暖冬?それとも寒冬? 気温乱高下の原因は編集委員・気象予報士 安藤淳

暖冬のはずが九州で大雪、沖縄でもみぞれやあられが観測されるほどの寒波に見舞われ、気温がジェットコースターのように乱高下している。エルニーニョの年には暖冬になるという、よく知られた関係に異変が生じたのか。今後の気象はどうなるのだろうか。

「北極の寒気の動きなども関係するので、一時的に寒くなる時期はあるかもしれない」。気象庁は毎月25日に3カ月予報を発表する。この冬に関しては「暖冬基調」としながらも、必ず「例外」の可能性について触れていた。もっとも、ここまで強力な寒波が襲来するとは予想していなかったようだ。

偏西風の蛇行によって、北極から勢いよく寒気が南下し各地で雪と寒さに見舞われた(ウェザーニューズ提供)

今回の寒さは日本だけではない。多少、時間にずれはあるが、アジアの広い地域や米国東海岸、欧州東部なども一級の寒波に見舞われた。どの地域も、これまで気温が平年をかなり上回る暖かい天気の日が多かった点も共通している。北半球全体に及ぶ規模で大きな変化が起きたといえる。

もっとも注目されるのが、北極とそれを取り巻く中・高緯度の大気が相互に関係を持ちながら変化する「北極振動」と呼ばれる現象だ。その状態は指数で示すことができ、「プラス」は北極付近に寒気が蓄積されるパターンに、「マイナス」は中緯度地方などに向けて寒気を吹き出すパターンにそれぞれ対応する。

米国の気候予測センター(CPC)の観測によると、11月ごろから北極振動の指数はほぼ一貫してプラスだったが、年明けから一気にマイナスに転じた。しかも、数値はかなり大きくなった。それが1月下旬以降は再びプラスになりつつあり、2月にはプラス傾向がかなり鮮明になりそうだ。寒さのピークはマイナス値が最大となった時期と完全には重ならないが、「寒波の背景に北極振動があるのは間違いない」と気象庁気候情報課の竹川元章予報官は話す。

寒気が効率よく南下するには、上空を吹く強風である偏西風がうまい具合に蛇行し、流れが南に向かう必要がある。偏西風はしょっちゅう蛇行しており、そのパターンは大気を伝わる様々な波に影響される。蛇行が2つあると「2波」、3つなら「3波」、4つの場合は「4波」などと呼ぶ。今回は4波に近い。日本を含むアジア一帯は東西、南北の両方向にかなり大きく蛇行した。米国付近や欧州東部の蛇行も目立った。大西洋の真ん中付近にも蛇行があったが、海上なので寒波が人々の生活を脅かすことはなかった。

エルニーニョによる暖冬基調は変わらない見通し(気象庁まとめ)

日本や米国など中緯度の国々は、北極と熱帯の両方の影響を受ける。熱帯で重要なのは、広大な面積で太陽の熱を受ける太平洋の赤道付近の状態だ。現在は熱帯太平洋の日付変更線付近からペルー沖にかけての海面水温が上がり、平年を上回るエルニーニョ現象の真っ最中だ。しかも、海面水温の高さは歴代3位で、エルニーニョとしてはかなり強い。

エルニーニョが発生すると暖かい海面で上昇気流が起きる場所が通常よりも東へずれ、結果として上空を吹く偏西風のコースが変わる。日本付近では偏西風をやや北に持ち上げ、暖気が入りやすくなる。エルニーニョはピークを越えたばかりで、月単位で見れば暖気の勢力範囲が広がりやすい傾向は続いている。ところが熱帯以外の原因で偏西風が逆に南に蛇行した状態になり、北極にたっぷり蓄積された寒気が勢いよく流れ込んで暖冬状態を中断させてしまった。

寒気は強く、例年の冬に比べても南まで勢力を広げたが、寒気の中心が上空約5500メートルで零下40度程度というのはそれほど珍しくない。シベリア高気圧は1070ヘクトパスカル近くに発達したが、これも数年に1度は見る強さだ。これまでの暖かさとの落差があまりに大きかったことが、寒さを一層厳しく感じさせた面もありそうだ。

日本付近は南から高気圧に覆われ、春のような天気図になりそう(気象庁作成)

東京の1月の気温を見ると、26日までの観測で最高気温、最低気温が平年を下回ったのはともに8日間のみだ。1月3日には平年を6.1度も上回る16.2度まで上がったが、12日は平年を3.5度下回る6.1度止まりという具合に、変化がとても激しい。そして、今週後半以降は気温はぐんぐん上がる見通しだ。移動性高気圧が南の方から日本の南半分を緩やかに覆い、春めいた天気図になる。風も弱く、寒かった数日間を忘れさせるような天気になるだろう。特に西日本などの積雪が多かった地方では雪崩や落雪、融雪による河川増水に警戒が必要だ。

北日本にはまだ寒気が残りそうだが、全体としては1月上旬ごろまでと同じように、エルニーニョに対応した暖冬に戻る可能性が高い。気象庁の最新の3カ月予報でも、暖冬傾向のまま冬が終わるとの見方を示している。「春一番」も早いかもしれない。

もちろん、再び北極振動がマイナスに大きく振れ、偏西風が蛇行すれば寒波の再来もあり得る。地球温暖化が進み、長期的に北極などの気温も上がっていくと、偏西風が蛇行しやすくなると考える専門家もいる。異論も多く定説とはなっていないが、極端な気温変化や豪雨・豪雪などが起きやすくなる可能性はある。

春先はもともと暖気と寒気のせめぎ合いで低気圧が発達しやすい。強力な寒波がやってきて、南岸を低気圧が発達しながら駆け抜ければ首都圏で再び大雪が降ってもおかしくない。降雪時だけでなく、春の日差しを浴びて解ける時の融雪災害も危険だ。激しい気象はいつでも起きうることを前提に、備えを万全にしておきたい。