「最後の1軒」が守った伝統のお茶やお酒
ニッポンのうまいもの
四国山地の山懐に位置する高知県大豊町。ここでは毎年夏の終わりになると、黒光りする茶葉を干す光景が見られる。むしろの上に敷き詰められたさまが碁石のように見えることから、「碁石茶」の名が付いたといわれている。
四国山奥の秘茶、2段発酵で熟成の味わい
発祥は定かではないが、ルーツは中国・雲南省の「酸茶」といわれ、江戸後期の文献にも記述が見られる由緒正しいお茶だ。しかし、昭和50年代に生産者が1戸にまで減少。伝承者6代目の小笠原章富氏が、製法などをすべて周辺農家に伝えることで、通販で取り寄せができるほどにまで復活した。
カビ付け、乳酸発酵という独特の2段階の発酵を経ることで見た目にもユニークな四角い茶葉が完成する。味もユニーク。酸味があるというと抵抗を感じるかもしれないが、非常にまろやかでスッキリとした味わいだ。ホットでもアイスでも独特の風味を楽しめる。
奈良に伝わるみりん酒、ほのかに甘い口当たり
ほんのり甘いみりん酒に、雪のような白いこうじが浮かぶ―。奈良に古くから伝わる「あられ酒」も、今や製造業者は今西清兵衛商店の1社のみという希少な飲料だ。すっきりとした口当たりのみりん酒に、麹米を焼酎に漬けてふやかした"あられ"が浮かぶ。
砂糖が貴重な品だった時代、糖度の高いみりんは調味料ではなく、嗜好品として親しまれていた。奈良の貴族にも好む人が多く、焼酎に漬け込んで作る白いこうじは、見た目の華やかさを演出するために入れられるようになったという。
今西清兵衛商店では、1884(明治17)年からあられ酒の製造を開始。昔からの姿を受け継ぎ、容器もヒョウタン形だ。基本的には伝統的に伝わる製法を取り入れつつ、調味料としてのみりんと比べると、さっぱりとして飲みやすい甘さとなるように醸造している。こうじの風味も感じる、和風のリキュールといった趣だ。炭酸で割ると、さらに飲みやすくなった。
コーヒー栽培の北限、沖縄で生産
沖縄の名護珈琲は、珍しい国産コーヒー。コーヒー栽培は北緯約25度~南緯約25度のエリア内が適するといわれ、沖縄はその北限に当たる。コクと香りは感じるが、苦みやクセは少ないので何杯も飲める。
酒かすが香り立つ甘酒風牛乳
北海道のすすきの浪花亭が作る「雪ミルク」は酒粕を非常に細かくこして、牛乳に混ぜ合わせた甘酒風の飲料。酒かすの香りが立っているが、口に含むと濃厚で甘みの強いミルクの風味が広がる。和洋折衷の飲むスイーツといった印象だ。アルコール分は含まないので、子供でも飲める。
飼育数の少ない牛のミルク、コクあり滑らか
大分県のくじゅう高原ガンジー牧場が作る希少なガンジー牛の牛乳。ガンジー牛は飼育数が全国で200頭程度という。一般的な牛乳の乳脂肪分が3%程度なのに対し、ガンジー牛乳は約4.5%。他の成分も高くコクがあるが、舌触りはさらっとしてクセも少ない。「おためしセット」はガンジー牛乳(900mL)1本とヨーグルト6個がセット。
東北発! 素材を味わう100%ジュース
岩手の「黄色いトマトジュース」は黄色いミニトマト「イエローアイコ」のみを使用。トマト特有の酸味や香りは控えめで、フルーツのような甘みが特徴のトマトだ。一度冷凍して味を凝縮させた後に加工している。
宮城の「ストロベリーピュア100」は収穫した完熟イチゴをその日のうちに加工して冷蔵保存したもの。これを月2回、注文を受けた分だけ瓶に詰めて発送する。酸味と甘さが際立つが、喉越しは滑らかに仕上がっている。
山形の「さくらんぼ佐藤錦100%ジュース」は佐藤錦の生みの親である佐藤栄助氏の子孫が経営する会社が販売している。完熟した実を加工しており、佐藤錦の程よい酸味とほのかな甘みが口に広がる。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2015年11月号の記事を再構成]
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