ける仕様はそのままに、基布をコットンサテンに変えてリニューアルした。
英国紳士的な革かばん2シリーズ
大人向けの革かばんと革小物のシリーズ「P.G.B」は、1988年に創業半世紀を記念して作られたものを元に、現代の大人向けアイテムとして甦らせたシリーズ。シリーズ名のP.G.Bは、PORTER GENTLEMAN'S BAGを略したものだ。
紳士用かばんという名前のシリーズだけあって、100%植物タンニンでなめした最高級のヌメ革として知られる栃木レザーを、スコッチグレインの型押しで英国紳士にふさわしい重厚なテイストに仕上げている。本金メッキが施された金具の光沢や滑らかな開閉のエクセラファスナー、経年変化を楽しめるレザー、コバ(カバンの縁取り部分)の磨きなど、これでもかというほどのこだわりを備えた大人の持ち物にふさわしいでき栄えだ。
英国の音楽学校で、表に金具を付けないことで、一緒に持ち歩く楽器ケースを傷つけずにすむ楽譜入れとして使われていた「ミュージックバッグ」を、吉田カバンのテイストでドレッシーな革かばんに仕立てたのが「PORTER MUSIC CASE」。筆者もMサイズを購入したのだが、カジュアルにもパーティーなどにも使えるコンパクトで使い勝手の良い革かばんはなかなか他にはないので重宝している。
吉田カバンらしい、粋な素材使いが魅力
「YOSHIDA WILL」は、薄手の革にアルミシートを貼り合わせており、その微妙な凹凸が革の表面に独特の表情を与えるという趣向のシリーズ。起毛ヌバック仕上げの革と本金メッキのパーツを合わせたゴージャスなムードのものと、ソリッドに仕上げた革にニッケルメッキのパーツを合わせたクールなムードのものの2種類が用意されている。軽量で柔らかい薄手の革だが、ハリのあるアルミ素材のおかげで自立するのも、このシリーズの魅力。
「PORTER ATTACHE CASE」は、伝統的な革製のアタッシェケースを現代的な解釈で製作したもの。桐の木枠に上質なキップスキンというオーソドックスな外装に、インディアンオレンジのタンカーの生地を内装に使うという大胆なデザインが80周年記念モデルにふさわしい。スイス製のダイヤル錠、イタリア製のステー金具などディテールにも凝っている。13インチのノートパソコンの収納に対応しつつ、マチ幅は極力薄くしたビジネスバッグサイズのものと、女性がパーティーやデートで使えるコンパクトなサイズの2種というのも、記念モデルらしい思い切ったラインアップだ。
異業種とのコラボで誕生した大人な小物たち
カバンの他に、老舗傘メーカーの前原光榮商店 とPORTERのコラボによる折りたたみ傘「FOLDING UMBRELLA WITH COVER」や、陶芸家の青木良太氏とのコラボによる酒杯とケースのセット「GOLD & SILVER SAKE CUP with SPECIAL CASE」などの、異業種コラボレーションによる記念アイテムも多数発表。
吉田カバンの得意な分野を上手く使った、正しく「コラボレーション」している製品で、どれも物欲をそそる。
2016年春夏に発売される限定モデルも含め、すべて売り切れたら入手不可能な商品。すでに売り切れ間近のものもある。かなり思い切った趣向のものが多いので、欲しいアイテムはなるべく早めに手に入れることをオススメする。
(ライター 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2016年1月8日付の記事を再構成]
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