「アルカナ・ファミリアValentino」ファンも舞台好きも楽しませる演出

1月下旬、人気ゲームを原作とする舞台「アルカナ・ファミリア Valentino」が上演された。マンガ・ゲーム的演出を取り入れ、乙女ゲームのときめきと少年マンガらしい激しいアクションを楽しめ、原作ファンも舞台好きも楽しめる作品に仕上がった。

原作は2011年、携帯ゲーム機プレイステーション・ポータブル(PSP)用として発売されたソフト「アルカナ・ファミリア」シリーズ。舞台のためにオリジナルストーリーを書き下ろした。「乙女ゲーム×少年マンガ」という原作ゲーム通り、「好きな男性キャラクターと恋人同士になる」過程と、「敵を倒して戦いを勝ち抜く」という冒険譚の両方を満喫できた。

原作を知らない人でも楽しめた (C)HuneX (C)2015舞台アルカナ・ファミリア製作委員会

物語の主人公は、ゲームではプレーヤーでもある女性キャラクター、フェリチータだ。フェリチータの父親でありファミリーのボスでもあるモンドの命令で、ファミリーのメンバーら男性キャラクターから、フェリチータがレガーロ島No.1ベリッシモ(イケメン)を決める「アルカナベリッシモinバレンティーノ」の開催が決定。しかしその裏では不審者が島に入り込んで――。メンバーの掛け合いが楽しいコメディーと緊迫した空気が漂うシリアスな部分が絶妙なバランスだった。

乙女ゲームが原作ということもあり、観客のほとんどが女性。舞台の演出も女性ファンを楽しませる仕掛けにあふれる。例えば男性キャラクターとのやりとり。「アルカナベリッシモ」はフェリチータを魅了するプレゼントで勝者が決まる。出場する男性キャラクターはヒントを得ようと観客席に降りてきて「どんな贈り物がほしい?」「どんな男性が好き?」と聞きに来る。役者を通じて、キャラクターと接することができるのは舞台ならではの楽しさだ。

ゲームやアニメでファンを楽しませた、ファミリーのメンバーによる掛け合いも充実。「おでこをくっつけて言い合いするリベルタとノヴァ」やルカとパーチェの料理シーンなど、「女性ファンがみたいだろうな」と思わせるシーンをうまくつめこんでいた。

物語が進み、敵にさらわれたフェリチータを救出に行くシーンになると、華やかなアクションが観客を楽しませる。マンガやアニメ、ゲームを原作にした舞台では、最近ダンスや歌のシーンを充実させる例が増えている。「アルカナ・ファミリア Valentino」ではダンスに加え、剣の打ち合いという殺陣も。役者の演技のうまさと相まって、いい緊張感に満ちたシーンとなっていた。

マンガ的・ゲーム的演出と舞台ならではの演出を楽しめる作品 (C)HuneX (C)2015舞台アルカナ・ファミリア製作委員会

ラストは乙女ゲームらしく、No.1ベリッシモを決めるコンテストへ。ここでは「ゲーム原作」が生きてくる。

フェリチータに選んでもらおうと、男性キャラクターがそれぞれ、フェリチータに告白する。それぞれ観客に背を向けたフェリチータに告白しているため、あたかも観客には男性キャラクターが自分に向かって告白しているように見える。乙女ゲームらしい演出だ。(ラストシーンは日替わりで演出が変わるそう)

マンガなど2次元の作品を舞台の原作にするのは、宝塚歌劇団などが以前から手がけてきた。しかし足元の市場拡大は、ネルケプランニングが手がける「ミュージカル『テニスの王子様』」の成功によるところが大きい。2次元作品を俳優らによって3次元化する「2.5次元」化に、「若手男性俳優を登用して、成長していく過程を楽しむ」という要素を加え、女性を中心にファンを広げた。

その後、「2.5次元ミュージカル」(舞台を含む)の市場が拡大したことで、最近は女性キャラクターも登場させたり、演出に著名演出家を招いて、コンピューターグラフィックスで映像を映し出す「プロジェクション・マッピング」による演出を取り入れたりする舞台も出てきた。

「アルカナ・ファミリア Valentino」のように、乙女ゲーム原作の舞台も公演数が増えている。女性をターゲットにした「ミュージカル『テニスの王子様』」ではあえて女性キャラクターを登場させず、舞台装置や演出も限定的だった。今回の舞台は東京大学大学院情報学環の馬場章研究室がライブ・エンターテインメント研究の対象として、全面的にバックアップした。馬場研究室は15年からデジタルゲームのメディアミックス研究の一環として、ライブ・エンターテインメントの実践的研究を始めた。今回がその第2弾。研究室が応援する俳優の工藤翔太さんが今回の舞台に出演した。

2.5次元化が相次ぎ、「2.5次元ミュージカル」の中での差別化も厳しくなっている。その中で「アルカナ・ファミリア Valentino」は原作ファンが楽しめる演出をしつつ、殺陣や観客席を使った演出を取り入れ、舞台としての完成度を一段と高めた。今後「2.5次元ミュージカル」の中で一段と幅広い演出方法が広がる可能性がある。(岩本貴子)

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