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遺産相続で劇的に変わる 自分と家族の資産構成 司法書士 川原田慶太

2016/1/29

 当たり前の話ですが、遺産相続は人の死亡によってスタートします。長年連れ添ったパートナーとの永遠の別れであったり、肉親に起きた不幸であったり……。身近な人の死亡という厳然たる事実に直面すると、人は思考を制限しようとします。人の死に際して、即物的にお金の話をしたり、経済的な面をあれこれ考えたりすることをタブー視する人は多いのです。

遺産相続が起きると相続人の資産形成に大きな影響が出る

 もちろん、近親者の死という悲しい出来事を軽視したり無視したりするのは不自然です。とはいえ、それはそれとして、感情を抜きに分析してみると、別の側面が浮かび上がります。遺産相続は、その後の相続人の資産形成に大きな影響を与える可能性のある重大イベントなのです。

 まず、2つの点が大きく変化するでしょう。各家庭によって濃淡はあると思いますが、故人には故人なりの考えで資産配分、つまりアセットアロケーションを決めていたはずです。しかし、相続による「オーナー交代」で、まずこの資産配分がいったん大幅に崩れます。

 家制度が残っていた戦前までと異なり、戦後の法制度の下では、故人の資産バランスを変えずに、そのまま引き継ぐのは非常に難しくなっています。相続人にはそれぞれ固有の「法定相続分」があり、基本的には資産をバラバラに分解して引き継ぐというのが基本ルールです。

 どんなに考え抜かれ、洗練されたポートフォリオであっても、そこから妻がAを取り、長女がBを取り、長男はCを取り――と切り分けることによって、資産バランスが大きく崩れてしまいがちです。この分解作用こそが、相続の第1の大きな変化です。

 そして各相続人は、遺産の一部を受け取り、新たに自分の個人資産に加えていきます。これが第2の変化です。遺産の規模は各家庭によってまちまちですが、この変化が相続人の個人資産に与えるインパクトは決して小さくありません。

 特定の日をまたぐだけで、何百万円、何千万円といった単位で個人資産が突然、増えるなどということは、一般的な投資では考えにくい事態です。逆に言えば、「一山当てた」という規模の財産が突如として自分のものになるのですから、資産構成が大きく変わる可能性があるのです。

 本来であれば、故人の長年の投資成果がオーナー交代によって大きく揺れる局面ですから、相続人それぞれがどのような資産を引き継ぐべきなのか合理的に判断することが必要なはずです。

 第1の変化、遺産の切り崩しによってバランスが非常に悪くなった資産を引き継いでいる可能性があります。また、故人は他の資産との兼ね合いでリスク調整していたかもしれないのに、その一部だけ引き継いだのでは具合が悪いケースも出てきます。

 また、第2の変化、想定外の規模の財産が加わることによって、自分の資産構成のバランスが崩れてしまう可能性も無視できません。

 しかし、「こんなときに経済合理性を考えるなんて不謹慎な……」という制限がかかるのか、あるいは他の要因によるものなのか、このような問題はあまり考慮されることが少ないように思います。相続税をどうするかということにはスポットが当たるかもしれませんが、それ以上の議論にはならないのが実情でしょう。

 次回も引き続き、この問題についてもう少し具体的に取り上げてみたいと思います。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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