超高齢化がもたらす生保の請求漏れ 対応急ぐ業界

日経マネー

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契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、高齢化に伴いせっかく契約した生命保険の請求手続きが難しくなっている現状に対する、業界各社の取り組みについて見ていこう。

生命保険は長期に渡る契約が多い。加入時には保障内容を把握していても、時の経過とともに記憶は薄れ、請求できる場面になっても手続きができず、せっかくの契約が活用されない可能性は高い。

2013年6月、生命保険協会(以下、生保協会)は報告書『超高齢社会における生命保険サービスについて』を取りまとめて、高齢者対応に関する課題として次の3点を挙げている。

(1)手続きリスク
(2)手続きリスクの未然防止
(3)高齢者に配慮した顧客対応

(1)については、顧客と保険会社双方の問題を指摘している。前者は「加齢により意思確認が困難」「住所不明」「手続きを代理する人の不在」などによる手続き不能と手続きの長期化だ。後者は高齢化の進展に伴う手続き件数の大幅増加を指す。

(2)についても双方からのアプローチが必要だ。例えば、顧客は「転居の際に保険会社に通知を忘れない」「契約内容などを家族に伝えておく」といった具合である。保険会社は契約者の同意を得た上で家族への契約内容の周知や、契約者以外の複数の住所登録など、住所管理の高度化が求められる。

(3)については、書類の分かりやすさ、リテラシー向上に向けた継続的取り組みが重要になる。

生保協会は『高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン』を14年10月に発表した。これを受け、各社は対応を進めてきた。ここでは明治安田生命による先進的な事例を見てみよう。

【14年10月『MY安心ファミリー登録制度』創設】

契約者以外の連絡先(第2連絡先)を登録し、会社からの案内が不達の場合や大規模災害等が発生して連絡が困難になった場合などに活用する制度である。24万人が登録し、うち65歳以上は8万人だという(15年12月現在)。

【14年12月『ご高齢者へのアフターフォロー態勢の高度化』発表】

高齢者の請求確認を強化し、支社・営業所の約3万5000人によるフォロー体制を実施する。例えば、顧客から保険金・給付金の請求が発生すると、他に請求可能なものがないかを調査・確認する。

【15年4月『MY長寿ご契約点検制度』開始】

満年齢で77歳(喜寿)・90歳(卒寿)・99歳(白寿)・108歳(茶寿)・111歳(皇寿)を迎えた顧客に、誕生月の前月に『MY長寿ご契約点検制度のお知らせ』(返信葉書付き)を送る。返信がなかった顧客には電話をかけ、それでも確認できない場合、77歳の顧客には葉書を再送、他の年齢の顧客には職員が直接訪問する。

15年4月から7月に送ったお知らせ分では、返信葉書やコミュニケーションセンターからの電話で、約9割の顧客の確認が取れた。その後、住民票の確認や訪問により、はがきを郵送したほぼ全ての顧客の確認が完了したという。

他にも、第一生命はヤマト運輸と組んで高齢化問題の解決に乗り出している。ヤマトは自治体と連携し、買い物支援と高齢者の見守りを兼ねた事業を数年前から展開してきた。両社の連携はそのノウハウを活用したものである。

近隣に第一生命の営業所がなく、職員の定期訪問が難しい顧客宅に、セールスドライバーが第一生命からの案内などを届け、配達状況をフィードバックする。

生保協会のガイドラインでは、郵送やネットなど対面以外の方法による募集も改善を求めている。これらのチャネルでも終身に渡る契約が多く販売されており、高齢者対応は必須だ。今後の取り組みに注目したい。

内藤眞弓(ないとう・まゆみ)
生活設計塾クルー。13年間の大手生命保険会社勤務の後、FPとして独立。生活設計塾クルー取締役を務める。『医療保険はすぐやめなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。一般社団法人FP&コミュニティ・カフェ代表。

[日経マネー2016年3月号の記事を再構成]

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