耐震・免震・制震 メリット・デメリットを知る不動産コンサルタント 長嶋修

台湾南部で6日午前に発生したマグニチュード(M)6.4の地震で倒壊したマンションの中には、柱の中に一斗缶が埋まっているのが見つかるなど、建築プロセスに疑問の残る物が見られた。こうしたずさんな工事は論外だが、日本の建築物と比べるとずいぶんと異なる鉄筋の太さや数、露出したコンクリートのもろさなどに驚いた人も多いのではないだろうか。

大地震のたびに見直される耐震基準

台湾の耐震基準は現在、大ざっぱにいえば日本の0.7~0.8程度。1974年に日本の旧耐震基準の0.5程度で設定されたあと、98年に新耐震基準を設定。中程度の地震なら無傷、大地震でも倒壊しないレベルに引き上げられた。翌99年の台湾中部大地震でさらに修正が入り、現行基準となった。

日本でも大地震があるたびに建築基準法が見直され、世界的に見ても地震対策は進んでいるが、地震という自然がもたらす災害を完全にハードだけでカバーするのは、どんな技術をもっても難しいということを理解したい。

マンションにおいては現在、通常の耐震構造に加えて、建物の揺れを軽減する免震構造や制震構造を採用する物件が増えている。仕組みを簡単にいえば、耐震が文字通り「地震に耐える」構造なのに対して、免震は「地震を免れる」構造であり、制震は「地震を制御する」構造だといえる。

免震や制震は、大きな地震のときに揺れを吸収して人や建物の被害を小さく抑える効果がある。今回の地震でも免震・制震ビルは、揺れの加速度や揺れ幅を数割程度抑える効果を発揮したとされる。以下個別に詳説しよう。

耐震構造とは柱や梁(はり)、壁など建物を支える部分を頑丈に造ることによって、地震が起こっても崩れたり倒れたりしないような構造を指す。現在の新耐震基準では震度6強~7程度、つまり阪神大震災レベルの地震が起きても、建物の構造部分の倒壊・損壊がなく、潰れて人が下敷きになって亡くなることがないことを目標にしている。

一般に、大地震に見舞われたときの耐震構造の主な特徴や注意点として、次のような点が指摘される。

■耐震構造の特徴と注意点
・揺れが激しく、特に建物の上部ほど激しく揺れる
・建物の倒壊、損壊はないが、損傷する恐れがある
・繰り返しの揺れで建物の破壊が増していく恐れがある
・震災後の修繕にコストがかかる恐れがある

建物は高さや構造などで揺れの固有周期に違いがある。この建物の持つ固有周期が、地震による揺れ方に違いをもたらす。

一般に、大地震のとき、中低層建物は固有周期が短く、揺れ幅が小さいものの、カタカタと小刻みに激しく揺れる特徴がある。一方、高層建物は固有周期が長く、大地震に襲われると柳の枝がしなるように、大きくゆったりと揺れる特徴がある。

そうやって地震の揺れの力をうまく逃がす柔構造になっているのだが、上層階ほど長く大きな揺れに見舞われることになる。建物が大きく揺れて室内の家具が倒れて食器などが散乱する危険があるので、家具を固定したり食器が飛び出しにくい棚を設置したりするなどの対策が必要だ。

免震構造は周期を長くする

免震構造とは基礎と建物との間に免震装置を設置する構造。地震の際、この免震装置が変形して、激しい揺れをゆっくりとした揺れに変え、人や建物の被害を少なくする。専門的な言い方をするなら、免震装置により建物の固有周期を2~5秒程度の長い周期領域に移して、地震のエネルギーを吸収するとともに、揺れが建物に直接そのまま伝わらないようにしている。

基礎の上に建物が直接建っているのが耐震構造であり、免震構造は基礎の上に免震装置があり、その上に建物が載っている。

免震装置で代表的なのは「鉛プラグ入り積層ゴム」といい、板状のゴムと鋼板とが交互に何枚も積み重ねられているもの。また、高層建物や軟弱地盤にも効果的とされるのが「弾性すべり支承」だ。他にもいろいろな装置が開発されている。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし