首都圏の「火葬場不足」現実に、「友引」の稼働も増加130万人のピリオド(2)

火葬場の不足が現実になってきた。首都圏では時間帯によっては遺族が長期間火葬を待たされる。これまで閉めていた「友引」に開け、火葬時間の枠を広げる施設が出ている。迷惑施設ではなく、市民が納得して新設しようという動きもある。多くの人が亡くなる社会に合わせて、変化を求められている。

1月下旬の友引、東京都大田区にある臨海斎場は上限の7割を超す21体の遺体を火葬した。古巻祐介事務局長は「友引の葬式を避ける人は多いが、火葬場の友引の稼働率は年々上がる。年間平均で59%。他の日は70%台なので、だいぶ近づいた」と話す。

八王子市斎場(東京都八王子市)は年末年始、試験的に友引の火葬を受け付けた。枠はすべて埋まった。「1年を通じた友引開場を本格的に考えたい」(同斎場)。馬込斎場(千葉県船橋市)は「数年後に稼働するか検討中」。首都圏以外では八事斎場(名古屋市)が2011年から友引も開場する。

首都圏にいる地元出身者の利用を呼びかけている小松加賀斎場(石川県小松市)

友を引くので縁起が悪いとして葬儀や火葬を敬遠してきた地域は多い。しかし、そうも言っていられない。国内の死亡者数は推計で、39年には15年の3割増の167万人と最多になる。首都圏では5割増を超す自治体が目立つ。

「残暑のためドライアイスをたくさん使って火葬を待った。それでも故人の顔色が悪くなり、つらかった」。14年秋に70代で亡くなった男性の親族は話す。死後すぐに神奈川県内の火葬場に予約の連絡を入れたが、火葬できたのは5日後だった。

この男性の場合、葬式は自宅でしたため火葬のみの予約だった。都内の葬祭業者は「公営斎場で通夜と告別式を一緒にすれば1週間から10日待ちもある」と話す。一般社団法人、火葬研(東京都千代田区)の武田至副会長は「朝や夕方近くは比較的余裕はあるが、正午あたりの混雑が大きな課題」と指摘する。

現場では増える火葬にどう対応するか、模索が続く。東京都町田市にある南多摩斎場は14年、1日に火葬できる遺体の数を17から20に引き上げた。昨年は朝9時、10時台の対応枠を広げ、27までになった。職員は計3人増やした。同斎場組合の事務局長は「今後も件数は増える。これで対応が終わりではない。さらに考えなくては」と話す。

相模原市は火葬場の新設を計画する。人口は70万人超に急増し、10年には政令市になった。市の予測では、15年に約5千件だった市民の火葬件数は27年に7500件と能力の限界になる。現火葬場は市東部にあり西部の住民には不便だ。火葬場新設に反対運動が起きるのは常だが、市民の声を取り入れて活路を探る。

「市役所全体で計画に取り組んでいる姿が見えない」「費用をもっと明確にできないのか」――。1月下旬に候補地の津久井地域で市民代表の意見を聞く3回目の会合を開いた。市が示した複数の用地案に対し、参加者からは厳しい意見が飛び、担当者が答える。担当者は「市全体と立地地区のどちらにも利点があるよう、住民と一緒に考える」という。

首都圏の火葬場の混雑を避けて、地方の施設を利用してもらおうという取り組みが始まった。小松加賀斎場さざなみ(石川県小松市)は地元出身者が首都圏で亡くなった場合、火葬を受け入れる。昨年秋に県人会会員に「お葬式はふるさとで」と題した案内チラシを配った。受け入れの流れや地元の葬祭業者の連絡先を載せている。

同斎場は小松空港から車で約7分の場所にある。角谷政幸事務局長は「東京の羽田空港からひつぎを空輸する費用、親族の移動費などもかかる。ただ火葬まで長期間、霊安室を借りる費用などを考えれば選択肢のひとつになるはず」と説明する。

和田慎司・小松市長の発案で始まった。首都圏では葬儀への参加者数が少なめで、故人と地域とのつながりが見えにくいと感じていた。「火葬場不足への提案というだけでなく、遺族は故人のルーツを感じながら見送れる。ふるさとにある施設を柔軟に活用してほしい」と和田市長は話している。

増える家族葬や「直葬」、葬儀のあり方考える好機

都市部を中心に家族・近親者での葬儀が増え、会葬者が減っている。相模原市営斎場の場合、1組当たりの平均会葬者数は5年間で2割強減った。「以前よくあった200人規模の式は今、月に3件あるかないか」(南多摩斎場)。ホールや遺族控室を小型に改修する火葬場は多い。

通夜や葬式をせずに火葬場に遺体を運ぶ「直葬」の増加も最近の傾向だ。都内の斎場責任者は「式をしない分、火葬前の告別の時間がかかる例がある。次の火葬との時間調整で苦労する」。過密状態の中、遺族に配慮する職員の負担感は大きい。

第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の小谷みどり主任研究員は「火葬が昼に集中するのは通夜、告別式、火葬という流れが固定化している面が大きい。葬送のあり方が多様化することを、火葬時間の分散などにうまくつなげることが大事では」と話す。(高田哲生)