見落としがちな火災保険の水災補償 補償範囲に差

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契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、火災保険とセットで提供される水災補償について見ていこう。

 2015年9月の関東・東北豪雨は、各地に甚大な被害を及ぼした。鬼怒川をはじめ19の河川で堤防が決壊、61の河川が氾濫。住宅流失や損壊などの他、2万棟近くの住宅が浸水するなど著しい被害が生じ、災害救助法が適用された市や町は26に及んでいる。

 災害救助法が適用されると、避難所の設置や衣食住など、命を守るために必要な最低限の支援は当座確保される。問題はその後だ。自宅が流失するといった深刻な被害を受けた場合でも、住宅は原則として自力再建・修繕が求められる。

 全壊などとなった世帯に給付される被災者生活再建支援制度の支援金は最大300万円にすぎない。住宅ローンを返済中で、貯蓄も心もとない場合、被災後の生活再建には相当な困難が伴う。

 こうした最悪の事態を回避するためには、火災保険が有効である。火災保険における水災とは、洪水や土砂災害、高潮などを指し、これらにより住宅などが床上浸水、倒壊、流失といった損害を受けた時に保険金が支払われる。

契約により補償が異なる

 言うまでもないが、水災補償がセットされた火災保険でないと保険金は受け取れない。必ずしも水災補償が付帯されているとは限らず、付帯している場合でも商品や契約によりカバー内容は異なる。

 ずいぶん前に契約した長期火災保険では、損害の全額が補償されない可能性もある。例えば、住宅総合保険や以前に契約した特約火災保険(住宅金融公庫=現住宅金融支援機構=で融資を受けた際に加入する火災保険)は、最大でも火災保険金額の7割までの補償となる場合がある。

 つまり、3000万円の一戸建てが洪水により流失した場合でも、受け取れる保険金は2100万円となり、水災保険金だけで原状回復はできない。長らく確認していない人は要注意だろう。

 現在取り扱われている火災保険では、概ね建物価額の30%以上の大きな損害が生じた場合には損害額に見合った保険金が、それに満たない小さめの損害には、あらかじめ定められた2段階の保険金が支払われるものが一般的だ。また、損害の程度を問わず実損額をカバーする商品もある。

 一方、生活協同組合が取り扱う火災共済も水災をカバーするが、保障は小さめなので要注意だ。

 「新型火災共済」(都道府県民共済)は、見舞金での対応となり、10万円超の被害に対し、加入額に応じた風水害等見舞共済金(床上浸水は最大300万円)は最大600万円。「住まいる共済」(全労済)は、新自然災害共済をセットした場合でも、損害額に応じて火災共済金額の最大8割程度の風水害等共済金となり、いずれも損害の全額はカバーできない。

 国土交通省や自治体が公開しているハザードマップで浸水が想定される地域に住んでいる場合はもちろん、住宅ローン残債があり、貯蓄が十分でないなら、可能な限り水災に手厚い商品を選ぶべきだ。

どこでも起こり得る

 今回のような水害は特定の地域における特別な事象ではなく、「日本中どこでも起き得る」と複数の専門家が指摘している。今回の大雨を降らせた積乱雲の連なり(線状降水帯)が居座る危険は、どの上空にもあるからだ。

 水害は他人事ではない。マンション高層階など一部を除き、水災補償はもはやマストアイテムだろう。自宅の火災保険について、水災補償の有無および補償が十分かどうか、この機会にしっかりと確認してほしい。

清水香(しみず・かおり)
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2015年12月号の記事を再構成]

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