誰かに必要とされる実感求めて 鎌田由美子さん
(キャリアの扉)
カルビー上級執行役員
東日本旅客鉄道(JR東日本)の「駅ナカ」事業の仕掛け人、鎌田由美子さんは2015年2月、カルビーの上級執行役員に転じた。
1989年、JR東日本に入社した文系の四大卒女性の1期生だ。01年に立川駅・大宮駅の開発プロジェクトを担当し、通路でしかなかった駅構内を食事・買い物空間へ変えた。商業施設「エキュート」を運営するJR東日本ステーションリテイリング社長を務め、本体に戻ってからは事業創造本部で地域と駅をつなぐため奔走した。
現場を駆け回る鎌田さんの転機は13年、JR東日本の研究所副所長への就任。研究と論文執筆に生活は一転した。意義は感じながらも、現場を離れた違和感が拭えない。
その頃、友人である元伊勢丹のカリスマバイヤー、藤巻幸夫さんが亡くなった。駅ナカ開発は当初、駅構内の暗いイメージから出店を依頼した企業のほとんどに断られた。おもしろがってくれたのが当時、福助社長の藤巻さんだった。以来、ビジネスパートナーであり飲み友達となった。「好奇心の塊だった」藤巻さんの突然の死で、「人生は一度きり」との思いが重くのしかかった。
手掛けた事業を喜んで笑顔になってくれる人がいる。「大切なのは誰かに必要とされる実感だ」と気持ちが募った時にカルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)から声がかかった。
松本さんは「新しいことを生み出してほしい」と申し出た。生み出すものの条件は3つ。「世のため人のためになる」「ワクワクする」「利益を出す」。ストンときた。
25年を過ごしたJRの職場は居心地がいい。カルビーでやることが具体的に見えていたわけでもない。でも50歳を前にチャレンジしようとの気持ちがムクムクわいた。
就任から約1年、新規事業のほか、アンテナショップ「カルビープラス」を担当する。生産や研究開発などの現場を回り、同社が持つ資産を確認しながら、顧客との新しい接点を探る日々だ。昨秋には持ち帰り総菜大手と、淡路産タマネギなど地方の名物野菜でつくるチップスの新製品を共同開発した。「今年からもっと攻める」と語る顔には満面の笑みが浮かぶ。
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