ベイスターズが描くハマスタの夢「港町に溶け込んだボールパークに」

プロ野球横浜DeNAベイスターズは本拠地「横浜スタジアム」の運営会社をTOB(株式公開買い付け)で傘下に収めた。ファンに親しまれる球場を目指して、球団は将来の横浜スタジアムのイメージ図を公開した。左右対称の端正な現在の球場だが、ざっくりと観客席を切り取ったり、一塁側に地元ファンを大量に収容するジャンボスタンドを設けたり。「港町横浜の景観に溶け込んだボールパークにしたい」。70カ所以上の世界中の球場を見て回った池田純社長ら球団が描くのはアメリカンテイスト漂う大胆な「夢のハマスタ」だ。

外野席切り取り 外からも観戦/一塁側にジャンボスタンド…

イメージ図では、港に続く日本大通りに面した右中間観客席を切り取り、金網越しに横浜公園から港までが見渡せる形状とした。「外からタダで試合を見てもらっても構わない」。池田社長は意に介さない。このほかにも球場内が見える吹き抜けを各所に作って、歓声や球音など試合のムードを「誘い水」に球場外に伝えようとの狙いだ。

チームカラーのブルーに統一された横浜スタジアムの改築構想。横浜公園の噴水や日本大通りとの一体感を持たせる

その代わりに一塁側の観客席の上に大きなスタンドを設置、「濃いファンが安価な入場料で応援できるスペースとしたい」(同)。シートはすべてチームカラーのブルーに統一し、覆いかぶさるようなジャンボスタンドで対戦相手を威嚇する。一方、ベイスターズの選手にとっては、「青い壁」が背中を押す格好になる。

横浜スタジアムのシートは巨人軍を連想させるオレンジが中心。これをシーズン開幕までに約29000席のうち約6000席を青に変更。順次、すべてのシートをチームカラーに染める計画だ。シートの名称も一塁側、三塁側というホーム、ビジターを区別する方式から、一塁側を「ベイ・サイド」、三塁側を「スター・サイド」と「全席ベイスターズ応援席」とする考えだ。

最寄り駅からスタジアムに向かうまでに高揚感

2階部分にゲートを設置して、異空間体験を高める(横浜市役所側から見たスタジアム予想図)

球場に隣接するビルから観戦できる大リーグ、シカゴ・カブスの本拠地のリグレイ・フィールドをまねて、外野席にビルを設置、屋上ではバーベキューも楽しめる飲食スペースとする構想だ。ビルの外壁は横浜の風景に溶け込めるように赤レンガとする。左中間の金網を超えたホームランボールは公園内を転がるが、左中間のビルは大飛球をはねつけ、屋上に届かなければホームランとならない絶壁となる。左右対称の端正な面持ちを持つ球場はクセのあるボールパークとなる。単なる夢ではなく、耐震構造など建築士の意見も参考にイメージ図を描いた。

最寄りのJR関内駅から来るファンは2階部分の巨大なゲートをくぐってスタジアムに入る。「ファンには高揚感を持って試合を見学してもらいたい」。池田社長は一連の大胆な「球場改造構想」の狙いを話す。球場内を青に統一、球場周辺に過去の名選手のブロンズ像を建立するなど米国の球場のアイデアを取り入れる。

港に続く日本大通りも一体でチームカラーに染める案もある(横浜スタジアム方向から見た日本大通りと横浜港)

現在、スタジアムが一体となるのは「ヤスアキジャンプ」。昨シーズン、新人最多セーブ記録を更新した山崎康晃投手がブルペンからマウンドに向かう際、ベイスターズファンが一斉に立ち上がり「ヤスアキ」と連呼してジャンプする。ファンが自発的に始めたパフォーマンスだが、スタジアム全体が鳴動する迫力を持っている。池田社長は「そんな興奮を随所に出せる球場にしたい」という。

ハマスタは国有地の横浜公園内にあり、スタジアムの所有者は横浜市。運営会社を傘下に収めたと言っても、球団がすぐに改築に着手できるわけではない。一部経済人からは別の場所で「横浜ドーム建設構想」も持ち上がっている。ハマスタは建ぺい率ぎりぎりに建設されており、改築には規制緩和などが必要になるかもしれない。しかし、池田社長は「提案しなければ議論も起きない。何ができて何ができないかを考えるきっかけとなる」と訴える。

試合ない日は「球場内観光ツアー」も

思い描く球場のブランドは「満員」。現在の2万9000席の観客席を3万3000~3万6000席に増やして稼働率を下げることなく球場を青色に埋める夢を持つ。昨シーズンは最下位に沈んだが、主催試合の入場者は181万人で、動員率は88%となった。女性ファンやあまり野球に関心のない「ライト層」を呼び込む集客策が功を奏した格好だが、球団と球場の一体運営が可能となったことで、より市民球場としてのカラーを強めたい意向だ。

メッセージを込めたフォトブック「BALLPARK」を手にする池田純球団社長

これまで球団はプロ野球の興業だけをコントロールしていればよかったが、今後は社会人野球や高校野球、コンサートなどの入場にも気を配る必要が出てきた。試合のない日にブルペン見学やベースランニング体験などができる「球場内観光ツアー」なども構想中で、今シーズンから外野席裏の出入り口を開放して市民が早朝にグラウンドに入りキャッチボールできるようにする。

TOBで傘下に収めた球場運営会社「横浜スタジアム」は金融資産など総資産150億円、経常利益5億円を超える優良企業。恒常的な赤字を抱える球団の債務解消のためだけにTOBを仕掛けたのではないという意思を示すためにも、球場改造の夢を提示する必要があった。隣接する横浜市役所は2020年には馬車道方面に移転する。「関内駅周辺のにぎわいを維持するためにも、球場に文化的価値を持たせてランドマークとしてのビジョンを示したかった」(池田社長)。

球団は1月、一連の構想の詳細や、海外のボールパークの様子を撮影したメッセージフォトブック「BALLPARK」(4630円)を発行した。チームカラーやイベント、歴史など横浜市民に愛されるための9つのキーワードを提示、市民球場としての意義を問う。球場を所有する横浜市とのハマスタの管理・運営協定は23年3月に満了となる。しかし、球場を大胆に改築しようというハマスタの夢はその先の長い将来を見据えているようにも映る。

(横浜支局長 和佐徹哉)

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