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その相続税申告が税務署から狙われる 編集委員 後藤直久

2016/2/6

2015年1月から相続税の増税がスタートして早くも1年たった。基礎控除(非課税枠)が「3000万円+600万円×法定相続人の数」と、一昨年までの「5000万円+1000万円×法定相続人の数」に比べ40%も縮小。この結果、東京、大阪、名古屋など都市部に自宅を保有する中流層にも相続税がかかる人が増えており、実際に相続税の申告をするケースが相次いでいる。

■複雑で膨大な申告書類

ただ、毎年申告する人も多い所得税と比べ、相続税は申告書の枚数が20枚以上と多く、書き込む中身も複雑だ。誤って記入したり、申告漏れをしたりすれば後日、税務署から指摘されたり、場合によっては税務署員が実際に相続人のもとを訪れて調べる「税務調査」の対象になりかねない。

そこで相続税の申告をする際に間違いやすい点や税務調査の対象になりやすいポイントをまとめてみた。参考にしてほしい。

まず相続税の大まかな仕組みを頭に入れよう(図A参照)。

相続税は被相続人(死亡した人)の財産を相続や遺贈(遺言による贈与)で取得した人にかかる税金。課税の流れは最初に相続や遺贈で取得した土地、現預金、株式といった財産を金額換算する。

例えば土地は路線価に基づいて計算し、建物は固定資産税評価額を使う。こうして計算した財産額から被相続人の債務や葬式費用を差し引く。これが「遺産総額」で、相続税はこの遺産総額が基礎控除額を超える場合に課税される。基礎控除以下の場合はかからない。

次に基礎控除を差し引いた金額をもとに相続税の総額を計算する。各相続人の税額は具体的な相続分に応じて案分する。

■随所にある「落とし穴」

相続税の申告をする際に税務署から「見落としている」「間違っている」と指摘されがちな点は、課税の流れの随所にある(表B参照)。

まず多いのは相続財産に関する間違い。特に目立つのは「名義預金」の申告漏れだ。名義預金とは相続人の名義になっているが、入出金などの管理の状況から見て被相続人の財産に含める必要がある預金のこと。現在は口座の本人確認が厳格なので、両親が子供名義の口座を作るのは困難だが、昔作った子供や孫の口座におカネをためている両親や祖父母は少なくない。

相続開始後、子供や孫が「これは贈与されたものだ」と主張しても、例えば取引に使う印鑑が被相続人のものだったり、税務署から指摘されるまで存在を知らなかった口座だったりすると税務署は「名義預金」として相続財産に加える。税務署は名義預金による申告漏れに神経質なので申告の際には注意したいところだ。

意外に多いのが、葬儀用に引き出した被相続人の預金の使い残しを申告し忘れるケースである。使い残しと言っても、もともとは被相続人の預金だから、忘れずに申告する必要がある。このほか被相続人が利用していた有料老人ホームの入居一時金の返還分、死亡保険金のうち非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超えた部分も見落としがちなので注意したい。

あと相続財産で忘れがちなのは被相続人が借地に住んでいたのに借地権を申告していないケース。借地には土地全体の一定割合(借地権割合)分の価値があり、相続財産となるので借地に住んでいる人は注意したい。

預貯金は相続開始時点の残高の申告が必要なのに、相続開始からだいぶ経過した後の残高を申告する例もあるので注意が必要だ。

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