遺留分が消える 信託ならできる特殊な資産承継弁護士 遠藤英嗣

Sさんは預地を管理する法人を設立、法人を受託者にし、自らを受益者とする信託契約を設定しました。Sさんが死亡後は、相続人である長男Aさんが元本受益権を取得します。そして、長男Aさんが死亡すると、今度はSさんがあらかじめ指定した受益権の新たな受益者Cさん(Aさんの長男)が第3受益者となります。さらに、Cさんが亡くなると、やはり、Sさんが指定しておいたEさん(Cさんの長男)が第4受益者になるのです。

受益権が逆流

まるで滝が逆流して水が上っていくように、受益者が死亡すると、受益権はいったんSさんの元に戻るというのがポイントです。

ただ、Sさんから長男Aさんへ相続、つまり第1次相続については、長女Bさんに遺留分の権利が生じます(当然、妻のYさんにも遺留分の権利はありますが、Yさんは家督相続に賛成しているため、ここでは考えないことにします)。しかし、その後の第2次相続以降は、遺留分の権利は生じません。

Aさんが死亡すると、受益権はいったんSさんに戻るため、Aさんの子供に遺留分を請求することはできなくなるのです。長男AさんからAさんの長男Cさん、そしてCさんの長男Eさんへ、遺留分を考えずに家督承継ができる仕組みが作れるわけです。

先ほども書いたように、Sさんの長女Bさんには遺留分を請求する権利があるため、このケースでは、本来、Bさんには遺留分に相当する収益受益権を与え、Bさんが死亡したときにこれをSさんに戻すという仕組みが一般的です。この事例では、すでにBさんに自宅敷地を無償貸与しているため、この土地と金融資産を相続させることで解決しました。

このように先祖代々受け継いできた土地については、分割相続はせず、長男もしくは長女が受け継いでいくというルールを持つ家もあります。その際、この後継ぎ遺贈型受益者連続信託を使うのも、一つの手段といえます。ただ、この信託を使うには期間等のルールがありますので、専門家に相談して活用してほしいと思います。

1971年法務省検事に就任。高松地方検察庁検事正などを歴任し、2004年に退官。05年公証人となり、15年に退官。公証人として作成した遺言公正証書は二千数百件に及ぶ。15年に公証人を退官し弁護士登録。日本成年後見法学会常務理事を務めるほか、野村資産承継研究所研究理事として税務の専門家と連携して、資産の管理・検証などを研究する。主な著書に「増補 新しい家族信託」(日本加除出版)、「高齢者を支える市民・家族による『新しい地域後見人制度』」(同)などがある。
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