預金金利・住宅ローン… マイナス金利でこうなる

日銀のマイナス金利政策の決定を受けて個人の資産運用や家計運営は見直しを迫られそうだ。預金など元本確保型の金融商品を中心に金利の低下は避けられず、個人の資産運用はこれまで以上に難しくなる。株式や外貨建て商品を含め、長期の視点で資産形成を考える重要性が増している。

家計にとってまず気になるのが預金金利が今後どこまで下がるかだ。大手銀行の普通預金金利は現行0.02%。日銀の追加緩和の発表後ソニー銀行が0.001%に引き下げるなど、今でもゼロ近辺にある金利水準が一段と下がる可能性が高い。

預金金利のマイナス転落を不安に思う人もいるだろう。残高に応じて一定比率を口座から引き去る可能性だ。マイナス金利導入で先行する欧州では数年前から一部の銀行が機関投資家向けの預金でマイナス金利を課している。

ただし日本で個人向け預金の金利が「マイナスになることはまず考えられない」(大手銀行)。預金者への衝撃が大きすぎて取り付け騒ぎにつながりかねないためだ。銀行が収益悪化を顧客に転嫁する方法として考えられるのが各種手数料の引き上げや導入。例えば残高が一定以下だと口座管理料をとる銀行は海外では珍しくない。

預金に限らず、元本の安全性が高く金融資産の中核となる金利型商品はほぼ例外なくゼロ金利に近づきそうだ。中、今後の見通しの「↓」は、足元の市場金利低下で自動的に利回りが下がることを意味する。一例が公社債投資信託の一種で残高が約11兆円あるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)。組み入れ対象の短期国債の流通利回りはマイナスが常態化し、運用を維持するのさえ難しい。

より大きな影響を受けそうなのが長期の貯蓄性商品だ。基準となる長期国債利回りの低下が急ピッチ。2日入札された新発10年物国債の平均落札利回りは0.078%と過去最低を更新した。

これを受けて3日に決まった個人向け国債・10年変動型の初回利率は、商品設計上の下限である0.05%に下がった。5年固定や3年固定の金利は1月募集分がすでに下限に張り付いている。

保険料収入の多くを国債で運用する生命保険会社への打撃も大きい。契約者に約束する予定利率は今後、引き下げ検討が不可避。一時払い終身保険や学資保険など「比較的高い利回りの商品を中心に販売停止が相次ぎそうだ」とファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏はみる。

全般的な金利低下を受けて「貯蓄性商品での運用は打つ手が限られるようになった」とFPの前川貢氏は指摘する。当面の資産の置き場としてFPから挙がったのが個人向け国債だ。下限金利0.05%が相対的に魅力的になるというのが理由だ。半年ごとに金利が見直される10年変動型なら金利が将来上がっても対応できる。発行後1年たてば元本での換金も可能だ。

インターネット専業銀行などが扱うネット専用の定期預金も選択肢。高めの金利が引き下げられる前に預ければ一定期間の利息を確保できる。運用環境が将来変化したときに機動的に運用を見直せるよう、元本以上で換金できる商品を選ぶのも重要と専門家は指摘している。

今後は株式や外貨建て資産などリスク資産に目を向けるのも大事になる。その場合、一気に資産を増やそうと欲張らず、自分の許容リスクを認識したうえで余裕資金の範囲内で分散するのが鉄則だ。株式などは値動きが大きく元本割れリスクがあるため「選別眼を磨くのが一段と大切になる」(FPの福田啓太氏)。

一方、金利低下で恩恵があるのは住宅ローン。すでに金利は歴史的な低水準で低下余地は限られそうだが、借り換えで金利負担を下げる利点もある。(長岡良幸)

■ネット定期に駆け込みも
ファイナンシャルプランナー 深野康彦氏
マイナス金利の導入決定を受けて預金金利を引き下げた銀行はまだ一部で、今後、引き下げが相次ぐ可能性がある。当面の防衛策としてはネット銀行などで金利をまだ高く設定している定期預金に駆け込みで預けるのも一案だ。
住宅ローンの金利は下がる余地があるが、新規に住宅を購入する人にプラスとは限らない。不動産価格が全般に上昇しているため、住宅購入のトータルのコストは軽くならない可能性がある。メリットがあるのは既に住宅ローンを借りている層だろう。より低い金利に借り換えれば、返済負担の軽減につながる。
■外貨建ての商品も選択肢
ファイナンシャルプランナー 福田啓太氏
日銀のマイナス金利導入は、実質的に円安誘導が狙いとみている。円安が続けば輸入品の物価が上昇し、家計を圧迫する可能性が高い。これをカバーする手段の一つは外貨建ての資産だ。運用する資産がある程度あれば外貨建ての保険商品などが選択肢になるだろう。
日銀の金融緩和策はいずれ終わりが来る。金利の上昇やインフレへの備えも必要だろう。外貨建ての資産のほか、株式も選択肢になる。海外で稼げる企業や国内で圧倒的なシェアを持つ企業など長期的な成長を見込める銘柄を探したい。財務体質が良好で、指標面で割高でない銘柄は意外に多い。

[日本経済新聞朝刊2016年2月3日付]

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