不要な保険が教えてくれる2つのキーワード保険コンサルタント 後田亨

ある保険代理店の人とお会いした際、「不要だと思う保険および特約」が話題になりました。私は次の3つを挙げました。

(1)「生存給付金」つきの保険

(2)「短期間」の入院保障

(3)「災害割り増し」など死亡保険金の上乗せ保障

まず(1)は、「医療保険」で「3年ごとに15万のボーナスが受け取れる」と案内しているような保険です。入院時の保障という保険の本来の目的とは関係がないと思うのです。

同じ保障内容でボーナスがない商品と比べると、実は、加入者が3年間で15万円近い額、つまりボーナスとほぼ同額の保険料を多く支払う仕組みなのです。給付金のことを「ボーナス」や「お祝い金」などと呼ぶのはおかしいと思います。

一方、例えば、入院保障の必要性に疑問を感じ解約を検討しながらも「ボーナスがもらえる時期まで契約を続けようか」と考えてしまう加入者がいるのも残念に感じます。生存給付金は、保険会社からのプレゼントでもなんでもないのだ、という事実を強調しておきます。

次に(2)短期間の入院保障です。例えば、5日未満の入院なら日帰り入院(入院日と退院日が同一の入院)の場合でも、一律で「入院給付金日額×5日分」が支払われるような保障が本当に必要だろうかと思うのです。

日額5000円コースであれば2万5000円、1万円コースでも5万円です。「短期入院もしっかり保障」と書かれている保険会社のパンフレットなどを見ると、2万5000円や5万円程度の給付があることが「しっかりした保障」なのだろうか、と疑問に思います。

実際、保険業界やメディアの中にも「5日分の保障などバカバカしいと思う」と発言する人は少なくありません。にもかかわらず、短期入院保障の存在がアピールされるのは、「1日で退院しても5日分の給付があるのはお得な気がする」と反応する消費者が少なからずいるからでしょう。

「保険は数万円のお金をもらい損なわないようにするためにあるのでしょうか?」「数万円のお金について『悔しい思い』をしないために保険に入るのでしょうか?」と、消費者には何度でも問いたいと思います。

それから、事故などで死亡した場合、死亡保険金が上乗せされるような保障も必要性が低いと考えます。死因によって遺族に残すべきお金の額が変動するとは考えにくいからです。さまざまなオプションを足していくと保険料は上がりますから、販売側からするとありがたいものなのかもしれませんが、やはり存在意義がよくわからない保障だと感じます。

ちなみに代理店の人は、「生存給付金」に関しては「それで喜ぶ人もいるのだから、いいのではないか」という意見でした。むしろ、彼が強く疑問視していたのは、銀行で販売されている「投資信託などで運用する保険」でした。変額個人年金保険や変額終身保険です。「仕組みが複雑だし、運用目当てであれば投資信託を買うほうが有利なはずだ。リスク商品なのに、保険という名称から、妙な安心感を持つ人がいたら困る」というのです。同感です。

今回、不要な保険について考えたことによって改めて確認できたのは、「保険は何のためにあるのか」ということでした。キーワードは「緊急」「高額」だと思います。

例えば、小さな子供がいる世帯主にきょうあすに万が一のことがあった場合、子供が社会人になるまでの生活資金に困ってしまうという遺族は多いでしょう。そのような事態への備えには保険が適しているはずです。地道に貯蓄を殖やしていても間に合わないからです。

しかし、数万円の入院給付金、数年後あるいは十数年後に払い戻しされる積立金や投資による運用の成果は、保険の仕組みに頼らなくても準備する方法はあります。読者の皆さんが、加入中あるいは検討中の保険の必要性について再考する際には、「緊急」「高額」という2つのキーワードに留意してみてほしいと思います。

後田亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

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